【タイミング】社長交代の準備は50~55歳から?
東京商工リサーチの調査によると、全国の社長の平均年齢は62.16歳となっています。これは調査を開始した2009年以降、過去最高年齢を記録しています。
また、平均年齢は62歳ですが、年齢構成比は70代以上が最多です。「社長の年齢が高齢の企業では、事業承継の目途が立っていないと、設備投資や人材採用に消極的となって事業が縮小し、赤字や減収に苦しんでいる傾向にある」と分析されています。
出典:株式会社東京商工リサーチ「全国社長の年齢調査(2019年12月31日時点)」
会社の業績と社長の年齢の相関性を考えた場合、社長交代の準備は50~55歳から始めるのが理想的です。ここではその理由を解説しましょう。
経営能力は年齢によって低下するから
会社を経営するには、意思決定力と周囲の意見を汲む柔軟性が必要です。スピード感を持って意思決定ができ、周囲の意見を取り入れる柔軟性が発揮できるピークは50代とされています。
柔軟性は年齢を重ねるごとに徐々に低下し、さらに70代を過ぎると、意思決定のスピードや挑戦意欲もだんだん低くなっていく傾向にあります。
社長の経営能力は会社の業績に影響を及ぼすため、経営能力を発揮できている段階から、社長交代の準備に入るべきでしょう。
後継者の育成は早期に行う必要があるから
子などの親族であれ、社内の従業員であれ、後継者を決めて社長を交代するまでには数年の時間がかかります。後継者の能力や経験にもよりますが、経営手腕を身に付けるまでの期間は5年から長くて10年を見積もっておきましょう。
遅くとも、社長が70代を迎えるタイミングで新社長に経営を託すには、50~55歳ごろから後継者の育成を始めなければ間に合いません。
タイミングを定めたら、社長交代までの準備
50代前半で社長交代の準備を始め、遅くとも70代に入るまでには交代を完了させることが理想です。
それでは、社長を交代するまでにはどのような準備が必要なのか見てみましょう。
事業承継の方法を考える
会社の株式や事業用資産、創業理念、会社の伝統など、経営者としての有形無形の資産を新しい経営者に引き継ぐことを「事業承継」といいます。社長交代とは事業承継を指しますが、事業承継には3つのパターンがあります。
・社内の従業員への承継
・第三者への承継(M&A)
「親族への承継」は従来、日本で一般的に行われてきた方法です。社内で働いている子どもなどに承継するパターンは、周囲の従業員からも受け入れられやすいでしょう。
ほかの会社で働いている子どもを後継者にするには、教育にかかる時間を逆算して会社に呼び戻し、経験を積まさなければなりません。
後継者となる親族がいない、親族はいるが後を継ぐ意思がない場合は「社内の従業員への承継」を選ぶことになります。
ただし、社長になると、会社が金融機関から借り入れをする際、社長個人が連帯保証人となる「個人保証」を行うことが一般的です。社長の親族でない限り、個人保証を敬遠し従業員への承継がスムーズにいかないことがあります。
後継者がいないからといって廃業してしまうと、従業員や取引先に多大な影響を及ぼしかねません。そんな場合は、第三者へ承継する「M&A」という方法を用います。具体的には、会社の株式を第三者企業に買い取ってもらうことを指します。
M&Aによる事業承継をすることで、従業員や取引先を守りつつ、経営者自身には譲渡による対価が手に入ります。買収先の企業によっては、会社がこれまで以上に大きく育つ可能性もあります。また、後継者を育てる必要がないこともメリットです。
M&Aを検討するには、専門知識を持った人材のいるM&A会社のサポートを受けることがおすすめです。
中小企業の経営者の方はM&A Propertiesにご相談ください。M&A Propertiesは中小企業(特に飲食業界に注力)に特化したM&A会社です。知識豊富なコンサルタントが経営状況やヒアリングを行い、最適な譲渡方法を提案いたします。
詳しくは上記サイトをご確認ください。
後継者の育成方針を固める
親族、または社内の従業員に事業承継を行う場合、後継者をどのように育てるか考える必要があります。
また、上述したように、後継者と交代をするには5~10年の期間が必要です。後継者を決めたら、社長を交代するまでに権限を段階的に委譲することが望ましいでしょう。
社長は後継者に自身の経営方針やビジョンを伝える一方、後継者も社内の従業員に「次の社長の考え」を少しずつ浸透させていくことが必要です。事業計画も、社長と後継者の案をすり合わせて従業員に示すとよいでしょう。
後継者のカラーを少しずつ出して社内になじませていくことで「社長交代による急激な変化に従業員が戸惑う」といった事態を避けることができます。
また、社長交代後、新社長が経営を軌道に乗せることができるよう、旧社長が会長となって会社に残り続けるケースも数多くあります。
社長交代後、会長に就く場合は期限を決めておきましょう。従業員から見ると、社長よりも会長のほうが大きな影響力を持っています。社長が交代したにも関わらず、何も変わっていない印象を与えてしまうのは、新社長の成長の妨げにもなります。
マネジメント体制を整える
社長が交代しても事業を滞りなく推進できるよう、組織の中のマネジメント体制を整えましょう。
特に、創業社長から2代目への事業承継の場合、創業社長の強力なリーダーシップによって会社が発展してきた傾向があります。2代目の社長が創業社長よりも統率力に欠けていれば、組織の運営に支障が出る恐れがあります。
経営層、管理職、チームリーダーとそれぞれの層が立場に応じて、目標管理や人材マネジメント、業務推進などのスキルを身に付けることで、社長のリーダーシップだけに頼らない組織力を持つことができるでしょう。
まとめ
社長の経営能力は50代をピークに年齢を重ねるごとに低下し、70歳を過ぎると意思決定のスピードや挑戦意欲なども著しく低下するといわれています。
後継者を親族や社内から選ぶ場合、育成に10年から20年は必要であるため、社長の経営能力が低下するタイミングで社長交代を完了させるには、50~55歳には社長交代の準備を始め、後継者の教育に着手する必要があります。
そのほか、M&Aによって第三者の会社に経営権を売却し、承継する方法もあります。M&Aによる譲渡は従業員や取引先を守りつつ、後継者を選んだり育てたりする手間がかかりません。そのため、後継者を見つけるのが困難となっている多くの中小企業にとって、事業承継の手段として選ばれています。