後継者育成と注意すべきポイント
事業承継を視野に入れる際に、その後継者育成はどのような重要性をもっているのでしょうか。また、注意しておくべきポイントはどこにあるのでしょうか。
後継者育成の重要性
経営者にとって後継者育成は、会社の存続を左右する重要な業務となります。加えて中小企業の場合、頻繁に経営者が変わることがありません。環境が変化しにくい会社での経営者交代は、社内に大きな影響を与えるでしょう。
事業承継には、5年~10年という長い時間がかかるといわれ、後継者の育成に関しても一朝一夕ではできません。時間に余裕をもって早い段階から後継者育成に取りかかるように注意しておきましょう。
実務とマインドの両方を育てることが大切
準備段階として、後継者が経営者として必要な実務・マインドを習得できるような教育を実施していく必要があります。言わなくても伝わるだろう、ではなく、今の経営者の想いや経営本心に関して後継者にしっかりと話しておかなければなりません。
実務とマインドが合致することで、ようやく後継者本人が次の経営者になるのだという自覚が芽生えていくからです。密で、細やかなコミュニケーションを心がけていきましょう。
社内で後継者を育成する方法
ここから後継者の育成方法に関して、説明していきます。まずは社内編です。実務を中心にこれから経営者になる上で見ておかなければならない点をチェックしていきます。
2.経営幹部としての参画
3.経営者による直接指導・引継ぎ
どれも欠かせないステップです。
1.主要部門でのジョブローテーション
後継者にはまずジョブローテーションで営業・財務・労務など社内の主要部門の実務を学びつつ、経験を積ませていくと良いでしょう。
ジョブローテーションとは、組織強化や人材育成を主な目的とした人事異動をいいます。まずは、自社の事業内容に関して知識を深める必要があるため、ジョブローテーションは後継者の育成において根幹的な役割をもちます。
数年をかけて内側から会社を見ることで、より経営に必要なものが見えてくるでしょう。
2.経営幹部としての参画
経営幹部として経営に参画させ、後継者に経験を積ませていくことも非常に大事です。経営幹部になると、経営における意思決定が必要となります。そこから責任感や使命感がおのずと身についていくでしょう。
また後継者が渉外の役割を担うことで、外とのつながりも着実に作っていくことができます。
従業員や取引先に後継者の顔を覚えてもらう段階は、会社としても極めて重要な段階であり、事業承継に向けての基盤となっていきます。
3.経営者による直接指導・引継ぎ
現経営者による直接指導を行い、後継者としての意欲・覚悟を育てていきます。企業理念・方針を共有し、 経営者としての心構えを後継者に学ばせていきます。
またマインドの側面だけでなく、自社の経営状況や今後の事業計画などビジネスに関する情報共有も徹底が必要です。業界や市場の動向などを分析する重要性を後継者に教え、自社の経営情報を徐々に引き継がせていきます。
社外で後継者を育成する方法
続いて、次期後継者を社外で育成する方法を紹介します。大きくふたつの手段があります。
2.社外セミナーへの参加
1.他社での修業
次期後継者を社外で育成する方法のひとつが、他社で勤務させ、自社にはない経営手法やノウハウなどを吸収させる方法です。後継者が子供の場合、学校卒業後すぐに自社へ就職をするのではなく、まずは自社以外の会社へ就職させるケースが多いです。
この勤務期間のうちに、自社にはない企業風土を身をもって知り、他の経営者の考え方や経営手法を学ぶことができます。また、将来自社に役立つかも知れない新たな人脈作りが可能となります。
人脈作りと経営に関する勉強を同時に習得できる、まさに一石二鳥の育成方法です。
2.社外セミナーへの参加
経営に必要な一般的知識や能力を身につけさせる方法として、社外セミナーへの参加もあります。社内育成と並行して行えるので、セミナーで得た知識を職場で実践でき、セミナー知識をより深められるメリットがあります。
例えば、全国の商工会議所が実施している「経営革新塾」があります。経営革新塾は、若手後継者向けのセミナーです。
各回、それぞれのテーマを決めて実施するタイプのセミナーであり、組織マネジメントのノウハウから決算書の見方まで経営に関するさまざまな分野の知識を蓄えることができるでしょう。
