倒産状態となった企業が取る選択
企業が倒産しそうになった場合、さまざまな選択肢があります。
そもそも「倒産」とは?
「倒産」という言葉に明確な定義はありません。一般的には、「資金繰りに苦しんでいて、そのままでは事業を継続できない状況」とされています。
また、倒産は「清算型」と「再建型」のふたつに分類されます。
清算型とは、会社を畳むことを前提に行う手続きのこと、再建型とは、会社を立て直して事業を継続する際に行う手続きのことです。再建型はさらに「私的整理による再生」と「法的整理による再生」に分類されます。
私的整理による再生とは、弁護士などが中心となって債権者の意向を確認し、経営難に陥っている企業と金融機関などの債権者の当事者同士の話し合いによって進められる再生手続のことです。
法的整理による再生とは、裁判所の監督のもと、法律の定める手続きによって進められる再生手続です。こちらは裁判所が関わるため、法的な力をもった強制的な手続きが可能となります。
企業はこれらの方法から手続きを選択した上で、倒産手続きを進めていきます。
倒産(再生)手続きの種類
前述したように、倒産(再生)の手続きにはさまざまな分類があります。そのなかでも、今回は民事再生が含まれる法的整理に焦点を当てます。
倒産(再生)の一種である「法的整理」をさらに分類すると、以下のようにわけられます。
・特別清算
・民事再生
・会社再生
この中で企業の再建を目指すのは、「民事再生」と「会社更生」です。今回は、飲食業において多く選択される民事再生について詳しく解説します。
なお、会社更生は、不動産等の担保がついている資産を持っていて、且つ、その資産が事業の存続のために必要な会社の場合に用いられることが多い手法です。
「民事再生」とは
民事再生は、企業が債務の負担によって経営難に陥った際に、大部分の債務をカットして、企業の再建を狙う手続きのことです。
債務のカット率は、帝国データバンク(2018年12月19日)の調べによると、2017年の再生計画認可決定を受けた企業のうち弁済率が判明した32社の平均弁済率は15.3%とのことで、約85%の債務がカットされていることになります。
対象が株式会社に限られる会社更生とは異なり、民事再生は個人や法人などすべてが対象になります。
民事再生を利用して企業の再建を行うメリットは、債務の返済を減免できることに加え、企業を倒産させずに事業を継続できる点が挙げられます。
但し、そのためには、債権者集会において、議決権を有する債権者の過半数の同意、且つ議決権総額の2分の1以上の多数で承認される必要があります。
上記承認を受けるためにも、債権者にとって、会社がそのまま倒産してしまうよりも、民事再生を行った方が、債権の回収可能性が高まることを示す必要があるのです。
一般的な民事再生の手続きは、以下の3段階にわけることができます。
2. 民事再生手続の開始から民事再生計画案を提出するまで
3. 民事再生計画案の提出から民事再生計画の認可を経て、民事再生手続を完了するまで
つまり、大まかな流れは、「民事再生手続きの申立によって民事再生手続きを開始し、民事再生計画案を裁判所に提出して認可を得たあと、最終的に民事再生手続きを完了する」ことになります。
民事再生における3つのタイプ
企業の再建を図る民事再生ですが、さらに多く分類することができます。ここでは主要な3つのタイプについて見ていきましょう。
自力再建型
自力再建型とは、民事再生が認可された後に、自らの力で再建を図るという方法です。
民事再生の計画書を裁判所に提出した後、裁判所から民事再生の認可を受けます。認可を受けた後、事業によって得るキャッシュフローによって残った債務を返済していきます。
但し、この自力再建は、民事再生前後において、会社の経営実態に変更がないため、債権者からの同意を得るために、民事再生後に事業が改善していくことにつき納得感のある合理的な説明が求められるでしょう。
スポンサー型
スポンサー型とは、民事再生手続きを行った後にスポンサー企業を見つける方法です。スポンサーからの資金援助を受けながら事業の立て直しを行えるため、自力再建型よりも迅速かつ安定的な再建が可能です。
スポンサー型では、民事再生手続き前の段階においてスポンサーはまだ見つかっていません。この点が、後に解説するプレパッケージ型との相違点です。スポンサーが見つからない場合には再生手続きに時間がかかってしまいます。
プレパッケージ型
プレパッケージ型はスポンサー型と似ている方法ですが、民事再生手続きの前に、スポンサーから再生計画に対する同意を得られる点に特徴があります。企業の再建を図るにあたり、早い段階でスポンサーが見つかっている場合に有効な方法です。
こちらのタイプもスポンサー型と同様に、援助を受けながら再建を進められるため、円滑な会社再建が可能です。
民事再生を利用したM&A
ここまで民事再生の概要について解説してきました。次に、民事再生を利用してM&Aを行う場合について紹介します。
「再生型M&A」
・民事再生において、スポンサーへ事業を譲渡するスキームが再生型M&Aです(上記で言うスポンサー型とプレパッケージ型)。
・主に会社分割による株式譲渡、事業譲渡の2つの方法が用いられます。
・その譲渡対価を用いて債権者への弁済が行われ、残った債権のカットしてもらえるよう交渉
・事業譲渡又は会社分割するスキームの場合、残った法人は清算される(特別清算・破産)
・債権のカットは法人にのみ適応される点は注意しなければならない。経営者が連帯保証になっている場合、連帯保証は解除されないため連帯保証人は、別途「経営者保証に関するガイドライン」による保証債務の整理を行う必要がある。
再生型M&Aとは、民事再生で用いられるスポンサー企業に事業を譲渡する手法です。先に解説したスポンサー型とプレパッケージ型が該当します。
再生型M&Aの主な手法は、会社分割による株式譲渡と事業譲渡のふたつです。残った法人は特別清算や破産によって精算されます。
事業譲渡したら、それで得た対価で債権者へ弁済すると同時に、残った債権は放棄してもらえるように交渉も行います。ただし、債権放棄は法人にのみに適用され、個人にはできない点に注意しましょう。
また、経営者が連帯保証人になっている場合、事業譲渡では債務の譲渡は行われないため、連帯保証は外れません。別途、「経営者保証に関するガイドライン」にのっとって、保証債務の整理を行う必要があります。
再生型M&Aは専門家のサポートが必須
再生型M&Aにおける手続きは複雑であるだけでなく、企業をめぐる利害関係者との調整、税務関係の確認など、多岐にわたる専門知識が必要です。再生型M&Aを成功に導きたい方は、専門家のサポートを受けるべきでしょう。
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M&A Properties には、4万社におよぶグループ顧客ネットワークを生かした幅広い情報収集能力やコンタクト能力があります。そのため、今回のような再生型M&Aや規模が小さなM&A案件、赤字などの難易度が高いM&A案件も制約に導くことが可能です。
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まとめ
企業が経営難に陥った場合、倒産や再建というさまざまな方法が取られます。今回解説した民事再生は、裁判所の力を借りた法的整理と呼ばれる再建手続きの一種であり、多くの飲食店が選択する手法です。
昨今の新型コロナウイルスによる打撃は計り知れないものがありますが、残された選択肢は破産のみではありません。現在の社内の雇用を守り、企業を再建するためにも、民事再生という手法を検討してはいかがでしょうか。