M&Aの資金調達の方法

M&Aは、既存企業の経営基盤や事業をそのまま吸収できるため、労力や時間を削減して円滑な事業拡大を行うことが可能です。 しかし、企業を買収するとなると、その企業価値に比例して多くの資金が必要です。具体的には、買収費用、M&A仲介会社に支払う費用などがあります。 この記事では、M&Aにおける資金調達の方法と、自社に最適な方法を選択するための ポイントについて紹介します。


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M&A資金調達の方法1.内部留保

これは、自社の中で蓄えられた内部留保をM&Aの資金として用いる方法です。

企業は営利集団であるため、事業によって利益を得ます。株式会社の場合、利益から株主へ配当がなされますが、全ての利益を配当するわけではありません。残りのプールされた利益は、「内部留保」または「利益剰余金」と呼びます。

内部留保を資金として用いるメリットは、スピーディーな資金調達ができることです。自己資金であるため、融資や増資などの方法と比較して手続きを省略できます。

一方で、他社をM&Aできるほどの内部留保を現金で蓄えている企業は少なく、自社の運転資金や経営に余裕がなければ、内部留保をM&Aにつぎ込むことは難しいでしょう。それゆえに、準備できる資金の規模が限られると予想されます。

内部留保による資金調達は、調達や返済にかかるリスクやコストを抑えつつ、着実な事業拡大を検討する場合に適しているといえるでしょう。

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M&A資金調達の方法2.増資

増資とは、株主や投資家から資金調達する方法であり、直接金融とも呼ばれます。増資には、大きく「公募増資」「株主割当増資」「第三者割当増資」の3つがあります。ここからは、それぞれのメリットとデメリットについて紹介します。

公募増資

公募増資とは、株式を新しく発行して、引き受けてくれる投資家を幅広く募る方法です。
他の増資と異なるポイントは、企業が特定の相手に対して引き受けを持ち掛けるのではなく、投資家全体に呼び掛けるという点です。

メリットは、短期間で多くの資金を調達できることです。資金調達の相手が投資家全体であるため、調達するチャンスが広がります。また、資金が増加するだけでなく、新たな株主が増加するという点もメリットといえるでしょう。

デメリットは、上場企業や大手企業でなければ現実性があまりないことです。上場企業や大手企業は知名度や信頼性の面で強みを持っているため、公募増資で成功する可能性が大いにあります。しかし、中小企業の場合は知名度やブランド力が低いため、株式の引き受け手が思うように集まらないリスクがあります。

逆にいえば、公募増資は株式市場における知名度や信頼性がある企業にとっては、有効な資金調達方法だといえるでしょう。

とはいえ、公募増資には手続きや時間もかかることから、M&A案件の実行にあわせて機動的に実施することは困難です。日頃から計画を立てて、前もって実行する等の取り組みが必要となります。

株主割当増資

株主割当増資とは、既存の株主に株式を引き受けてもらう方法のことで、既存株主の保有割合に応じて株式を割り当てます。この増資では、既存の株主に株式を引き受ける権利を与える点がポイントです。

メリットは、株主の構成が変化しないため、会社の基盤への影響がないということです。
特に、一族で経営を行う同族会社の場合、家族で株式を保有している場合は多いでしょう。新しく株主を増やすことなく、同族経営を維持したい場合には適している方法であるといえます。

デメリットは、資金調達の規模が限られていることです。対象が既存株主となるため、既存株主に株式を引き受ける権利を与えたとしても、全員が権利を行使するとは限りません。十分な引き受け手がいない場合、当初の資金調達計画よりも小規模の資金しか集まらないケースもあります。

第三者割当増資

第三者割当増資とは、企業が決定した特定の対象者のみに株式を引き受ける権利を与える方法です。この特定の対象者は既存株主の場合もあれば、新しい株主の場合もあります。

メリットは、資金調達の確実性が高いことです。通常、特定の対象者としては、平時より付き合いのある取引先や自社の役員など、「自社と関係性のある者」という場合が多いです。そのため、その対象者が引き受けてくれる可能性は比較的高く、資金調達を安定して行うことができるでしょう。

デメリットは、既存株主の利益を害するリスクがあることです。第三者割当増資で株式を特定の対象者に引き受けてもらうと、株式を割り当てられない株主の保有比率は低下します。結果として、既存株主にとって不利益を与えることがあります。