ほかにも40年の実績をもつのが「経営後継者研修」というセミナーです。独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する研修カリキュラムであり、後継者に必要な基本的なスキルを習得できるセミナーです。
誰を後継者にすべきか
後継者は誰にすべきであるのか。これは非常に悩ましい問題です。
ここでは後継者に必要な要素と、事前に確認しておきたい注意点を見ていきます。トラブルを未然に防ぎ、円滑に会社を事業承継できるように、確認しておきましょう。
会社を継続・成長できる人物
大前提として後継者には、経営者としての資質がある人を登用すべきです。
これまでの常識に縛られず、ビジネス環境の変化に柔軟に対応しながら、継続・成長できる人物が理想です。
もし候補者が複数いる場合は、実務能力の判定基準を示した上で選定を行うと良いでしょう。それから各候補者がもつ経営ビジョンの見通し、覚悟や意欲などから総合的に判断をします。
現経営者が明確な基準に沿って判断することで、関係者が納得する答えを導き出し、後継者争いを避けることができます。
親族、社内、第三者
後継者の候補として、親族は最も考えられる選択肢のひとつです。特に子どもは、世代も異なるため、真っ先に浮かぶ候補でしょう。社内、取引先にも受け入れられやすい後継者であり、経営者の資質があるのであれば、最初に打診すべき相手でしょう。
そのほか、社内にいる役員や従業員を後継者として選定する方法があります。後継者にするつもりである旨を早期に本人に伝えて、覚悟を持ってもらうようにしましょう。
そのとき、後継となる役員や従業員に株式を譲渡する場合は、株式取得の資金不足で承継できないなどの事態が起こらないように、対策も入念にしていく必要があります。
必ずしも経営者と株主を同じにする必要はありません。後継者には経営を任せて、株式は他者に譲渡するという方法もあります。株式を譲渡する先は、現経営者と後継者でしっかりと話し合って決定することが望ましいでしょう。
また、後継者を経営者としてしっかりと認めてくれる株主を探すためにも、M&Aを検討し、広く譲渡先を探すことをおすすめします。
あるいはM&Aを通じて、良い承継先を探すという手もあります。当社M&A Propertiesには4万社の顧客ネットワークを活かし、情報提供を実施しています。これらの蓄積されたデータから、円滑にM&Aの交渉を進めることが可能です。
後継者に関する不安をお持ちの場合は、ぜひM&A Propertiesへお気軽にご相談ください。
後継者候補の意思をしっかり確認することが大切
後継者を探す際に、一番重要なことは相手が抱いている意志の確認です。
後継者候補の意向をしっかりと確認し、同時に経営者の想いも伝えましょう。言わなくてもわかるだろうと確認しない、という認識は御法度です。
後継者候補はその気ではないのに、経営者が勝手に後継者の予定にしている。また合意などしていないのに、勝手に次の経営者として取り決めている行為はトラブルの元になります。
親子関係の中でさえ、継ぐ・継がない問題がよく発生しています。しっかりと対話をして、候補者の意志を確認しておきましょう。
まとめ
今回は後継者を育成する方法に関して紹介しました。事業承継において最も重要ともいえる後継者育成は、事前に計画を練って経営者が次につなげていく作業を行ってきたのか、否かで結果が決まります。
また後継者候補を選定した段階であるならば、後継者を社内で育成する、社外の会社で修行させて経験を積ませるなど、経営に関するイロハを徹底的に学ばせていく必要があります。また、知識やノウハウだけでなく、新たな人脈作りも非常に重要となります。
もしどうしても後継者が見つからない、育成がうまくいかないという方は、第三者から後継者および事業承継を検討していくのが良いでしょう。
また、後継者を経営者としてしっかりと認めてくれる株主であれば、今の経営者から、他者に株式を譲渡しても問題はありません。株式を譲渡する先は、現経営者と後継者でしっかりと話し合って決めるべきです。その際は、M&Aを検討し、広く譲渡先を探した方が良いでしょう。
当社M&A Propertiesには豊富な実績とネットワークがあります。またM&Aに関する専門家も揃っています。ぜひご相談ください。