【個人事業主の事業承継】プラスとマイナスの資産を把握する!

大きな事業所や複数の取引先など、個人事業主の経営状態が順調であればあるほど、将来は優秀な後継者に事業を継いでほしいという気持ちが強くなるものです。 今回は事業承継の方法と、承継される財産について解説します。


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個人事業主が事業承継する3つの方法

個人事業主が事業承継を行う場合、具体的にはどのような方法があるのでしょうか?
この項では、代表的な事業承継の方法について3つ紹介します。

【M&Aで売却】事業を譲渡する

M&A(Mergers and Acquisitions)とは、会社同士が行う合併・買収のことです。
大企業同士のM&Aはしばしば新聞の経済面を賑わせていますが、個人事業主の場合でもM&Aによる事業の売買は行われています。

とはいえ、買い手側がM&Aを持ちかけてくるような場合でもない限り、経営者自らが売却先を見つけることは簡単ではありません。

こういった場合は、買い手と売り手の仲介をしてくれるM&A仲介会社を利用するのが基本です。インターネットで検索を行えば、さまざまな仲介会社を見つけることができるでしょう。

M&A Propertiesは、全国4万件以上の飲食企業などと関係性を持つ、飲食業界専門のM&A仲介会社です。

飲食業界のM&Aや事業承継に関して10年以上の豊富な実績を持っています。

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多くの場合、経営者の年齢が上がれば上がるほど、経営の負担は大きくなります。もしも体力の衰えから一線を退くことを考えた場合、M&Aで事業譲渡をするというのも選択肢のひとつです。

M&Aで得た利益を退職金の代わりにすれば、リタイア後の生活資金に充てることもできるでしょう。

【後継者に交代】事業を贈与する

個人事業主が自らの意思で、親族や信頼できる従業員などの第三者に事業を譲り渡す方法です。
この方法は、事業を任せられる人材がいる場合は一番安心できる形です。

特に、子供など親族が引き継ぐのであれば財産の移動もスムーズなうえ、事業や経営ノウハウについても早くから教育することが可能です。

親族以外の場合、適任といえる優秀な従業員がいれば、現在の経営状態を維持したままの事業承継ができます。すでに自社の事業について把握しているので、一から教育する手間がないというメリットがあります。

いずれにせよ、身近な人物が継いでくれるというのは、個人事業主にとって理想的な事業承継のひとつだといえるでしょう。

ただし、譲渡する場合は法律上「贈与」として扱われます。この場合、贈与税の対象となるため、譲受側は税金対策が必要となります。

また、M&Aによる売却とは異なり、譲渡益を得ることができない点がデメリットです。リタイア後の生活資金を得られない点を留意して、引き継ぐ対象を決めなければなりません。

【事業主が死亡】事業を相続する

もしも代表者が死亡したり交代したりしても、団体自体の存続には影響のない「法人」と違い、個人事業主は事業主が死亡すると、候補となる親族や従業員が、その事業を廃業するか承継するかを決めなければなりません。

そして承継する場合、事業は故人の財産なので、法定相続人のみが相続の形で承継することになります。

しかし、故人の子供が引き継ぐ心づもりをしていたならまだしも、そうでなければ誰が引き継ぐかでトラブルに発展することもあります。承継だけ完了しても、その後の事業経営が不透明になるうえ、従業員や取引先に迷惑がかかるかもしれません。

それを避けるためにも、経営者はあらかじめ遺言で後継者を指定し、関係者に申し伝えておきましょう。遺言があれば相続人以外でも贈与の形で事業を譲ることが可能です。

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【個人事業主の税金】事業承継で発生する税金

ここまでは、個人事業主が選択できる事業承継の方法について解説しました。
いずれの方法を選択するにしても、税金は発生します。

あらかじめ税金対策をしておけば、スムーズな事業承継を行うことができるでしょう。
ここからは、事業承継における税金対策について紹介します。

1.消費税

事業売上高に対してかけられる消費税は、年間売上が1,000万円を超えた場合、その翌々年から納税義務が発生することになっています。この消費税ですが、生前の承継と相続による承継では義務の発生時期が変わってきます。

