【外食アワード2021受賞】株式会社 DREAM ON 代表取締役社長 CEO 赤塚元気氏インタビュー【後編】30人の社長を生み出す未来戦略

全国から集った1,700を超える居酒屋が日本一の座を争う「居酒屋甲子園」。飲食業界における一大イベントを自ら立ち上げ、過去の2度の優勝を果たしたのが株式会社DREAM ON COMPANYの赤塚元気社長です。大学卒業直後に抱いた「日本一の居酒屋を作る」という夢を実現し、今なお多くの笑顔を生むべく事業に邁進。東京・愛知を中心に、23の業態を展開(2022年2月現在)しており、2021年外食アワードを受賞されました。 後編では、赤塚社長が描く戦略をメインに、飲食業界のトレンドに触れながらドリームオンとしての今後の展開を伺いました。


この記事は約8分で読み終わります。

前半はこちら

記者)初めは名古屋を拠点にされていましたが、その後東京へ進出されています。どのような経緯で進出を決められたのでしょうか?

赤塚氏)学生時代を東京で過ごしたのもあり、単純に東京が好きでしたね。また強者が集まる土地ですから、いつか勝負したいとは思っていました。一方で、万が一東京で失敗しても愛知に影響を出さないようにしろ、とは父から釘を刺されていました。僕が1年間愛知に帰らなくても何も影響ない状態でないとダメだと。実際にその状態を作れるまでには12年の時間が必要でした。

記者)そうして出店されたのが渋谷道玄坂の「DRAEMON」でした。移転先の店舗も好調と聞いています。出店は社長自らがやられていますか?

赤塚氏)DRAEMONはとても愛される店だったのと同時に、自分が経営者としてまだまだ未熟だなと実感させられる出来事もたくさんあった店でした。直営の出店は僕が担当しています。周辺の情報を集めながら検討しますが、最終的には直感で決めています。また数年前は上場を目指していたこともあり、予実管理がしやすい商業施設への出店がいいと考えていました。とはいえ商業施設ならどこでも、というわけではなく、未だに毎回悩んで決めています。なんだかんだ出店しないまま終わることも多いですね。最近出店した横浜のNEWman、渋谷の宮下パーク、名古屋の久屋大通パークなどは悩み抜いたおかげか、みんなヒットしてくれて安心しています。

記者)商業施設への出店は資金もだいぶかかると思いますが。

赤塚氏)施設によって差はありますが、一般的に出店資金は高くなりますよね。でも僕はあまり投資回収を深く考えないんですよ。低コストで早期回収を目的としてはやっていないですね。人生で直営店舗をつくれる数は限られているので、みんなでいい作品を作っている感覚です。それが楽しくて、思い描く作品を作るために少し予算をオーバーしたとしても進めます。経営者としてどうかという問題は別として、費用をかけた分やりきるだけです。

記者)コロナ禍で飲食の本質に立ち戻るという経営者のお話もよくありますが、赤塚さんはその前から考えられていたのですね。新型コロナウイルス感染拡大は飲食業界に多大な影響を与えましたが、ドリームオンさんとしてはどのように受け取り、対応されましたか?

赤塚氏)もともとコロナ前に海外に勉強に行った時期がありました。海外だと0時を過ぎるとレストランも居酒屋もやっておらず、あるのはバーくらい。夜は早く寝て、朝起きてランニングしてコーヒーを飲む文化があって、この流れは日本にも来るなと思っていたんです。日本の若者もお酒を飲まなくなってきて、早く家に帰るという傾向が出ていましたしね。そのため10年後を見据えて主力業態としてカフェやベーカリーを伸ばしたいと思っていたところ、コロナの影響でその10年後がいきなりやってきてしまいました。だったらすぐにでも動かそうとスタートしたのがベーカリー事業の「ワンハンドレットベーカリー」と、カフェ事業の「エスプレッソディーワークス」です。

アフターコロナで居酒屋にどれくらい戻ってくるかまだ読めませんが、利幅の小さい店は閉めてほかに人を配置する方がいいという判断をしました。

記者)海外への出店はいかがですか?

赤塚氏)上場を目指さない方針に変えたこともあり、可能性はあります。先日若い店長を集めた際に、中国と韓国が好きな社員が出店したいということだったので、自信があるなら資金を渡すからやってこいと言いました。本当にやりたいと思える若い感覚のある社員が自主的にやって、会社は場を用意するくらいがいいと思っています。

記者)赤塚さんはヒットメーカーと言われるほど業態づくりに定評がありますが、どのようにつくられているのでしょうか?

赤塚氏)全然そんなことはないんです。ただ、流行っているいい業態だと思っていただけるように、自分のSNSの見せ方には気をつけて投稿しています。これはDORAEMONのブランディングであり、赤塚元気のブランディングで、そのためにSNSをやっていると言っても過言ではありません。僕よりも業態をつくるのが上手な人はいくらでもいると思いますが、そのように言っていただけたり、外食アワードをいただけたりしたのも成果のひとつと言えるでしょう。そうすることによって、信頼度が高まり事業展開やフランチャイズ展開が円滑になるという恩恵もあります。

一般消費者に向けては、行列に並んででも行きたいと思っていただけるようなお店づくりをしてきました。逆に、行列ができるからブランドとして成り立つという側面も出てきたと思います。一回来店してもらうのは簡単ですが、何度も来ていただけるためには飲食店としての本質である“美味しいものを出す”ということにしっかり向き合っていかなければならないと思っています。

記者)新しいブランドとしてワンハンドレットベーカリーとエスプレッソディーワークスを出店されていますが、こちらは今後どのような展開をお考えですか?

