GOSSO株式会社 代表取締役 藤田建氏インタビュー

GOSSO株式会社 代表取締役 藤田建氏インタビュー(前編) 飲食店に求められるニーズの変化と企業方針

「ストレスフリーの焼肉エンターテイメント」をコンセプトに、新鮮なホルモン焼肉と卓上レモンサワーを提供する「0秒レモンサワー®仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」。コロナ禍で多くの飲食店が苦しむ中、2年で50店舗の新規出店を果たしたのがGOSSO株式会社の藤田建社長です。前半は数々の新業態を生み出してきた藤田氏が考える現在の飲食店に求められるものと、それに対してGOSSO株式会社の経営者としてどのように対応してきたのかをお話しいただきました。


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記者)GOSSO株式会社とはどのような会社なのか教えてください。

藤田氏)個人で1期、法人になってから16期が終わり、現在創業17年目の会社です。元々はモデル業をしていて、ITベンチャーで働いた後にzettonに勤め、そこで知り合った社員の方と一緒に渋谷の宇田川町に和食・沖縄・韓国のフュージョン創作居酒屋の1号店をオープンしたのがGOSSOのスタートです。社名のGOSSOは「ごちそう」と「うまそう」の略から付けました。

創業から半年で2店舗目を出して、さらに半年後にオーロラダイニング「sora 宙」をオープン。その後はしゃぶしゃぶの食べ放題、チーズフォンデュの「ガーデンファーム」など、業態の開発会社のような形でトータル20~30業態は作りましたね。新しい業態をどんどん作りながら、要所要所にスマッシュヒットを織り交ぜていく開発力、現場力、変化対応力に優れた会社だと自負しています。現在の「ときわ亭」はその延長線上にあって、いきなりM&Aをしようといったことではなく、我々のテイストを入れた社会にとって価値のあるものを作りたい、ということが根底にありました。

記者)企画の主導は藤田さんが自ら行われるのですか?

藤田氏)そうですね。元々、私自身は飲食業の人間ではなく、Web業界でビジネスを学びました。そのため、飲食をコンテンツとしてとらえて、優良なコンテンツを企画してエンドユーザーに届ける手法を考えています。通常であれば料理のおいしさや接客のよさに焦点が当たると思いますが、コンテンツの企画力によってキャッチコピーから写真の構図に至るまでトータルでプロデュースするという方法は他社と異なる点ですね。

オーロラダイニングを広げる際も、Webに掲載するためのキャッチコピー、写真の構図などにこだわり抜いた結果、ぐるなびの全業種の中でアクセス数日本一になりました。あの時はあまりに予約が入り過ぎてしまい、ファックスが2台壊れてしまいましたよ。

その後、新しいコンテンツとして私が発案したのが壁掛けのアクアリウムを見られるダイニングですね。好評だったので後輩にやり方を教えたら、一気に100店舗くらい拡大させてしまって。おかげで一時期のホットペッパーグルメに掲載されている店舗がみんなアクアリウムダイニングになってしまいました(笑)

記者)コンテンツ重視の見せ方は、Web業界の経験があってこそですね。

藤田氏)そうですね。当時としては、かなり目新しいものを提供できたと思います。一方で、近年ではインターネットの発達が著しく、誰もが簡単に情報へ触れられるようになりました。これにより、コンテンツの見せ方でお客さんまで情報を届ける時代から、料理の味や接客といった本質が重視される時代に軸足が移ってきていると感じます。

記者)立地が良ければそこそこ売れていた時代もあったと思いますが。

藤田氏)単純な瞬間風速であれば駅前に店舗を構えれば、単純に100億を達成できるんですよ。ところが今回のコロナのような状況になるとやられてしまいます。うちも例外ではありません。

そうした変化もある中で、我々が常々掲げてきた「100億100店舗100年」を実現するために何ができるかを考えました。最近流行りのSDGsではないですが、持続可能な会社の必須条件を考えて行き着いたのは、お客様と働く人に支持されるお店であること。そこにいたら価値がある企業ででないと生き残れないという結論から、価値観が大きく変わりだしたのが2、3年前です。この変化がなかったら、今会社は潰れてなくなっていたでしょう。

記者)従来の業態では生き残りが難しいと?

