M&Aの買収は相続税対策になる! 店舗を例に節税方法を紹介

M&Aを実施する際に、税金に関することは重要です。しかし、計算方法が複雑といった理由などから、どうしても後回しにしがちな事柄だといえるでしょう。 とはいえ、税金の知識は経営において必須であり、経営者なら避けては通れない問題です。 では、もしも買収した店舗を将来的に自分の子供へと事業継承する場合、税金はどのように計算されて、どのくらいの金額になるのでしょうか。 この記事では、M&Aにおける節税の仕組みと計算方法について詳しく解説していきます。


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M&Aで店舗を買収すると相続税対策になることがある

結論から述べると、M&Aで店舗を買収すると相続税対策になることがあります。そもそも相続税とは、多額の財産であればあるほど多額の税がかかります。そのため、所有している財産によって相続税は変動します。

これらの税率は、統一された評価ルールによって定められています。その評価ルールに照らし合わせて相続税評価額として計算され、納税することになります。その結果、本来の価値と乖離(かいり)が発生します。得になるという話はこの乖離があるためです。

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M&A価格(時価)と相続税評価額は違う

節税のポイントとなるのは、M&A価格(時価)と相続税評価額が違うという点です。

相続税は国税庁が発表している財産評価基本通達を根拠として、適切な課税を行うように決定されています。その際に採用される相続税評価額は、物件が本来持っている時価に相当する株価評価額とはまったく異なるため、節税ができることもあるのです。

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M&Aで買収した店舗を相続する場合の相続税

では、M&Aで買収した店舗を相続する場合の相続税について考えていきましょう。
相続税を算出する際には、その相続の対象が株式譲受によるのか、事業譲受によるのかによって、異なる点があります。
この項では、「株式譲受の場合」と「事業譲受の場合」に分けて解説します。

株式価値の評価額から算出する

相続が発生した時点で、店舗を経営する会社の株式評価額がいくらであるのかを算出します。これが預金の話だと、簡潔で明瞭です。相続発生日に預金残高が1億円あれば、それがそのまま評価額になるからです。ただ株式といった資産の場合、話はそう単純ではありません。

まず株式の評価は、同じ条件であっても、誰がどのくらいその株式を保有しているのかで評価額が変わっていきます。

大まかに、株式の半数以上を一族が保有している状況とそれ以外で分けられます。後者は一般企業と差がなく、特例的な評価方法である配当還元方式を認められています。この方式では過去2年間の株式の配当金額を10%の利率で還元します。元本である数値から、株式の価額を求めようとする方式がとられます。

一方で、株式の半数以上を一族が保有している状況である場合、特例的評価方式が採用されます。この評価方式では更に、条件が3パターンに分岐します。

・類似業種比準価額方式
同業種の会社と、経営している店を比較して株価を算定する手法です。

・純資産価額方式
会社を解散させたとき、手元に残る金額で株価を算定する手法です。

・上記二つの折衷方式
会社の規模を五段階に分別して、株価を算出する手法です。会社の従業員数や売上高、総資産額を使って判定されます。従業員が70人を超える会社は、無条件に大会社に分類されるなど細かな基準が存在しています。会社規模の判定は、業種などによっても条件が異なります。
詳しくはこちらをご覧下さい。

事業価値の評価額から算出する

事業譲受などによって得た事業資産の価値は、時価純資産額に営業権(のれん)を加えた額になります。つまり、相続税はこの事業資産の全体の価値をもとに算出されることになります。そして、相続税を算出する際には、この営業権は低く設定されることになっており、結果として節税対策を行うことが可能です。

なお、営業権の評価計算の際には、国税庁の「営業権の評価明細書」を利用すると良いでしょう。

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営業権の評価額を算出する方法

前述のように、事業譲受によって得た事業資産を相続する際は、時価純資産額に営業権(のれん)を加えた額を元に算出を行います。そして、節税対策を考えるうえで、この営業権の算出が非常に重要な部分となります。

しかしながら、営業権は最も評価額が見えにくい指標の一つです。どのように算出していくのか見ていきましょう。

前提として、財産評価基本通達は「のれん」ではなく「営業権」という名称で呼ばれています。営業権の評価額を算出する方法は以下の通りです。

・平均利益金額×0.5-標準企業者報酬額-総資産価額 × 0.05 =超過利益金額
・超過利益金額×営業権の持続年数(原則として、10年。)に応ずる基準年利率による複利年金現価率=営業権の価額

(注) 医師、弁護士等のようにその者の技術、手腕又は才能等を主とする事業に係る営業権で、その事業者の死亡と共に消滅するものは、評価しない。<国税庁HPより引用>

平均利益金額とは

平均利益金額とは、課税時期の属する年の前年以前3年間(法人にあっては、課税時期の直前期末以前3年間)における所得の金額の合計額の3分の1に相当する金額を指します。

課税時期の前年から過去3年間(法人の場合は課税時期の直前期末以前3年間)の所得の合計額×1/3で算出できます。

標準企業者報酬額とは

標準企業者報酬額は平均利益金額を利用して計算します。算式は4種類あります。

・平均利益金額が1億円以下の場合
平均利益金額×0.3 + 1,000万円
・平均利益金額が1億円超3億円以下の場合
平均利益金額×0.2 + 2,000万円
・平均利益金額が3億円超5億円以下の場合
平均利益金額×0.1 + 5,000万円
・平均利益金額が5億円以上
平均利益金額×0.05 + 7,500万円
国税庁HPより引用>

以上のような計算方式となります。平均利益金額が5,000万円以下の場合には、無条件に営業権はゼロ評価です。

総資産価額とは

総資産価格は、課税時期における企業の総資産価額を適用します。この金額は相続・贈与税関係の基本通達「財産評価」に従って、決定されます。

営業権の持続年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率とは

営業権の持続年数に応ずる基準年利率と複利年金現価率は、国税庁が公式ホームページ上にて随時公表中です。相続税評価を行う時期に都度、確認しなくてはなりません。相続するタイミングに応じた数値が適用されます。

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まとめ

株式を評価する場合、株主の配分比率や会社の規模によって、相続税評価額の計算方式は大きく変わっていきます。また、事業を評価する場合、のれん(営業権)の評価額を算出する方法も非常に複雑です。もし計算に不安であるなら、専門家に依頼して、相続税評価額を出してもらう方が確実です。

節税対策はあらゆる対象を正しい順序で、適切にしっかりと評価を算出した上になるものです。評価額がどのように算出されるのか。その順序を前もって確かめておきましょう。