赤塚氏)エスプレッソディーワークスは美味しいパンも楽しめるベーカリーカフェとしてFC展開をしています。

意外かもしれませんが、実は居酒屋に比べてカフェの業態はすごく遅れている業態です。チェーン店からおしゃれなお店が出始めて、料理が洗練された専門店ができるという居酒屋と同じ道を数年遅れで後追いしているのが現状です。今はコーヒーにこだわりが出てきたところまで進んでおり、ここから料理が専門的になっていくでしょう。その専門性のひとつがベーカリーカフェだと思っています。

専門性の高いカフェとなると参入障壁が高くなるので、当分は前線にいられると思っています。ベーカリーを選んだ理由ですが、始める前から食パンは流行り物だとわかっていました。とはいえタピオカのような一過性のものではなく、食のインフラとしての地位を確立しているので、需要はゼロにはなりません。近年の高級食パンブームで、食パンに対して少しお金を出してもいいベースが出来上がりました。今後ブームが落ち着き食パン屋も淘汰はされるでしょうが、いい商品なら淘汰を乗り越えて生き残って利益になるのでそこまでは一緒にがんばろう、というのが我々のスタンスです。

ドリームオンの強みは、常に変化し続けられることです。居酒屋から始まり、バル、カフェを経て食パンまで行き着いたので、食パンに固執するのではなく街の需要を受けて変化させていくことを前提としています。

こうしたお話は、FC加盟される際にはしっかりお話し、そのうえでやりますか?というお伺いしています。良いことを言って加盟金だけ受け取るようなマネはしたくありません。加盟店さんが儲からなくて私たちの会社だけ儲かるという結末は望むところではありません。加盟店さんのためにがんばろう、加盟店さんと一緒にがんばろうというのが僕たちのFCに対する姿勢であり、皆で物心両面の幸福を享受したいと思っています。

もしFCに興味がありましたら、株式会社 DREAM ONのホームページのお問い合わせからぜひご連絡をいただければと思います。

記者)企業として広がりを見せる一方で、先ほど上場を目指さないとお話がありましたが、その真意を教えていただけますか?

赤塚氏)以前は上場を目指していて、M&Aで規模を伸ばしていこうと思っていたのですが、コロナの影響もあり軒並み飲食関連の株価が下がりました。この先何年かは飲食企業の株を買う人も少ないでしょうから、上場するメリットが以前より減ったと考えています。今は事業ごとに子会社を作り、30人の社長を生み出していくことを目標としています。

すごくいい条件で、社内から社長を立てて育てられるのであればM&Aの可能性はありますが、会社を大きくするために買うということは考えていません。

記者)大きな1つの会社よりも、分割した小さな会社を増やしたいということですか

赤塚氏)娘が3人ということもあり、元々子どもに継がせるつもりはありませんでした。そのためどうやって事業承継していこうと考えたときに、事業が大きくなったら継いでくれる後継者を設け、それぞれどんどん大きくしていってもらったほうが、社員にとっても物心両面の幸福に繋がるのではないかと思っているんです。

社長という誇りと自信を得られて、さらにしっかり稼げる。最終的にバウアウトして大きなボーナスを得られてもいい。そうなってくれたら僕も楽しいですし、みんながわくわくして働けて、新卒採用の子の夢を見られるんじゃないかなと。新しく作る業態は、最初から将来社長にする人材を立てて作っています。

記者)売却まで盛り込んでいるのはすごいですね。

赤塚氏)今考えている対象は“赤塚元気についてきてくれた10年選手、20年選手”です。社長になったからすぐに売り抜くのではなく、将来売るにしても社長として3年、5年しっかりと経営した後の結果だろうという信頼があります。そこまでしっかりやってくれたなら、もう一度会社に戻ってきてもいい。そのような独立後も仲間意識を持って働けるような契約にして、みんなの夢と物心両面の幸福を実現しながらチャレンジできたらいいと思っています。

記者)独立された方の出口戦略としてM&Aがあってもいいというお話ですね。すでに動かれている事業はあるのでしょうか?

赤塚氏)食パンのワンハンドレットベーカリーが別会社になっていて、女性が社長になっています。また労務と人材育成の会社、カフェ業態が1社ずつ。今1店舗あるハンバーグもいずれ別会社にするつもりです。それらはみんな楽しくわくわくした状態です。

記者)事業展開を取る社長の方は少ないように思いますが、そのような考えに至る背景は何かあるのでしょうか?

赤塚氏)もともと僕は社長の息子なので、裕福になりたい、稼ぎたいといったハングリー精神のようなものは比較的少ないんです。みんなで豊かになりたい、みんなが稼げるようになって、赤塚元気についてきてよかったねと言ってもらえることが僕の幸せです。

記者)本日はお話いただきありがとうございました。