赤字経営を脱却したいときに経営者が取るべき手段3つ

赤字経営に陥る理由は、必ずどこかにあります。その原因を突き止めて対策しなければ、経営はさらに苦しく厳しいものになるでしょう。 しかし、キャッシュフローの見える化や経費削減などの対策によって業績が改善し、黒字化する可能性は十分にあります。


この記事は約8分で読み終わります。

赤字経営とは?パターン別に解説

そもそも、「赤字経営」とはどういった状態を表すのでしょうか。

ご存じの方も多いかと思いますが、会社の1年間の経営成績を表す資料である「損益計算書」では以下のように項目を段階的に区切って数字を表示しています。

・売上高
・売上原価
【売上総利益(純損失)】
・販売費及び一般管理費
【営業損益】
・営業外収益
・営業外費用
【経常損益】
・特別利益
・特別損失
【税引前当期純利益(純損失)】
・法人税、住民税及び事業税
【当期純利益(純損失)】

なかでも赤色で表示している項目が特に重要です。なぜなら、これらで赤字(損失)が何年も続くと、最終的に倒産する可能性が高くなってしまうからです。

それでは、ひとつずつ確認していきましょう。

営業赤字

営業赤字とは、売上高からそれに係る原価や従業員への給料や家賃や消耗品費などの売り上げに対する間接的な費用を差し引いた後の、会社の本業の収支がマイナスである状態を指します。

本業が不振の原因を探り、それを改善しなければいずれ経営危機が危うくなるため、極めて危険な状態であると考えなければなりません。

経常赤字

経常赤字とは、本業の営業損益と本業以外の収益(営業外収益)や費用(営業外費用)を計算した結果、会社の事業全体で収支がマイナスである状態を指します。

営業外収益に算入されるのは、会社が保有している株式の配当金や不動産収入などの本業以外の利益です。また、営業外費用に算入されるのは借入金の利息や保有している株式の売却損などの本業以外の損失です。

では、営業損益との関係はどのようになるのでしょうか。

営業損益が黒字で経常損益が赤字の場合は、本業は順調ではあるが借入金の利息などでマイナスが大きい状態であると言えます。逆に、営業損益が赤字で経常損益が黒字の場合は、本業に課題があるが事業全体はプラスである状態です。

いずれにしても、経常赤字が出ている場合はどの部分が影響しての赤字かを把握しておく必要があります。

現金収支(キャッシュフロー)の赤字

会社の経営成績は損益計算書に表示されていますが、ここには表示されていない情報で大切なことがあります。

それは現金収支(キャッシュフロー)です。これは、キャッシュフロー計算書というお金の流れを集計した表により把握でき、上場企業では作成が義務付けられているものです。

・売り上げたものの掛代金の回収ができていない割合が大きい
・費用に計上されない項目である借入金の返済金額などが大きい

そのような理由で現金収支がマイナスであるなら、業績が良くても運転資金が足りなくなり、黒字倒産の可能性が出てきます。

もしキャッシュフロー計算書を作成しておらず、業績とキャッシュの状況にズレを感じる場合は、現状を確認する意味でも作成することをおすすめします。

当期純損失

当期純損失とは、会社の事業全体の収支である経常損益と、その期だけ特別な要因により発生した利益(特別利益)や損失(特別損失)を計算したうえで、そこからさらに法人税などの税金を差し引いた結果、会社の最終的な業績がマイナスである状態を指します。

特別利益は保険金の入金や固定資産の売却益など、特別損失は災害による損失や賠償金の支払い、資産の評価損などがあった際にそれぞれ計上されます。

本業部分が黒字であっても、本業以外の部分で大きな動きがあり赤字になっているケースもあるので、当期純損失が発生している場合は、その内容をよく精査しましょう。

目次へ

赤字経営だから即倒産するわけではない

ここまで経営の赤字状態について、さまざまなパターンを紹介しました。赤字経営は非常にまずい状態であると考える方もいるかもしれませんが、実は、赤字経営=倒産というわけではありません。

そもそも「倒産」は、法律上用語ではありません。一般的に「経済的に行き詰まり、弁済しなければならない債務を弁済できない状態」を指します。

では、債務を弁済できない状態とは、どのような状態なのでしょうか。

倒産の理由は現金がなくなるから

会社が倒産する一番の原因は、手元の現金がなくなることです。

手元に自由に動かせる現金がないと、取引先への掛代金の支払いや従業員への給料の支払いなどが行えず事業が滞り、取引停止や人員不足に陥ります。そして、最終的に倒産することになるのです。

黒字倒産する場合もある

仮に損益計算書上で黒字を計上していても、月々の借入金の返済額が過大な場合や、掛売上の回収が上手くいっていない場合は、業績上は利益が出ているのに支払いができない状態が起こり得ます。