生前譲渡の場合、たとえ1,000万円超の課税売上がある事業であっても、原則として承継後2年間は消費税の納税義務はありません。

これは、個人事業の承継手続きとして「譲渡側の廃業」と「譲受側の開業」という形を取るからであり、いわば「新たな事業を開始した」と扱われるためです。

一方で、相続による事業承継だと1,000万円超の課税売上がある事業であれば、承継者は1年目から消費税を納める必要が出てきます。

相続とは被相続人の権利義務のすべてを引き継ぐことであり、納税という「義務」も個人が持っていたままの形で引き継がれるからです。

いずれにせよ、消費税については事業承継人が納税義務を負います。

2.所得税

所得税は1年間の所得(利益)に課せられる税金なので、譲渡方法によっては譲渡側に納税の義務が発生する可能性があります。

M&Aなどで事業主が売却益を得た場合、譲渡所得として申告が必要です。その際は、得た金額すべてに所得税が課せられるわけではなく、譲渡にかかった費用や事業用財産の取得価額を経費として差し引いた額で計算します。

ただし、土地や建物などの不動産は「分離課税」、それ以外の財産(設備や機械、営業権など)は「総合課税」、棚卸資産などは「事業所得」と、それぞれ課税の所得区分が違うので非常に複雑です。税理士など専門家と相談しながら行いましょう。

また、譲受側が減価償却方法を引き続き定率法で行いたい場合には注意が必要です。届出をしないと定額法となってしまい、以後の所得税計算に影響が出ることがあるので忘れず確認をしてください。

3.贈与税

先述のように無償で事業譲渡を行うと、譲受側に贈与税がかかります。
プラスの財産からマイナスの財産を差し引いた財産額が基礎控除額である110万円を超えると、その金額をもとに贈与税が計算されます。

4.相続税

事業承継が相続の形を取ると、相続人に対し事業財産相当額につき相続税が課せられます。
被相続人の他の財産と合わせた額が「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」を超えた分に税金がかかります。

5.節税対策

このように、譲受人の負担となる相続税・贈与税ですが、以下の3つの方法で対策することが可能です。

1.個人版事業承継税制

この制度を利用することで、相続税・贈与税が100%猶予されます。

ただし都道府県知事から事前の認定を受けねばならず、そのために個人事業承継計画書を作成しなければならないなど、かなり複雑な手続きが必要です。

2.生前贈与

相続税対策として一般的に利用されている、生前贈与を事業承継に利用します。全相続財産が非課税枠を大幅に超えることが予測される場合などは検討してもよいでしょう。

3.小規模宅地等の特例

相続による承継で事業用の敷地を引き継いだ場合に、当該土地の相続税評価額が低くなります。相続税の申告期限までに事業を承継し、かつ土地を所有し続けていることが制度の利用の条件です。

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【※ポイント】個人事業主の事業承継で注意すべきこと

最後に、個人事業主が事業承継で注意すべきポイントについて紹介します。
できる限りスムーズな事業承継を行うためにも、それぞれの注意点を抑えておきましょう。

注意1.手続きが煩雑

各種手続きや法的な書類の作成など、事業承継では必要なことが多いです。
ここまでに紹介したことも含め、手続きにおける注意点を紹介します。

後継者選定・教育・引継

事業承継は後継者選びが一番のポイントといってよいでしょう。
特に複数の子供がいる場合などは、それぞれの財産バランスが保てるかについても考えておかないと、後々揉める要因となります。

また、後継者がスムーズに決まったとしても、それで終わりではありません。前述したように経営者としての教育や、取引先への紹介なども必要になるでしょう。

事業譲渡契約書または遺言書の作成

事業譲渡契約書は、きちんと作成しておきましょう。「身内だから」と口約束で済ませるのは、後々トラブルの元となるので禁物です。相続であれば遺言書は必須です。

廃業手続・開業手続

消費税の項でも解説しましたが、個人事業の譲渡というのは、実質的には「廃業を経た後に開業を行う手続き」です。

譲渡人は税務署などにまず廃業届を出し、譲受人がその後開業届を出すことになります。屋号を引き継ぐ場合は開業届にその旨も記載します。
許認可が必要な事業であれば、譲受人が改めて一から申請しなければなりません。

事業用財産の名義変更・取引先との契約の結び直し

事業用の預貯金口座などは、名義変更が必要となります。

また、取引先などへは承継を伝えるとともに、契約書を作り直す必要があります。個人事業の場合、契約当事者はあくまでも個人となるからです。

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まとめ

個人事業主の事業承継ですが、数が多いものの手続き自体はそれほど難しいわけではありません。
重要なのは、事前にきちんと準備をしておくことです。

「誰にどう引き継がせるか」「必要な費用をどう捻出するか」「譲渡後の生活」など、さまざまなことについて考えておきましょう。いざというとき慌てないように、早期に取り掛かっておくことをお勧めします。