飲食店を開業したら申請したい助成金・補助金まとめ

飲食店を開業する際、最も懸案になる事項のひとつが開業資金です。開業のためにいくらかかるのか、開業資金をどのように調達すればよいのか知りたい方も多いでしょう。 では、ここでは飲食店の開業時の助成金や補助金について解説します。


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飲食店開業に必要な資金はいくら?

飲食店の開業には、一般的に以下の費用が必要です

物件取得費用 保証金や仲介手数料、賃料など店舗用物件を借りる費用
店舗投資費用 厨房機器や外装・内装、販促など、飲食店として整備するのに使う費用

 

運転資金・生活費 経営が安定するまでの経営費と自分自身の生活費。目安は約6ヵ月分

飲食店の開業でまず必要になるのが、物件の取得費用です。賃料をベースに、保証金が約10ヵ月分(関東圏では礼金が約1ヶ月分)、仲介手数料が約1ヵ月分、前家賃(翌月分までの家賃の前払い)などが考えられます。

物件が手に入ったら、店舗作りの実作業が始まります。壁や照明、家具といった内装、看板などの外装、そして調理に使う厨房機器など、店舗開業費用は非常にお金がかかります。

物件の規模、内装の希望内容、依頼する業者などによって、費用は大きく変わるため、どれくらいの費用がかかるかは一概には言えません。ただし、数百万円規模の予算を考えておくべきでしょう。

また、飲食店の経営が軌道にのるまでにかかる期間は、約4割が半年以内、約3割が半年から1年との日本政策金融公庫によるデータ(※)があります。つまり、多くの人が半年から1年程度の運転資金、生活費を準備しておく必要があるのです。

これらを考えると、開業資金として少なくとも1千万円程度を見込むことが必要かと思われます。実際、先ほどと同じ日本政策金融公庫のデータでも、開業資金の平均金額は1,066万円となっています。

では、開業資金のすべてを自分で用意しているかというと、必ずしもそうではありません。一般的には、必要な資金のうち3割は自己資金で用意し、それ以外を融資や親族からの借入れなどで資金調達することが多いようです。

出典:「日本政策金融公庫『創業の手引+』」

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開業に関する助成金・補助金の注意点

開業には、多くの資金が必要です。そこで利用したいのが国や地方自治体などの助成金や補助金です。まずは、助成金、補助金の一般的な注意点を見ていきましょう。

助成金・補助金は後払い

助成金、補助金を申し込む際の注意点のひとつが「助成金・補助金は後払い」であることです。
そのため、先に支払いが発生します。

また、一般的に、助成金、補助金は受給までに数ヶ月程度時間がかかります。そのため、先払いする資金の用意だけでなく、助成金、補助金を受給するまでの資金繰りにも注意しなくてはいけません。

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飲食店の開店にも使える助成金・補助金

助成金や補助金には、適用要件などによってさまざまな種類があります。その中から、飲食店の開店資金として使える代表的な助成金、補助金を紹介します。

飲食店が利用できる助成金制度

助成金制度は、自治体が地域を限定して独自に実施しているケースが珍しくありません。

制度によっては創業自体を支援する助成金制度もあります。詳細は「自治体名 創業助成金」などで検索してみるといいでしょう。

対象

東京都内で創業を具体的に予定している個人、もしくは創業後5年未満の中小企業者等のうち一定の要件を満たす方が対象です。

一定の要件には、「TOKYO創業ステーションの事業計画書策定支援修了者」や「東京都制度融資(創業)利用者」などがあります。

助成額・助成率

助成額は100万から300万円までで、助成率は対象となる経費の2/3以内です。交付決定から最長2年間が助成対象期間となります。

創業助成金の対象となる経費は、物件の賃料、設備購入費、販促費、従業員の人件費など幅広く、飲食店の開業資金としておおいに活用できるはずです。ただし、審査はかなり厳しいとされるため、入念な事前準備が必須になります。

申請先

創業助成金の申請先は公益財団法人東京都中小企業振興公社で、申請書類の提出(あるいはWEB
事前登録)や面接審査が必要です。最新の募集要項についてはこちらのリンク先を確認して下さい。

