飲食店で提供するワインとチーズの選び方のコツ

飲食店で提供するワインとチーズの選び方のコツ

飲食店、特にフランス料理屋などにおいては「チーズ」は非常になじみ深いものとして取り上げられます。今回はこのチーズにまつわる提供のコツや方法について、コムラード・オブ・チーズの資格を持つ私が解説していきます。


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飲食店、特にフランス料理屋などにおいては「チーズ」は非常になじみ深いものとして取り上げられます。今回はこのチーズにまつわる提供のコツや方法について、コムラード・オブ・チーズの資格を持つ私が解説していきます。

お店で提供するチーズはどのようなものを選べばいいのか

お店で提供するチーズは、基本的には無難でよく知られているものを選ぶのが一般的なやり方です。よくあるのが、フレッシュ・ウォッシュチーズ・ハードチーズ・セミハードチーズ・青かびチーズや白かびチーズなどのなかから好きなものをお客様に選んでいただく方法でしょう。ただしこの場合も、あまり個性の強すぎるものは選びません。

白かびならばカマンベール・ド・ノルマンディー、青かびならばゴルゴンゾーラあるいはロックフォール、ハードチーズならばパルミジャーノレッジャーノ、セミハードならばゴーダ、ウォッシュならばエポワス、フレッシュチーズならばマスカルポーネやモッツァレラ……といったように、そのジャンルのなかでももっともよく知られたチーズで構成しているお店が大半でしょう。

私たちは「よく知らない食べ物」に出会ったとき、「昔どこかで聞き覚えのあるもの」「昔どこかで見た事のあるもの」を頼む傾向にあります。私自身もフランスに行ったときにフランス語のメニューブックが出され、「よくわからないけど、ショコラって書いてあるから多分これはチョコレートだ……!後はわからない、何書いてあるのかさっぱりだから、ショコラってついているものにしよう。はずれはないはずだ」と思った経験があります。

お客様の「選びやすさ」をサポートするためにも、チーズはある程度はよく知られたものを選ぶとよいでしょう。また、多くの人が聞き覚えのあるチーズというのは、日本人の舌になじみやすく、受け入れられやすい傾向にあります。入手がしやすいのもメリットです。

独自性を打ち出す場合はどうするか

ただ、なかには「独自性を打ち出したい」と考える人もいるでしょう。

以前、「フランスチーズ鑑評騎士の会」会員の方がおられるお店に足を運んだことがあります。フランスチーズ鑑評騎士の会、「飲食に関する仕事に10年以上積んでいる」「その分野において、相当の技術や知識がある」「推薦を受ける」といった厳しい条件をクリアしなければ入ることのできない会です。

そのお店は、「フランスチーズ鑑評騎士の会の会員がいること」を強く打ち出しているお店であり、チーズがメインの一つともなっています。このようなお店の場合は、足を運ぶ人もチーズについて相応の知識や興味がある人だと言えるでしょう。もしくは、美食に対する興味が旺盛な人です。

お店で出すチーズは、原則としては上でも述べたように「一般的なチーズ」を主力として構成するのが普通です。しかしこういったケースの場合は、思い切り「一般的ではないチーズ」を提供するのも一つの手です。お客様がそれを求めているからです。

ただ、「今回入ったチーズはとてもいいものだ。珍しいものだしそれほどメジャーなものではないけれど、お客様に食べていただきたい!」ということもあるでしょう。そのような場合は、メインを一般的なチーズにして、「おすすめチーズ」として特別なチーズを紹介する方法を使うと良いと思われます。

ワインとチーズの相性について

チーズを出す場合は、ワインとの相性も考えたいものです。特に、「日替わりワイン」などを提供する場合は、そのワインと相性のよいチーズをチョイスしておく必要があります。

上で挙げた「青かび・ウォッシュ・セミハード……」のような分類だけでなく、「熟成具合」「ワインの味」もチーズを選ぶための考慮材料として入ってきます。

濃厚な味わいのチーズには、渋い赤ワインなどが合うと言われています。ただ、実際に経験した例ですが、ものすごく苦い物に甘いアイスワインをあわせて提供していたお店もあります。

ワインとチーズの相性を考えるのは、チーズを提供するお店の責務とさえ言えるかもしれません。また、「このワインにあうチーズは?」「このチーズにあうワインは?」の質問には、的確にこたえられるように準備を。

チーズの値段の告知

チーズは日本では基本的には別会計です。これは一般的な話であり、そのお店に来る人のほとんどが理解していることだと思われます。わざわざ「有料です」と言われる方が不愉快だ、という意見も散見しますので、基本的には別料金であることを案内する必要はないでしょう。

ただ、以前お店で「なんでチーズが別料金なんだ!」と怒っているお客様に出くわしたことも……。トラブルを避けたい、ということであれば、「コースとは別ですが、いかがでしょうか」のように口頭で案内してもいいかもしれません。また、「おいくらですか」と聞かれた場合は、明瞭な料金を告知するようにしてください。