記者)業態といえば、寿司とラーメンも展開されていらっしゃいます。こちらはどういった流れで誕生したのでしょうか。
金本氏)寿司は関内の「鮨つぐ」1店舗ですね。僕は自分が好きな料理しか店を出さないと決めていて、自分が理想と思う寿司屋を出したいという気持ちで出店しました。元々僕は魚のノウハウがなかったので、やるならパートナーが必要だと思っていたんです。そこで人を探しているうちにあるところで店長を経験されていた人と知り合いになりました。料理人として素晴らしいのはわかっていたので、あとは人間性を見たいと思い、何度も食事をしたりゴルフに行ったりして、人となりを観察したんです。
そして信頼できると思ったときに独立の話を持ちかけたところ、一緒にやろうという話になったので、昨年の12月にオープンしました。
記者)理想の寿司屋を出したいと思ったということですが、どんな理想があったのでしょうか?
金本氏)ちょっとお酒を飲みながらお寿司をコースでしっかりやってくれる、雰囲気のいいお店がいいんですよね。お酒を飲みながら寿司を食べたいけど、回転ずしなどチェーン店は避けたい。そんな要望を叶えるお店です。内装には大将の要望を聞きながらいいものをたっぷり使いました。焼肉屋は何年かごとにリニューアルしないといけませんが、寿司屋は古さが味になるので、高い素材を何十年も使えるものを揃えました。始めていらっしゃった方は、ものすごい高いお会計を取られるお店に来てしまったと思われると思います。
コースは握りを15貫ほどにつまみが10皿くらいで税込1万円で提供しています。和食のお店はお酒で単価を上げようとしますが、鮨つぐでは高いものを無理に勧めず、1,000円くらいで1合ちゃんと飲めるお酒のラインナップを多めに揃えておりますので、2人で25,000円くらいになります。気軽に行けるわけではないけど、美味しい寿司を食べたいなら鮨つぐに行こうか、と思ってもらえる価格になっています。
おかげさまで今のところ非常に好調で、6月末までは予約でいっぱいですね(インタビュー時:5月中旬)。来店されたら、次のご予約を取っていってくださいます。
記者)満足度が高い証拠ですね。今お話をお伺いしていると、ご自身が好きなものを出店されているようですが、ラーメンはどういった流れだったのですか?
金本氏)こちらも関内の「鶏ふじ」1店舗のみです。当時の匠家の副店長が、ラーメンが大好きで、一度自分で店を出して失敗したので、もう一度チャレンジする前に勉強したいといってうちに入ってきたんです。ラーメンのチャーシューは豚肉なので、匠家で扱う牛肉とはちょっと違ったんですけどね(笑)それから何年か頑張ってくれた後にいよいよラーメン屋をやりたいとなったときに、「僕がやりたいラーメン屋に賛同して一緒にやってくれるなら全部費用を出すよ」と話し、鶏白湯ラーメンの店をオープンしました。もう3年くらいになります。
記者)ここまでご縁やタイミングを大切にされながらいろいろな業態に進出されているなと感じましたが、その中でもメロ・ワークスさんをM&Aされたのは異色の取り組みだったのではないかと思います。何らかのシナジーを求めてM&Aをする企業が多いと思いますが、どのような流れでM&Aに至ったのでしょうか。
金本氏)最初のきっかけはFAさんからの紹介でした。初めてお話をいただいたときには、規模が大きくてうちには到底無理だとお断りしようと思ったのです。しかしコロナの影響で2次会需要が激減したのもあり、カラオケ業界がかなり苦境に立たされました。オーナーさんからすれば、一生懸命がんばって築き上げてきたものが、コロナなんていうよくわからないものに邪魔をされてしまったように感じたらしく、でもそれをどこにもぶつけることもできなくて、気持ちが燃え尽きてしまったのだそうです。
そこで障壁を一つずつクリアしていって、M&Aに至りました。決めたときは、金融機関からも全行から「何を考えているんだ」と反対されましたね。正確に言うと、ニュールックで買ったのではなく新しい会社を作ってM&Aしています
お話はM&Aの1年前くらい、2020年11月ごろからしていました。何度もお会いしてお互いを知るうちに、『ありがとう』を大切にする社風であったり、出店の考え方だったり、企業文化がとても似ていると気づいたんです。お互いに共感しあえる部分がどんどん増えていった結果、「ニュールックさんがやってくれるなら話を進めましょう」と言っていただけました。
記者)コロナの影響で業界が厳しい最中、収益に繋がる目算はあったのでしょうか?
