有利発行とは、株式会社において、新株もしくは新株予約権を発行する際に、株主以外の第三者に対して特に有利な価格で発行する手続きを指します。第三者割当増資や新株発行(新株予約権/ストックオプション)の際に行われます。
無償での取引も含め、社会通念上妥当と考えられる価格よりも低い価格で発行する場合に有利発行と呼ばれ、基本的には妥当価格との乖離幅10%が目安となっています。なお、上場会社に関しては、日本証券業協会の「第三者割当増資の取扱いに関する指針」(平成22年4月1日)により、取締役会決議の直前営業日の価額に 0.9 を乗じた額以上の価額であれば原則として有利発行に該当しないと考えられています。
有利発行が行われる最も一般的な例は、増資を行う企業の経営状態が悪く、市場価格では思うように株式を売却できない場合です。売却先を限定する第三者割当増資で、特定の企業や金融機関に対し有利な価格で株式を売却することで、支援を依頼することになります。また、経営支援の他にも買収防衛のために有利発行が行われる場合もあります。(ホワイトナイト)
M&Aでは第三者割当増資を組み合わせることがありますが、その際に有利発行が活用されるケースが見受けられます。M&Aの際に有利発行を実施する場合には、課税関係についてもしっかり調べる必要があります。
有利発行は、株式の希薄化を招き、その他の株主に不利益が発生する恐れがありますので、発行の際には株主総会の特別決議が必要となります。会社法では、募集株式の払込価額を時価より低い金額で発行する場合には、公開会社、非公開会社にかかわらず株主総会の特別決議を要すると定められています。また、有利発行を行うにも関わらず株主総会の特別決議を行わない場合には、株主は株式会社に対して発行差止めを請求することができます(会社法第210条、247条)。