開業資金を一番に先に相談に行くところは日本政策金融公庫

開業資金を一番に先に相談に行くところは日本政策金融公庫

新しく飲食店を開業するとき、まず融資を銀行や信用金庫から借りることを考えると思います。しかし、結論から先に言うと開業資金には不向きです。銀行・信金では開業資金のようにまだ売上実績がない場合、信用保証協会付き融資が基本となってしまうためです。


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新規開業者が融資を申込むのは銀行・信用金庫ではない

新しく飲食店を開業するとき、まず融資を銀行や信用金庫から借りることを考えると思います。しかし、結論から先に言うと開業資金には不向きです。銀行・信金では開業資金のようにまだ売上実績がない場合、信用保証協会付き融資が基本となってしまうためです。

信用保証協会付き融資とは、各県にある信用保証協会が担保・保証人もなく信用力に乏しい事業者の連帯保証人となって、銀行等の金融機関から融資を受けられるようにし、代わりに事業者は信用保証協会に保証料を払う仕組みの融資のことを言います。

この保証協会付き融資が開業資金として不向きな一番の理由は融資の出るタイミングが遅いということです。信用保証協会付き融資は一般的に飲食業許可証が発行されて、銀行や保証協会がそれを個々に確認してから初めて融資が実行されます。

しかし飲食店の開業には店舗の取得・改装など色々な準備が必要なので、事前の段階でかなりの資金が必要になります。でも飲食業許可証取得には保健所による検査が必要で、それは早くてもすべての設備が整った直前でないと無理なので、それから保証協会付き融資を実行してもらってからでは、業者への支払いは間に合いません。

その点で筆者は開業資金の相談に行く先を銀行等の民間金融機関でなく、公的機関である日本政策金融公庫に行かれることをおススメします。理由は日本政策金融公庫の場合、開業資金は開業前に申込できてさらに融資も開業前に受けられるからです。

日本政策金融公庫で開業資金に向いている融資

日本政策金融公庫は2008年に旧国民金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫が合併して新しく作られた政府100%出資の組織です。設立の目的は信用力に乏しい法人・個人事業主に低金利の融資を行い経済を活性化させることです。

そして小規模な法人・個人事業主が飲食店の開業資金を相談に行く所は公庫の中の国民生活事業部で、オススメの融資は「新規開業資金」という制度融資です。こちらは「新たに事業を始める人、または事業開始後7年以内の人」が利用できます。

新規開業資金の概要はこちらです。
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html

また「中小企業経営力強化資金」というのも新規開業には使えます。こちらは「新規開業資金」よりさらに金利が1%ほど安く借れます。しかし借れる条件が「認定経営革新等支援機関(外部専門家)による指導助言を受けている人」となっているので、利用できる対象者が限られてきます。もちろんそのような外部専門家(税理士など)が身近にいればこのローンもオススメです。

「中小企業経営力強化資金」の概要はこちらです。
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/64.html

さらに無担保・無保証扱いで利用できる「新創業融資制度」というのもあります。https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/04_shinsogyo_m.html

先に紹介した「新規開業資金」と「新創業融資制度」の違いは、土地・建物等の担保を日本政策金融公庫の融資に出せる人は「新規開業資金」を基本に話を進め、そのような担保もなく最初から無担保・無保証で融資を受けたい人はこの「新創業融資制度」が利用できるという点です。この場合、「新創業融資制度」は無担保・無保証対応であるため、一般的に融資金利が「新規開業資金」より高くなります。

「新規開業資金」という融資が有利な理由

この融資の概要を説明します。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、返済期間は設備資金20年以内、運転資金7年以内、さらに元金の支払据置きができ、期間は借入から2年以内となっています。

創業当初6ケ月~1年以内は売上も不安定なので、この元金支払据置き2年以内という返済条件は利用者には大変便利な制度です。ただし据置き期間中も金利は支払わねばなりません。

金利は申込人の条件により色々ですが、担保のない場合、返済期間5年~20年で年2.25%~2.35%、担保がある場合、返済期間5年~20年で年1.25%~1.85%と極めて低金利に抑えられています。また金利は固定金利なので、銀行金利のように返済期間中に金融情勢で金利が急に高くなるリスクはありません。また一般的に融資条件として担保があれば返済期間が長く取れますが、担保がなければ返済期間は短くなります。

「新規開業資金」はその名の通り、新規開業者を対象にした融資なので他の一般融資より融資が受けやすくなっています。さらに開業前に資金が借れる、そして低金利・固定であること、これらがこの融資の最大のメリットです。

日本政策金融公庫の融資が借れた後の対策

日本政策金融公庫のメリットは店舗をオープンする前に開業資金が受けられるということでした。それでは無事に融資を借れたとして、次はこれを他の融資にどう活かすかというテクニックです。

それはズバリ日本政策金融公庫の融資の借入実績を信用保証協会付き融資に活用するということです。申込者が日本政策金融公庫と併行して信用保証協会にも融資の申込手続きをしている場合もあると思います。そこで信用保証協会に対し、日本政策金融公庫で融資が借れたという実績を強くアピールしたらいいと思います。

元銀行員の著者の経験からも、公的金融機関で融資が借れた場合、その実績は他の金融機関で審査中の融資の判断に良い影響を与えることが多いです。日本政策金融公庫の融資が好材料となって他で予想を超える融資額が受けられたりするかもしれません。

借入は長期で借りて返済は急がないのが良い

最後になりますが、新規事業者の方は融資をできるだけ返済期間の長い資金で借りて運転資金として手元に置き、売上の減少等、不測の事態に備えてください。飲食店の開業は一定期間なかなか軌道に乗りませんが、その間も常に一定額の運転資金は必要になります。金利を節約したいと早めに融資を返そうとする事業主もいますが、返した後に売上が落ちて急にお金が必要になっても金融機関は簡単には追加融資してくれません。

その点、長期借入金は急いで返済する必要がないのがミソです。コツコツと毎月一定額を返済して延滞を起こさない限り、金融機関は一括返済を求めてきません。ゆっくり時間をかけて返せばいいのです。事業が軌道に乗り、十分自己資金ができてから、利息節約のため借入元金の返済を考えてもいいのです。その点では日本政策金融公庫の長期資金は固定の低金利であり、新規開業に対する融資のタイミングも含めてその利用価値は極めて高いものと判断しています。