申請書面はリンク先からダウンロードできます。また、申請書と同内容のWEB登録も必要になります。

申込期間

申込期日は年度により異なりますが、通常、6月と10月の年2回、申請期間が設けられています。最新情報は先ほどのリンク先に記載されるので、日頃からチェックしておくと安心です。

ちなみに、令和2年度第2回の書類提出期間は令和2年10月1日から10月9日、令和3年度第1回は令和3年4月15日から4月23日までとなっています。

出典:東京都中小企業振興公社「創業助成金」

過去募集されていたもの

ここでは、過去に募集されていた飲食店の開店にも使える助成金、補助金を紹介します。今後の募集は不明ですが、継続される場合もあるので常に確認しておくと良いでしょう。

地域創造的起業補助金

地域創造的起業補助金は、新たに創業する者に対して創業に要する経費の一部を補助するための国の補助金です。平成30年まで実施されており、補助率1/2以内で、200万円までの補助が受けられました。

令和元年度、2年度の地域創造的起業補助金は実施されていません。

創業支援等事業者補助金

創業支援等事業者補助金は、市区町村と連携した民間事業者等が行う創業支援の取り組みと、創業に関する普及啓発を行う取り組みにかかる経費の一部を補助するもので、補助率2/3以内、1,000万円までの補助が受けられました。

令和2年度の創業支援等事業者補助金は実施されていません。

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飲食店開業後に申請できる助成金・補助金

助成金、補助金は創業時だけでなく、開業後に活用できるものもあります。ここからは、それらについて解説しましょう。

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者に対して正社員化や処遇改善の取組を実施した事業主を対象に、賃金の一部などを助成する制度です。正社員化コース、賃金規定等改定コースなど7つのコースがあり、それぞれで要件や助成額などが異なります。

受給には、キャリアアップ計画書を立案して、管轄の労働局に提出が必要です。

出典:厚生労働省・キャリアアップ助成金

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が行う販路開拓や生産性向上の取組にかかる経費の一部を補助する制度のことです。従来からある「一般型」と新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業者向けの「コロナ特別対応型」のふたつがあります。

申請には商工会、商工会議所へ問い合わせ、経営計画書、補助事業計画書を作成する必要があります。また、事業再開枠として、補助上限 50 万円までの定額補助も併用可能です。

対象

小規模事業者

補助額・補助率

・一般型:上限50万円(特例事業者の場合は100万円)、補助率 2/3
・コロナ特別対応型:上限100万円

補助率
Aサプライチェーンの毀損への対応…2/3
B非対面型ビジネスモデルへの転換…3/4
Cテレワーク環境の整備………………3/4

申請先

商工会もしくは商工会議所

申込期日

一般型       2021年2月5日
コロナ特別対応型  2020年12月10日

小規模事業者持続化補助金は継続する予定。今後の期日は決定次第、順次公開される

出典1:令和元年度補正予算 日本商工会議所 小規模事業者持続化補助金

出典2:令和2年度補正予算 日本商工会議所 小規模事業者持続化補助金<コロナ特別対応型>

IT導入補助金

IT導入補助金とは、店舗の経済効率向上や顧客のニーズに合ったITシステムの導入に対して、費用が補助される制度です。

IT導入補助金には、従来から存在する一般枠のA類型とB類型、新型コロナウイルスの流行によってビジネス転換を求められた事業者に対する低感染リスク型ビジネス枠のC類型(さらにC類型-1とC類型-2に分類される)とD類型の4つがあります。

ただし、4つの類型のうちD類型はテレワーク環境やクラウド環境の整備に関わる支援が対象ですので、飲食店が関わるのはA類型、B類型、C類型の3つです。

低感染リスクビジネス枠は、一般枠よりも補助内容が拡充されており、ソフトの導入だけではなく、ハードウェアのレンタル費用も含まれるのが魅力です。

出典:「IT導入補助金2021」

対象

飲食業を含む一定業種の中小企業ならびに小規模事業者が対象です。

飲食業の場合、中小企業の目安は資本金5,000万円、従業員100人で、小規模事業者は従業員5人以下となります。

補助額・補助率

一般枠のA類型とB類型と、低感染リスク型ビジネス枠のC類枠とD類型、それぞれの補助上限額と補助率は以下の通りです。

・A類型:30万~150万円未満 補助率1/2以下
・B類型:150万~450万円以下 補助率1/2以下
・C類枠-1:30万~450万円以下 補助率 2/3以内
・C類型-2:300万~450万円以下
・D類型:30万~150万円以下