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M&A資金調達の方法3.融資

融資とは、金融機関などから資金を借りる資金調達方法であり、間接金融とも呼ばれます。
この項では、銀行借入、日本政策金融公庫、LBOの3つの融資について解説します。

銀行借入

銀行借入とは、民間の銀行から融資を受けることで、厳密にいえば、銀行の預金者の預金を間接的に借り入れる方法のことです。

メリットは、M&Aに関する融資制度が整っていることでしょう。近年ではM&Aの事例が増加しており、銀行も円滑な融資を行うためにさまざまな融資制度を準備しています。

デメリットは、中小企業に対する融資審査が厳しいうえに、担保や個人保証の負担が大きいことです。銀行は預金者から預かったお金を貸し付けるため、貸し倒れた場合には責任を負わなくてはなりません。そのため、慎重な審査や、いざというときの保証を用意する必要があるのです。

日本政策金融公庫

政府系の金融機関である、日本政策金融公庫から資金を調達する方法もあります。

メリットは、事業継承やこれから起業する人を対象としているため、他の金融機関よりも貸し付けのハードルが低いことです。また、多くの中小企業への融資実績があるため、信頼性の面でも強みがあります。

デメリットは、審査時間が長いことです。約1カ月はかかるので、融資を検討している場合は、ある程度の時間的余裕を持って応募するべきだといえるでしょう。

LBO(レバレッジド・バイアウト)

LBOとは、売手企業の資産や将来のキャッシュフローなどを担保にして金融機関から融資を受ける方法です。

メリットは、ローリスクハイリターンであることです。LBOでは、担保を提供するのは売手企業であるため、買手企業のリスクは減少します。そのうえ、M&A後の経営が成功すれば多くのリターンが得ることができるでしょう。

デメリットは、支払う利息が高いことです。売手企業の将来性を担保にすると、金融機関にとって大きなリスクが存在するため、リスク回避のために利息が高額になる傾向があります。また、中小企業の資金調達においては、なかなか銀行が応じてくれず、ファンドや一部の大企業のみしか銀行に応じてもらえないという実態もあります。

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資金調達にかかるコスト

M&Aの資金調達をする際、増資の場合には株主資本コスト、融資の場合には負債コストが発生します。それぞれ、どのようなコストなのでしょうか。

株主資本コスト

株主資本コストとは、株主が会社に期待する収益率のことを指します。
株主は資金を会社に提供するリターンとして配当を得ます。配当の元は会社の利益であり、利益は収益から発生します。つまり、株主は会社の収益率に関心があり、会社に対して期待する収益率の存在が出てきます。この収益率のことを株主資本コストと呼ぶのです。
株主資本コストの計算は複雑であり、基本的にはCAPMモデル(資本価値価格モデル)を用いて算出します。

負債コスト

負債コストとは、借り入れをした際にかかる利子率のことを指します。
具体的な計算式は、利子率×(1 – 法人税率)です。
(1 – 法人税率)は、負債である借入金が税務上損金算入できるということから,
節税効果もあります。

増資による株式での調達は一見すると元本を返さなくても良く、また企業業績が悪い場合は、配当も支払わなくても良い方法のため、経営者から好まれる傾向にありますが、実際の所、株主資本コストは負債コストよりも高いため、どこかで高くつく可能性があることを肝に銘じておきましょう。

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自社に最適な資金調達方法を選ぶには

M&Aの資金調達方法にはさまざまな方法があります。その中から、自社にとって最適な方法を選択することは非常に重要です。
ここからは、最適な資金調達方法を選ぶポイントについて紹介します。

適切な方法と比率を考える

最適な資金調達方法を選ぶには、自社の置かれた状況にマッチした方法と、その比率が重要です。

外部から資金調達を行う際には直接金融と間接金融がありますが、それぞれのメリットとデメリットやコストを考えて資金調達を行いましょう。また、どちらか一方のみで資金調達を行うのではなく、方法の組み合わせを検討することも大切です。

専門家へ相談する

資金調達の方法は専門的である場合が多いため、その方法については、銀行やM&Aを扱う資金調達コンサルティング、M&A仲介会社などへ相談するのが良いでしょう。

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まとめ

M&Aにはさまざまな資金が必要となるため、内部留保、増資、融資などの方法を用いて資金調達を行う必要があります。
それぞれの方法にはメリットとデメリットが存在するため、自社に適した方法を選ぶことは非常に重要です。
専門家のアドバイスを受けながら安定した資金調達を行い、M&Aを成功に導きましょう。