法人格否認の法理とは、ある特定の個別的事案について、会社の法人格の独立性を否定する法理論のことを指します。
まず「法人」とは、一定の社会的活動を営む組織体で、法律により特に権利能力を認められたものであり、自然人(人間)以外で権利能力を有するものとされています。
たとえば会社,労働組合,私立学校,神社などが法人となります。
本来は組織に権利能力はないのですが、法人として、法律行為の主体となる人格が与えられているということになります。
そして、この権利能力のことを「法人格」といいます。
法的には、会社は「法人」であり、経営者や株主等の個人とは別人格とみなされるため、会社によって発生した権利・義務は、会社自身に帰属することとなり、他の個人が負担することはない、というのが原則です。
法人格否認の法理は、このような独立した会社等の法人格を否定して、その会社の背後にいる別人格(経営者や社員、株主、別会社など)と一体化させ、権利義務の責任の追求をするという考え方になります。
法人格否認の法理では、二つの態様が認められており、一つは「法人格が形骸化している場合」、もう一つは「法人格が濫用される場合」に、紛争や事件の解決のために必要な限度で、事案ごとに判断し適用されます。
この法理により、会社の財産より弁済を受けられなかった債権者が、支配株主に対しても責任を追及することが出来るなど、新会社の設立が旧会社の債務逃れを目的としてなされた場合に法人格の濫用が認められ、新旧両会社に責任追及可能という判例がありました。
法人格が全くの形骸にすぎない場合、またはそれが法律の適用を回避するために濫用されるような場合には、法人格を認める本来の目的に照らして許すべきものでないとして、法人格を否認すべきである、という実際の判例から、法律上の規定はないものの、法人格否認の法理は認められています。