中小企業再生ファンドとは
中小企業が資金的な危機に直面したときに、その危機を乗り越える手段の1つが中小企業再生ファンドです。
中小企業再生ファンドの概要
中小企業再生ファンドとは、「官民連携によって中小企業を支援する投資事業有限責任組合」のことを指します。事業再生ファンドと言われることもあります。
中小企業ファンドは、中小企業への資金的な支援を行うという名目の上で、金融機関や地方公共団体が出資して形成された組合です。
組合員には、無限責任組合員と有限責任組合員の2種類が存在します。
無限責任組合員とは、「ファンドの債務に対して無限の責任を負う組合員」のことを指し、非常に重い責任を負う組合員です。そのため、投資の回収を確実なものとするため、投資先の中小企業の経営に関して多様な経営支援を行うことが一般的です。
一方、有限責任組合員は、「自身の出資額の分のみに責任を負う組合員」のことを指します。つまり、仮に投資が回収できずにファンドが債務を抱えたとしても、有限責任組合員は自身の出資額を失うだけで済むということです。
多くの組合員は有限責任組合員としてファンドに出資しており、金融機関から地方公共団体までさまざまな組織が参加しています。
しかし、中小企業支援という役割と同時にファンドとして投資を回収するという性質もあります。ファンドは、組合員が出資した資金を投資し、その投資を上回る額を回収する必要があります。そのため、すべての企業が支援を受けられるわけではなく、ファンド側が投資の回収が可能と判定した企業にのみ支援を行うのです。
つまり、「事業における収益獲得能力はあるけれども、過剰債務などの資金的な理由で経営危機に直面している企業」に対して支援投資を行います。投資を行っても回収が困難だと判断されれば、中小企業ファンドからの支援を受けることは難しいでしょう。
中小企業再生ファンドの施策内容
中小企業再生ファンドは投資によって企業に資金を提供するという役割と、直接投資先の企業の経営を支援する役割も担います。この投資と経営支援という2つのアプローチによって、投資を回収する確実性を高めようとするためです。
経営支援の具体例としては、「現状の事業内容の見直し」、「資金調達方法の見直し」、「不採算事業の売却」、「コスト削減」、「営業手法の改善」などの観点から企業の再生を支援します。
場合によっては、ファンドの人間が企業に送り込まれ、経営陣のサポート役として会社に参画することもあります。
中小企業再生ファンドのメリット
中小企業再生ファンドによる資金提供を受けることで、ただ資金を増やすことができるのみならず、多様なメリットを享受することができます。今回は4つのメリットを解説します。
企業を再生できる可能性が高まる
1つ目は、「企業を再生させられる可能性が高い」という点です。
中小企業再生ファンドは中小企業に対して投資や経営支援を行い、企業を再生させることで投資を回収しています。そのため、企業を再生させることに関してはノウハウをもつプロフェッショナルといえます。実際に、中小企業再生ファンドには、経営のあらゆる側面に精通した専門家が在籍しています。
事業承継・企業再生を同時に実行できる
2つ目は、「事業承継と企業再生を両立させられる」という点です。
中小企業再生ファンドが投資先中小企業の経営を立て直す際、事業の選択と集中を図るために、不採算部門の売却に踏み切る場合があります。
不採算部門は全体の重荷となっているため、その事業を譲渡することで、採算の取れている部門に経営資源を集中させ、不採算部門譲渡の対価を資金に充てることができるのです。
中小企業再生ファンドは、事業承継や企業再生に関するノウハウを蓄積している場合が多いため、双方を実現させることが可能なのです。
事業価値を向上できる
3つ目は、「自社の事業価値を向上させることができる」という点です。
中小企業再生ファンドは、投資先の中小企業の業績を向上させることができなければ、利益を得ることができません。そのため、事業価値を向上させるためのあらゆる施策を実行する能力をもっています。
さまざまな経営資源を対象企業に投入することができるため、事業価値が向上する可能性が高まるでしょう。
信用保証協会の協力が得られる
4つ目は,「信用保証協会とのつながりを形成できる」という点です。
業績が低迷している企業に対して信用保証協会が協力することは、通常ではありません。しかし、中小企業再生ファンドが再生に参加することで、信用保証協会は協力してくれます。これにより、今後の資金調達がしやすくなります。
企業再生を進行する上での流れ
それでは、次に経営状態が悪化している企業が中小企業再生ファンドによる企業再生支援を受けるまでの流れを解説します。
1.相談
まず、経営状態が悪化している企業の経営者が、中小企業支援協議会に対して経営支援の相談を持ちかけます。担当者による経営状況などについてヒアリングが行われ、事情を把握した中小企業支援協議会は、案件として中小企業再生ファンドに紹介を行います。
2.検討
案件紹介を受けた中小企業再生ファンドは、投資する価値があるかを判定し、支援企業を決定します。
判定するために中小企業再生ファンドは候補企業に対してヒアリングと企業の開示情報を元にしてさまざまな分析を行い、支援企業を決定します。
3.査定
投資対象の企業を決定した中小企業再生ファンドは、事業や企業のもつ資産などについて査定を行います。
このように、会社の財務状況や法的関係などについて検討することをデューデリジェンスと呼びます。
4.企業再生計画の策定
企業再生を行う上では、計画を慎重に練ることは非常に大切です。既存の目標や戦略を見直し、新たな経営目標や事業戦略を設定します。
そして、そこに到達するための具体的な手段を検討し、再生計画を完成させます。
5.実行・検証
企業の再生計画が完成した後は、その計画に沿って実行します。実行途中においても、その過程を定期的にモニタリングし、PDCAサイクルを回していくことで、策定した目標に対して前進していきます。
6.完了
計画どおりに施策が完了し、策定した目標を達成すれば、企業再生は成功となります。投資および経営支援を行った中小企業再生ファンドに対して利益の分配を行います。
企業再生を行う場合は早期に相談を
自社の経営を立て直したいと考えるなら、迷っている時間は多くはありません。ここからは、その理由を解説します。
企業再生を早めに行うべき理由
中小企業再生ファンドによる企業再生を考えている場合は、早めの行動を強くおすすめします。なぜなら、この方法は再生可能と判定された企業にのみ有効だからです。
中小企業再生ファンドは支援をすると同時に、投資を回収しなければなりません。とはいえ、業績が低迷して資金力に乏しい中小企業は、比較的早いスパンで倒産の危機に直面しやすい状態です。
そのため、手遅れになる前に中小企業再生ファンドの利用を検討するようにしましょう。
企業再生のご相談はM&A Properties
企業再生に関するご相談は、M&A PropertiesのM&A・事業承継のサービスを活用することで実現することも可能です。
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まとめ
中小企業再生ファンドに協力を依頼することで、資金面の不安はもちろんのこと、さまざまな経営支援を提供してもらうことで、企業再生を図ることができます。
また、信用保証協会の協力により、資金援助を得やすくなる可能性もあります。
しかし、中小企業再生ファンドを利用できるのは、あくまでもファンド側が投資価値を見込めると判断した場合のみです。業績が低迷して資金力に乏しいと、倒産の危機に直面しやすくなっています。
手をこまねいているうちに大切な会社を失ってしまっては、元も子もありません。なるべく早く、中小企業支援協議会やM&A仲介会社に相談し、現状の打破に動きましょう。
「自社の事業自体の能力はあるが、資金面で困窮している」という企業は、ぜひ検討をおすすめします。