これが、黒字倒産の状態です。

倒産しないためには資金繰りが大切

つまり、倒産しないためには常に会社のキャッシュフローに注意することが大切です。

仮に赤字決算の期があったとしても、現預金に余裕がある場合や、立て直すまでの間の資金を銀行から借り入れて当面の資金繰りができれば、基本的に会社が倒産することはありません。

つまり、キャッシュフローの状態が分かるようにしておく必要があります。

そのためには、資金繰り表やキャッシュフロー計算書を作成しキャッシュフローの見える化を行うことや、社員全体でお金の流れに対する意識を強く持つことなどが効果的です。

目次へ

赤字経営の原因

この項目では、赤字経営の主な原因について解説します。

売上不振

赤字経営になる原因で最も多いのが、売上不振です。売上不振は収入に直結し、その状態が続けば当然会社の倒産につながります。

実際に、2019年東京商工リサーチの「2019年倒産企業の財務データ分析調査」によると、2019年度の倒産企業のうち約6割の会社が最新期で減収となっています。

そのため、売上不振であれば、早急に原因を追究し対策しなければなりません。

参考:東京商工リサーチ・2019年「倒産企業の財務データ分析」調査

粗利が少ない

そのほかの赤字の原因として挙げられるのが、粗利の減少です。

粗利とは、売上から売上原価を差し引いた売上総利益のことで、どれだけ売上の金額が大きくても仕入金額が大きく利益率が低ければ赤字になるので、経営が安定しません。

コスト増・コスト高

ほかにも経費の増大が赤字の原因となる場合があります。

・売上に見合わない人件費の負担
・過度な接待交際費や旅費交通費の発生によるコスト増

・事務所家賃などの支払い

などをしている場合は、赤字になりやすい状態であると考えられます。

目次へ

赤字経営から脱却する手段

では、どうすれば赤字経営から脱却し、黒字化を果たせるのでしょうか。

赤字の原因のあぶり出し

業績を改善するための方法は大きく分けて、3種類あります。

1.売上高を上げる
2.粗利率を上げる
3.費用を削減する

まずは、自社の商品やサービスについて需要の低下やコストの高騰などの赤字の原因をあぶり出し、課題を明確化します。

同時に効率化による人件費の削減や、そのほかの費用の見直しも行いましょう。

中期経営計画を作成する

業績を改善する方法のうち、「3.費用を削減する」はすぐに取り組むことが可能であり即効性も期待できるでしょう。

しかし、「1.売上高を上げる」「2.粗利率を上げる」は、どうしても中長期的に取り組む必要があります。

そのため、目標や経営課題をはっきりさせ、対外的な信頼を得るためにも3~5年をめどに中期経営計画を作成しましょう。

中期経営計画は、

1.経営理念を明らかにする
2.自社の経営環境の理解をする
3.経営戦略を策定する
4.経営課題を踏まえたうえで行動計画と数値目標を立てる
5.進捗状況を確認する

という5つのステップで進めていきます。

リストラクチャリング(不採算事業再構築)

リストラクチャリングとは事業構造を再構築させていくことを意味し、抜本的な改革や財務体質の改善、不採算事業の撤退などを行うことを言います。
一般的な意味合いで言うリストラによる人員の削減も、その再構築の一環です。

そして、抜本的な改革と事業構造の再構築という意味では、M&Aによる経営環境の立て直しも有効な対策のひとつです。

「赤字会社は売れないだろう」と考える方もいるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。買い手にとって買収に値する価値(事業・ノウハウ・技術・人材・販売網・買収後に見込めるシナジー効果など)があると判断されれば、M&Aはできます。その結果、赤字企業が黒字化することは少ない話ではないのです。

また、倒産すれば失ってしまう従業員の雇用や、いままで培った技術などを残すこともできるでしょう。

しかし、M&Aには買い手の選定や契約など、複雑な手続きが多数あります。いきなり自力でしようとするのは困難です。そこで、M&A仲介会社へ問い合わせ、専門家の助けを借りて進めることをおすすめします。

もし、あなたが赤字経営からの脱却をお考えなら、ぜひM&A Propertiesへお問い合わせください。経験豊富な担当者があなたの現状をていねいにヒアリングし、最適な相手先の提案からM&A成立までサポートいたします。

目次へ

まとめ

赤字経営に陥る理由は、必ずどこかにあります。その原因を突き止めて対策しなければ、経営はさらに苦しく厳しいものになるでしょう。

しかし、キャッシュフローの見える化や経費削減などの対策によって業績が改善し、黒字化する可能性は十分にあります。

もし、赤字経営で不安を抱えている場合は、まずは数字やお金の流れについて理解を深めることから初めてみてはいかがでしょうか。

また、赤字経営の会社や店でも、そこにしかない価値があると判断されれば買い手がついて売却できるかもしれません。M&Aもまた、赤字経営脱却の手段のひとつです。

従業員の雇用を守りたい、会社を潰して今まで培ったノウハウまで失ってしまうのは忍びない、と考えるのであれば、一度M&A仲介会社へ相談することをおすすめします。