藤田氏)そうですね。飲食に対するニーズもだいぶ変わりましたよね。何でも情報が入るからこそ、物珍しさ目当てではない、価値ある時間の使い方をお客様がご自身で選択するようになってきました。お客様が仲間との大切な時間をどこで過ごすか、と考えたときに、答えは大都市圏にある空中階の居酒屋には見つかりませんでした。コンテンツとも少し違う。お客様に楽しい時間を提供し、人々が働く雇用を生む。地域に根差し、地域に貢献する大衆向けの路面店を目指す。これが今後の生き残りの本質であると結論づけています。ここまで来るのに17年かかりました。

記者)従来とは大きく異なる方針です。その方針の変化はコロナが影響していますか?また、実際に事業を変化させてみて感じることはありましたか?

藤田氏)構想自体はコロナ前からあり、準備は進めていました。コロナはもちろんない方がよかったですが、恐らく、コロナがなければ今も弊社は収益を追究する会社だったと思います。売上を上げろ、収益を上げろ。それができていれば何も言わない、言われない会社のままでした。どうしても会社の調子がいいときは、理念は額縁に入ってしまうものです。

しかしコロナを経て、飲食店そのものの価値が大きく変わりました。大切な人との大切な時間、価値のある時間と空間を提供する尊い仕事と認識できるようにました。今思えば、コロナ前は「自分たちがやらなくてもいい」と思うような、働いている従業員が誇りを持ちにくい仕事だったかと思います。私たちの居酒屋は本当に社会に必要とされているのかと。

だから、従業員には自分たちの事業はユニクロか?と聞くんです。ユニクロがなくなったら困る人が大勢いるじゃないですか。なくなったら困るような企業がなぜ生まれるのかというと、それはお客様のニーズに応えているというシンプルなことです。もし、不採算店舗が出るとしたら、それはニーズに応えていないからですよね。だから、収益を見るのではなく、顧客ニーズを大切にすることで時代の変化にも対応できるのです。変化ができる業種を選ぶというのも一つのポイントです。

記者)ニーズの変化に対応していったわけですね。

藤田氏)今は、自分だからこそできる社会貢献事業として、地域のニーズに応え、従業員みんなが自信を持てるようになったと感じています。私自身にとっても、収益と同時に理念も追求できる会社へと進んでいる手応えを感じます。

うちの会社は収益性の高い会社だったのですが、100億の時に自己資本100%にするという構想があったんです。でもそれってお金の話をしているだけであって、お客様や従業員が笑顔になっているのか?という疑問が生まれました。従業員が笑顔じゃなかったら価値がないなと思ったんです。本当にお客様と従業員が笑顔になれる会社を目指そうと決めたんです。

記者)そうした方針に踏み切られたきっかけはありますか?

藤田氏)多くの企業を見てきた中で、上手くいく企業は共通して「笑顔が多い」という点があるなと感じました。これは飲食業に限らず、他の業種でも同じです。働く店が面白くて楽しい場所なので、従業員もお客様もみんな笑顔になるのです。

特に素晴らしいと思ったのは、串カツ田中さん。関東にはなかった串カツを開発して、一気に広げたじゃないですか。働く人は大変だったかもしれませんが、完全にブルーオーシャンの市場だったので、お客様も楽しんで従業員もやりがいがあったと思います。

今挙げた例以外にも、事業規模に関わらず従業員が楽しく働いてお客様を喜ばせてきた企業はたくさんあった。従来の弊社も決して悪いわけではなかったとは思いますが、もっとやれると思いました。以前が個室のお店で、お客様とのコミュニケーションも取りにくく、ひたすら呼び鈴を鳴らされる…そんな状況だったから余計に変えたいという思いが強くなったのかもしれません。人間関係の軋轢や事故も、長く飲食店を経営していれば発生してしまうこともあります。人が関わるのだからしょうがないと諦めていたこともありましたが、それではいけないと、インナーブランディングを一気に変えて、楽しい職場環境にすると決意しました。労務環境の先行投資は必要です。完全にお客様も働く仲間も、みんなが喜ばないことは絶対にやらないと決めました。

 

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後半へ続く