ITツール導入によって賃上げ目標を掲げることを必須とするか否かで類型が分かれており、必須となる一般枠のB型、低感染リスク型ビジネス枠のC類型-2では、補助金額が下限・上限ともに高額となっているのがわかります。

申請先

申請に先立って、商工会や商工会議所、ITコーディネーターなどのIT導入支援事業者を通じて、自身の飲食店が抱える課題解決に必要なITツールについて相談しましょう。

導入するITツールが決定したら、「IT導入補助金」のホームページから電子申請をします。

電子申請には「gBizIDプライム」アカウントの取得が必要です。IDの発行には約2週間かかるので、早めに対応が必要です。さらに、「gBizIDプライム」アカウントだけではなく、独立行政法人情報処理推進機構による「SECURITY ACTION」宣言も求められます。情報セキュリティへの取組みを宣言するもので、こちらも同ホームページから行えます。

ここまでが申請の前段階です。

いよいよ申請となれば、IT導入支援事業者から「申請マイページ」の招待を受け、申請情報の入力等を行います。導入するITツールなどについては、IT導入支援事業者が入力するのが一般的です。

申込期日

基本的に年に数回の申込期日が設けられています。最新情報はホームページを確認するなどして、日頃から備えておきましょう。

2021年の交付申請は4月7日(水)から始まっており、すべての類型で申込期日は以下のように発表されています(2021年5月現在)。

2次締切:7月30日(金)17:00(予定)
3次締切:9月中(予定)

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飲食店の事業承継にも助成金がある

飲食店の事業承継を考える方もいるでしょう。その場合も助成金や補助金があります。

事業承継とは、後継者が事業を承継することです。買い手は、飲食店の培ったノウハウや顧客、メニュー、従業員などを引き継ぐことができ、スムーズに事業を行うことができます。

ここでは、事業承継に対する助成金や補助金について見ていきます。

事業承継支援助成金

自治体によっては、事業承継を支援するための助成金や補助金制度を設けています。

東京都の「事業承継支援助成金」はその一部です。事業承継や経営改善を外部の専門家などに委託するとき、費用の一部を助成してもらえます。

対象事業ごとに、Aタイプ(第三者への事業承継)、Bタイプ(後継者への事業承継)、Cタイプ(企業継続支援)の3タイプに分かれます。助成率は全タイプで2/3以内、助成額は20万円~200万円です。

2021年度の情報はまだ更新されていませんが、令和2年度の申請期間は10月1日(木)から11月13日(金)17:00となっています。本年度も同じ時期に実施される可能性が高いので、公式サイトの情報を注意深く確認して下さい。

参照:東京都中小企業振興公社・令和2年度 第2回事業承継支援助成金

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魅力ある飲食店を事業承継したいとお考えの方に

飲食店の開業にはさまざまな助成金や補助金を利用できる可能性があります。また、開業のみならず、事業承継をサポートするものも存在します。

交付されれば大変役立つ助成金や補助金ですが、支給要件の確認や申請手続きが複雑でわかりにくく感じられる方も多いでしょう。申請時点でミスのないよう、知識や経験のある専門家に相談することをおすすめします。

もし飲食店の事業承継についての悩みをお持ちなら、M&A Propertiesへお問い合わせください。経験豊富な担当者があなたの現状をていねいにヒアリングし、事業承継補助金の対象となるM&Aによる事業承継を丁寧にサポートいたします。

詳しくはこちらのページをご覧ください。

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まとめ

飲食店の開業には、物件取得費用、店舗投資費用、運転資金、生活費など、多くの資金が必要です。そこで利用したいのが、助成金や補助金の制度です。飲食店が利用できる助成金・補助金には、開業に利用できるものや開業後に利用できるもの、事業承継に利用できるものなどさまざまです。

また、どの助成金や補助金にも対象者や支給要件などが、定められています。そのため、助成金や補助金を利用するには、対象者や支給要件を理解し、自社が該当するかどうかを見極めることが重要です。

専門家などのアドバイスを受けながら、賢く助成金や補助金を利用することが、飲食店の開業や事業承継での引継ぎなどで必要不可欠となるでしょう。