株式会社INGS 青柳誠希社長インタビュー(後編)「CONA」のM&A秘話と今後の展望

ラーメン、イタリアンバル、焼売と幅広い業態で約120店舗を展開する株式会社INGS。未経験でスタートさせた一店のラーメン店からどのように事業を拡大させたのか。後編では、株式会社INGSの代表取締役 青柳誠希社長に、「CONA」を有するキャンディーBOXをM&Aした理由とその後の経過、今後の展開についてお話しいただきました。


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記者)これで御社の3本の柱が揃いました。CONA、ラーメン、焼売のジョーはそれぞれどのような形での展開を想定されていますか?

青柳氏)CONAは現状一都三県に多く出店している一方、地方にはほとんどありません。今後はそれぞれの土地に慣れた企業さんと組んで、各地の主要都市に出店できたらいいなと思っています。

焼売のジョーは、CONAよりもさらにローカルエリアや住宅街に出店できると思っています。今よりもさらに強いブランドを確立しながら、CONAが押さえている一都三県のターミナル駅から、さらに住宅街まで入り込んで出店していきたいですね。地方はCONA同様にフランチャイズ展開で伸ばしていければと思います。

ラーメンはコロナの環境においても順調に加盟店を増やしています。特に地方のロードサイドが増えています。プロデュースに関する目標はギフトさんですね。今後は、はやし田のプロデュース展開をメインにしたロードサイド出店に力を入れて進めます。

一方で、今のところセントラルキッチンや工場の導入は考えていません。当社のラーメンは、流行や新しいチャレンジを積極的に取り入れて変化させながらやっていきたいと思っていて、それが強みだとも思っています。今後もスピード感をもってやりたいので、自分たちで工場を持つというよりは製麺所と組むなどのイメージが近いですね。

記者)ここまでのお話から、CONAのM&Aから大きく事業が動き出したという印象を受けています。改めて、なぜCONAをM&Aすることになったのか教えてください。

青柳氏)M&Aを考えるきっかけのひとつが、飲食業界の先輩方の上場です。自分がこれから先はどうしていこうかと考えている時期、先輩方がどんどん上場を果たしていく姿がとてもかっこいいものに見えたんです。ちょうどそのタイミングで、キャンディーBOXの社長が海外志向になっていたこともあり、「ここから先は自分よりも得意な人に任せたい」というお話をされていました。当社はCONAを一番多く加盟していて各店舗の裁量が大きく、メニュー作りを含めて自由にやらせてもらっていました。だからCONAへの愛着はかなり強かったんです。上場を目指すなら愛着のあるCONAと一緒に目指したいという気持ちがあり、「僕にぜひ」ということで決まったという経緯です。

正直な話、買収費用は決して安くはありませんでした。銀行からの調達を含め、かなり無理をしたと思います。しかし上場に向けた気持ちのスイッチを入れるタイミングであると、腹をくくった時だと思います。

記者)まさに覚悟を決めたM&Aだったんですね。

青柳氏)そうですね。ただ、あまりマイナスには考えず、前向きにやってやろう、という気持ちの方が強かったですね。ここでスイッチが入ったからこそ、ラーメンなどほかの業態もうまく進んでいった感覚があります。

記者)M&Aした会社と社内の文化や待遇を統合していくプロセスで苦労するというのはよくある話だと思いますが、その点はいかがでしたか?

青柳氏)当時のCONAには直営店がほとんどなく、本部も非常に少人数でやっていましたので、その面では非常に楽でした。一方で加盟店さんに裁量を持たせて自由にさせていたところがあったため、独自の従来の文化が染みついている部分を管理していくのは難しかったです。今も統合はゆっくりと進めているというのが現状です。

大変なこともありましたが、実際のM&Aでしか経験できないこともありますので、やってよかったなとは思っています。

記者)IPOに向けてというところも含め、今後のM&Aは考えていますか?

青柳氏)あまり積極的には考えていませんが、ラーメンなら可能性は十分にあると思います。例えば、私たちが手を付けていないような都心以外のエリアに根付いているラーメン屋など、土着のブランドを僕らが展開していくという流れは面白いかもしれませんね。また醤油ベースではないラーメンやつけ麺など、異なる系統を買うというのもいいシナジーを生みそうだと思います。

記者)海外展開は視野に入っていますか?

青柳氏)今のところは考えられないというのが正直なところですね。3業態の柱を国内で伸ばすので手一杯です。IPOをうまくやったあとに、海外展開が得意なパートナーさんと組めれば面白いかも、という気持ちが強いです。

記者)当面は国内に力を入れられるとのことですが、さらに国内で直営を出すとなると、人材の確保も課題かと思います。特にラーメンは人が集まりにくい業界と言われていますが、その点は何か考えてらっしゃいますか?

青柳氏)今現在、人が余っている感じはしませんが、特別足りない状態でもないという認識でいます。今までいろいろな店を転々としていた人が、当社には長く勤めてくれるケースが多いんですよね。それにはいくつか理由がありまして。当社は深夜営業はしていませんし、IPOを見据えているので無茶な労働条件は設けていません。また自分たちでスープを作るところを含め、ラーメン作りを学べるという実感を得られます。自分たちが主導して進められる仕事をしながらも、労働環境も整っているという点は、満足度が高いんじゃないかと思います。新卒も毎年採っていて、今年も20人は採用する予定です。

記者)今後の出店の方針やフランチャイズの展望などありましたら教えてください。

青柳氏)まずは3業態をしっかり伸ばします。現在ラーメンが直営23店舗を含む約60店舗。CONAが直営15店舗を含む約50店舗。焼売のジョーが直営6を含む約10店舗。合計120店舗ほどを展開しています。

特にラーメンの出店が好調で、今もどんどん増えている状況です。この勢いのまま、日本中に直営とプロデュースの両面でしっかり店舗を増やしたいと思います。まずは数年でしっかり足場固めをするのが目標ですので、直近では新業態への積極的な進出は考えていません。

いい立地の物件をしっかり確保さえできれば、1,000万円クラスの店はまだまだ出せるでしょう。そのためにも家賃はケチらずに出さないといけませんね。当社がいい物件を押さえられているのは、物件をキレイに使う業態であることと、しっかり家賃を出す点が強いと思います。

記者)青柳さんはとてもいい立地に出店されていると飲食業界でも評判ですが、どのように物件を開発していらっしゃるのでしょうか?

青柳氏)特別のことはしていないつもりなんですけどね。会社が小さいときも、物件のオーナーが業態を気に入ってくれて確保できていたと思います。川崎を出す際も、僕は当時27歳くらいで約10社と競合したのですが、最終的に大家さんにCONAを気に入っていただけて、「一番若い君を選ぶとは思わなかったよ」と言われましたね。

記者)プロデュースに関してはいかがでしょうか。

青柳氏)プロデュースに関しては、チャンスがたくさんあると思っているんです。都心でもまだまだいい立地はあると思いますし、地方はさらに手つかずの場所ばかり。うちの醤油ラーメンなら、若い方からファミリー層、ご年配の方まで幅広く地域を選ばずに勝負できるかなと思っています。地方でもしっかり立地を重視していくので、地域差はそこまでなく結果を残していて、今後もそのように展開していこうと思っています。


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