飲食店を営む個人事業主がぜひ理解しておきたい経理業務の基礎

飲食店を営む個人事業主がぜひ理解しておきたい経理業務の基礎

経理とは具体的に何をすることかというと、仕入れ、売上、代金回収をお金の動きから管理することです。経理業務の一定のルールに沿って、事業の日々の取引を帳簿に記録して、最終的に確定申告書(損益計算書とも言う)にまとめ、「一定期間内に事業で利益を出せたかどうか」を確認します。


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飲食店を営む個人事業主がマスターしておかねばならないスキルに経理業務があります。
経理業務とは、日々の取引をお金と商品の流れから帳簿に記録していく作業のことを言います。
また以前はかなり雑な経理処理でも許されていた個人事業主も2014年1月以降、税務署により全員に「記帳と帳簿等の保存」が義務付けされたことにより、正確に経理業務をすることとその基本帳簿を7年間保存しなければならなくなりました。
そのためこれから商売を始める人は経理業務の基礎知識を確実に身に着ける必要があります。

経理業務の目的は主に3つ

経理とは具体的に何をすることかというと、仕入れ、売上、代金回収をお金の動きから管理することです。経理業務の一定のルールに沿って、事業の日々の取引を帳簿に記録して、最終的に確定申告書(損益計算書とも言う)にまとめ、「一定期間内に事業で利益を出せたかどうか」を確認します。

経理業務でまとめた確定申告書(損益計算書)は主に3つの目的に使用します。
①自分の事業が年度単位で利益を出せたかどうかのチェック
②税務署に毎年確定申告・納税しなければならないので、その資料として利用
③融資を受けるために金融機関に出す資料

経理業務の3タイプ

経理業務には期間ごとに3タイプあり、短いものから日次業務、月次業務、年次業務となります。

日次業務はそれぞれの業務の基本となる作業で、毎日の売上、支払などをレシート、請求書や領収書によって現金出納帳に転記する作業です。(現金出納帳は下記でひな型を用意しました)
月次業務は月単位で請求書を取引先に発行したり、仕入れ先への支払、また従業員給与の支払等の作業があります。
年次業務の代表的な作業としては確定申告書作成や納税のための確定申告手続きなどがあります。

したがって、日次業務の作業を仕事多忙を理由に怠っていると結局、後で苦労することになりますので、日頃からまめに日次の経理業務をこなしておかねばなりません。

経理業務で単式簿記を理解する

簿記とは取引で動いた物やお金の流れを帳簿に記録していく作業のことです。経理業務を行う時には全てこの簿記のルールに基づいて作業が行われます。この簿記の知識がないと税理士に節税について相談したり、税務署と納税交渉したり、銀行に融資相談することもできません。

個人事業主が絶対マスターしておかねばならない知識といえるでしょう。ただし簿記には種類が2つあります。簡単なのが「単式簿記」複雑なのが「複式簿記」です。飲食店などの個人事業主はいきなり複式簿記をマスターしなくても、簡単な単式簿記をしっかり理解しておけば現場では十分と言えます。

単式簿記の簡単な事例

単式簿記では取引を単純に収入・支出に分けて記載します。
売上 2,000(収入)
仕入 1,000(支出)
借入 500(収入)
経費① 200(支出)
経費② 300(支出)

単式簿記の原理では、売上2,000 + 借入500 - 仕入1,000 - 経費①200 - 経費②300 = 1,000となって最終的に 1,000のお金が残ったという計算になります。

現金出納帳の付け方

それでは具体的に毎日の取引を記録する「現金出納帳」を見ていきましょう。ネットにて現金出納帳を検索してみてください。

ここで記入する項目は、それが発生した日時、収入・支出の別とその金額、摘要欄に収入・支払の相手の名前と内容、最終の現金残高の4つだけです。

記入上の注意点が2つあります。
①毎日発生する取引なので、数日貯めると大変な作業量になります。仕事で疲れていても、できるだけその日のうちに全ての取引を帳簿に記入する癖をつけておきましょう。
②経費欄に注目して下さい。

支出明細のうち経費欄は水道光熱費、通信費、消耗品費など多くの細かい項目に分かれていて、これらは勘定科目と呼ばれています。現金出納帳の記帳を始める前に、担当税理士やネットから知識を得て、その支出がどの勘定科目に該当するか、しっかり理解しておきましょう。

あとで月次業務、年次業務としてまとめるときに、日次業務の段階で入れるべき勘定科目を間違っていると、税理士から帳簿を訂正させられて余分な時間が必要になります。

経費計上には按分計算が不可欠

さらに経費を計算する上で個人事業主がマスターしなければならないことがあります。それが経費の按分計算です。「按分」とは基準としている数量に比例して物や金銭を分けることを言います。

個人事業主の場合、店舗を賃貸で借りながら、その店舗の一部を居住用に使っていることもあると思います。つまりひとつの建物を事業用・個人用として使っていることになるので、経理業務上、個人使用分を経費に入れることはできません。

そこでどの程度事業経費に入れるかを判断する比率を決めるのが「按分計算」です。

事業用・個人用として重なっている項目には代表的なものとして、家賃、電気・電話代、車・ガソリン代などがあります。家賃なら建物の総面積のうち事業用に使われている部分を割合で出し、家賃総額から事業用家賃を按分して計算します。同様に電気代や電話代の場合、総利用時間のうち事業用に使われた時間、また車・ガソリン代も事業用に使われた走行距離によって按分計算で経費を割り出します。

これらは毎日管理するのは無理なので、月単位で計算すればいいと思います。

月別総括集計表にまとめる

毎日の現金出納帳記入の次にやらなければならないことは月次業務です。そのために使用する「月別総括集計表」を見ていきましょう。ネットにて月別総括集計表を検索してみてください。

この集計表では月単位で収入、仕入、諸経費、そして利益が書けるようになっています。
前に述べた「金銭出納帳」の各項目の合計額を転記することでその月の利益が出せるようになっています。同様に毎月の「金銭出納帳」の数字を月ごとに転記していくことで最終的には1年分の全ての取引が記録されますので、最終的に年次業務としての「確定申告書」を作るための資料ができあがります。

経理業務のまとめ

この記事は経理業務の全体の流れを、個人事業主の観点から日次業務中心におおまかに述べたに過ぎません。その事業規模が大きく、かつ事業内容が複雑になるにつれて、簿記のルールも単式簿記から複式簿記へと変わっていきますし、また必要な帳簿類も一段と増えてきます。また個人事業主から法人になればいつまでも単式簿記でよいということでなく、複式簿記に基づいた決算書を作る必要が出てきます。いずれにしても、経理業務は事業内容・規模に関係なく重要であることは言うまでもありませんので、個人事業主はまずしっかりと単式簿記と経理業務の基礎を理解する努力をして下さい。