金本氏)元々コロナ前はすごく業績がいい会社で、協力金がもらえていたこともあって資金的には十分でした。内部には創業当初から働いていらっしゃる総務部長さんと営業本部長さん、マネージャー2人がいてくれたので、要となる人材を確保できていたのは大きかったです。
カラオケという業態も非常に魅力的でしたね。まず店舗展開が早い。前オーナーは19期で67店舗をオープンしていて、その多くは居抜きです。店舗の場所は必ずしも1階である必要はないので、立地の制限はほとんどありません。また大きな駅のエリアではなく、ちょっと小さめの駅近にある30坪くらいの家賃が安いところを狙っています。
店舗展開が早い理由には、従業員教育にあまり時間がいらない点があります。基本的にカラオケは箱貸しで、接客のタイミングは受付と帰りの会計くらい。飲食店のようなサービスがないので、従業員教育の手間があまりかかりません。
記者)メロ・ワークスさんが運営するカラオケ店は、とても身軽な業態ですね。
金本氏)出店が失敗したときに撤退しやすいのも魅力ですね。現在7月オープンの新店舗を黄金町に作っていて、出店費用は4,000万円くらい。そのうちカラオケの機械代が1,500万円くらいです。このカラオケの機械は他所の店舗でも使えるので、もし店が上手くいかなくても損失になりません。これが4,000万円かけた飲食店だと、居抜きで300万円で買ってくださいとか、お金をかけてスケルトンしなければいけないとか、損失はものすごく大きくなります。
一階でなくてもいいというのもメリットですね。カラオケ機器を提供している企業から物件の紹介がありますし、あまり大きい店舗をつくりませんし、大きな駅には出店しないというのも他の企業と違う点です。
こういった要素も重なって、コロナ前の7割くらいまで売上が戻れば十分に利益が出ると踏んでいます。そして私は、カラオケは世の中から無くならない、2次会需要も戻ってくると考えています。現時点ですでに7割までは戻していますし、出店ごとの資金調達の返済は5年で終わるので、これからローン返済がどんどん終わっていきます。売上の回復が7割でとどまったとしても、返済が終わっていくにつれてキャッシュが残りやすい体質になってくれるので安心です。
今は向こう5年間で100店舗まで伸ばす計画を進めています。黄金町の1店舗を入れて、残り32店舗ですね。
記者)聞けば聞くほど大きなチャンスをつかまれたと感じます。メロ・ワークスがカラオケ業界の中で伸びていたのもうなずけますね。
金本氏)これも元オーナーの人柄ですね。今は持株なしの立場で会長に就いてもらっています。本来なら「もう関係ないから知らない」と言われてもおかしくない立場なんですよ。何か相談しても「俺に言われても困る」って言えてしまう。しかし元オーナーは今でも相談には乗ってくれますし、手続きや仲立ちを引き受けてくれます。会長職に対する報酬はお支払いしていますが、オーナー時代からするとだいぶ少額です。しかし当時と変わらないくらい会社のために動いてくれるので、本当に助かっていますね。こんなに人柄のいい方がいるんだと驚くほどです。個人的にも親しくしていただいていて、今でも月に1、2回はゴルフに行っていますよ。
記者)ニュールックとしての展開は今後どのように考えていますか?
金本氏)今後は東京へ積極的に進出していきたいですね。とくに野毛とりとんは以前麻布十番に出店したときに、特に変わったアクションはしなくてもものすごく客入りがよかったんですよ。感度の高い客層と野毛とりとんとの相性がいいという手応えがありますので、人が多い都内のエリア、例えば中目黒、渋谷、恵比寿へ出店して勝負をかけたいですね。
業態は当面これ以上増やしません。ニュールックとしては年間2~4店舗を4業態でうまくバラしながら出店していきたいと思っています。
いずれの話ですが、4業態の各事業部を子会社化して、今の事業部長を社長にしようと考えているんです。私のイメージでは、ひとつの業態が組織としての活動をするためには、10店舗ほどが必要です。それくらいの規模になると、店長会を開いたりそこに部長を置いたりと、会社として動き出せるイメージがあります。まずはその規模を目指していきたいですね。そのためにも、今後はさらにフランチャイズにも力を入れていきます。もし4業態のうち共感していただけるものがありましたら、ぜひお声がけいただきたいと思います。