2024年の飲食業界におけるM&A動向
業績好調な飲食チェーン企業による大型買収が目立ちましたが、2024年の飲食業界におけるM&A成約件数は85件と、2019年の101件にはまだ達していません。一方で、2023年の59件からは大幅な増加となりました。この背景には、コロナ禍から業績をいち早く回復させたファンド等の投資先の売却や、株式売却益課税の税率引き上げ前の駆け込み売却があると考えられます。
また、中小規模のM&Aは徐々に活発化してきています。売主の多くは戦略的売却や事業承継を意図しており、業績が好調な飲食企業が買収に積極的に動き始めています。インバウンド需要やIT関連など他業界からの参入も見られる傾向にあります。
金融機関による飲食業界のM&Aへの融資姿勢には依然として厳しい面がありますが、現状の外部環境が維持される場合、2025年には中小規模から大型案件まで幅広いM&A案件が活発に動くと予想されます。
飲食業界におけるM&A成約件数推移
2012年の安倍政権発足後、アベノミクス等による景気回復とともに、M&A成約件数は次第に増えていき、2019年に101件と過去最高件数となりました。
2020年以降、コロナショックによってM&A成約件数は2015年と同等水準の59件まで減少しましたが、2024年のM&A成約件数は85件と前年から大幅に増加し、コロナショック前の水準にまで回復を見せ、今後過去最高を記録した2019年の水準を超えることが予想されます。
特に、2024年の支配権移動の伴うM&A成約件数の割合は81%と近年はコロナ禍であった2021年の55%から大幅に上昇し、業績が回復したことで将来を見据えた事業承継のニーズが高まってきていると考えられます。
※2024年1月~2024年12月の飲食業界において成約したM&A件数を集計しております。
※弊社においては飲食を伴う店舗型ビジネスのM&Aを飲食業界におけるM&Aと定義しております。

飲食業界のM&Aトレンド
弊社独自の分析により、ここ数年の飲食業界におけるM&A(売主目線)には、主に以下の5つのトレンドが見られます。
①戦略的売却型
・業態整理による売却代金を注力事業へ投入(経営資源を集中)することを目的としています。
・注力事業へ事業を集中することで社員の意識も一致団結し、成長促進に繋がります。
・業態価値の向上施策として、マーケットからも一定の評価をされるケースが多いです。
②事業承継型
・後継者不在問題の解決を図ることを目的としています。
・従業員や取引先へ安心感を醸成(安定化)することができます。
・創業者利益を獲得することができます。
・特に地方の名店などが対象となるケースが増加しています。
③再生型
・不採算の事業・会社でも、第三者の協力により再生できる可能性があります。
・少なからず、一定の従業員・取引先等は守られます。
・早めの決断でダメージを最小限にします。一方で、判断が遅れ、破綻するケースも多くあります。
④ファンド売却型
・業界のしがらみがないファンドへ売却(創業者利益を獲得)します。
・資金調達目的でファンドを引受先とした増資を行うケースが増加しています。
・ファンドの支援のもと、管理体制等の強化、合理的な拡大成長を図り、IPO(新規上場)又は第三者への売却を目指します。
⑤資本業務提携・経営統合型
・事業会社同士のシナジー効果による、発展的な成長拡大を目的としています。
・両社での持ち合いもしくは株式交換等を行うケースが多くあります。
・コロナによる影響が落ち着きを見せるにつれて、自力での回復と成長に注力できるようになったため、資本業務提携は落ち着いてきています。
各トレンド別の詳細・具体的な事例はお役立ち資料【2025年度版】2024年の飲食業界のM&Aトレンドと2025年の展望にてご確認いただけますので、是非ご確認ください。