スモールM&Aとは
スモールM&Aとは、小規模な会社による買収、売却を指します。
ただし、法律上に明記された用語ではないため、細かな定義は各事業者によって異なります。一般的なスモールM&Aの対象となる企業は、以下のとおりです。
・売り手、買い手の年間売上高が1億円以下(双方・片方どちらでも可)
・売買金額が1億円以下
たとえば個人事業主の飲食店の売買は、スモールM&Aに該当するといえるでしょう。ここからは、飲食店のスモールM&Aに焦点を当てて解説していきます。
スモールM&Aが増加する背景
スモールM&Aが増加している背景には、買手側の視点として、新規事業を一から立ち上げる必要がないことがあります。
すでに飲食店の土台が築かれた事業を購入することで、新規事業の立ち上げにかかるコストを抑えることができ、事業展開の拡大が狙えるきっかけにもなります。
また、通常のM&Aと比較して規模が小さいため、すぐに意志決定を下せる点も魅力的です。飲食店の場合は比較的早く新規開店に向かえるため、スモールM&Aを利用した購入希望先が増えてきています。
スモールM&Aのメリット
スモールM&Aの具体的なメリットは、以下の3点です。
・時間をかけずに開業できる
・費用が安く抑えられることが多い
・収益の予想を立てられる
M&Aは居抜き店舗とは異なり、買収した店舗の屋号やメニュー、人材をそのまま引き継げます。特に人材はノウハウや経験に富んだ従業員を獲得できるため、一から店舗を開業するよりも時間や費用をかけずに済むでしょう。
また、周辺の立地に詳しい人材がいれば、利用層やピーク時間の把握も簡単に行えます。同業種であれば、開業前にある程度の集客のシミュレーションができるでしょう。
スモールM&Aのスキーム
次に、スモールM&Aのスキームは大きく「株式譲渡」と「事業譲渡」の選択肢に分けられます。
この項では、各スキームの概要を紹介していきます。それぞれのメリットも紹介しているため、事業に見合ったスモールM&Aの方法を検討しましょう。
株式譲渡
株式譲渡は、売り手企業の株主が、買い手に株式を譲渡することで経営権を移す方法です。
基本的に以下の3つの手続きで実施可能です。
1. 株式譲渡契約書の締結
2. 取締役会(株主総会)での決議
3. 株主名簿の書き換え
株式譲渡の最大のメリットは、手続きが速やかに済ませられる点にあります。株式譲渡では賃貸借契約や雇用契約、リース契約等の各種契約を締結し直す必要がないためスムーズに進むケースが多いです。
手軽に店舗を構えたいという経営者にとっては、株式譲渡によるスモールM&Aは利用しやすい手法でしょう。
事業譲渡
事業譲渡は、売り手企業が有する「事業の一部またはすべて」を買い手側が買収する手法です。
株式譲渡との違いは、株式(経営権)が移転しない点にあります。事業に関係する資産や権利や無形資産だけを移転するのが事業譲渡の特徴です。
そのため、事業譲渡では不必要な資産を排除して購入することができます。特に借入金等の債務を引き継がずに済む点がメリットです。
ただし、これらの契約関係を引き継ぐ場合には、従業員や取引先からひとつずつ同意を得て再度契約を締結する必要があります。
株式譲渡と比較すると、事業譲渡に要する手間や労力は大きいため注意しましょう。
スモールM&Aの注意点
ここからは、スモールM&Aの注意点を紹介します。
手軽そうだからと軽い気持ちで実施すると、大きな落とし穴に落ちてしまうかもしれません。トラブルを避けるためにも、スモールM&Aの注意点をしっかりと確認しておきましょう。
専門知識が必要
スモールM&Aとは言え、M&Aであることには違いはありません。人材や資産だけでなく、ビジネスモデルや法律、権利など、非常に多岐にわたる膨大な事項が絡んでいます。
専門知識も含めた全事柄を限られた時間内で精査する必要があります。スモールM&Aを実施する前には、必要最低限、準備しなければならない事項をチェックしておかなければなりません。
買収先企業の価値評価が難しい
M&Aを行う際、買収先企業の買収価格は、企業規模や事業といった価値評価を見極めて決定されます。
ある程度規模のある企業が売り手であれば、企業に関する情報は財務諸表や経営計画書などから得られます。また、ホームページやインターネット上の情報なども参考にできるでしょう。
しかし、スモールM&Aでは基本的に個人事業主や中小企業が売り手です。
企業に関して得られる情報量が少ないため、価値評価が非常に難しく、買収価格の決定が難航する可能性があります。特定の事業単体などを買収する際も同様です。
スモールM&Aを行う際は、買収先の経営陣や従業員に対してのヒアリングのほかに、M&Aの専門家を介したデューデリジェンスの実施などが求められます。
成功報酬などの負担が大きくなる可能性がある
M&A仲介会社に依頼する場合は、着手金や成功報酬といった手数料の負担が必要です。
成功報酬の金額設定によく用いられる体系が「レーマン方式」です。レーマン方式では、取引金額に応じて成功報酬の料率が決定されます。
注意したいのが、成功報酬に最低報酬額が設定されている場合です。最低報酬額が設定されていると、取引金額がどれだけ小さい案件でも一定の報酬額を支払う必要があります。
スモールM&Aを仲介会社に依頼する際は、最低報酬額がM&Aの規模に見合ったものになっているかよく確認しておきましょう。
M&Aの経験や知識をもつ専門家を介することは、将来的な損失やトラブルなどのリスク回避に非常に役立ちます。M&A仲介会社はよく見極めたうえで依頼しましょう。
提示された買収先の検討は慎重に行う
スモールM&Aを通じて、本当に買収して問題のない飲食店かどうか、自分の目で確かめておく必要があります。実際に店へと足を運んで、入店するなどの調査も必要です。
開業して、問題のないお店かどうかの確認をしておきましょう。
魅力的な買収先とマッチングする方法
スモールM&Aを成功させるために、魅力的な買収先とマッチングするにはどのような方法があるのでしょうか。
買収先とマッチングするには、以下の方法があります。
専用サイトを使う
魅力的な買収先とマッチングするには、インターネット上にあるマッチングサイトを利用する方法があります。
企業情報が詳細に記載されていれば、よく確認しておきましょう。魅力的な買収先かどうかを判断する材料は以下のとおりです。
・対象企業の業種
・事業を営む場所
・売上高や営業利益などの財務情報
・希望する譲渡額
・事業を譲渡する理由
注意点として、インターネットでのマッチングは当事者同士の交渉でトラブルが生じる可能性があります。
M&A仲介会社へ相談する
M&A仲介会社へ相談すると、スモールM&Aに適応した魅力的な買収先を提示してくれます。
ここでの魅力的なポイントは、普段、中堅や大型の案件と同様の手厚いサービスやサポートがスモールM&Aでも受けられる点にあります。
M&A Propertiesでは、4万社に及ぶグループ顧客ネットワークを生かしたサポートが可能です。ぜひスモーM&Aを考えられている方は、弊社をご活用ください。
まとめ
スモールM&Aは、小規模会社や個人事業の会社を対象としたM&Aを指します。明確な定義はありませんが、年間売上高や売買金額が1億円以下の企業はスモールM&Aの対象といえるでしょう。
スモールM&Aのメリットは、手軽に実施できる点です。しかしM&Aではありますから、手続きの内容が複雑であることは否めません。
やはりM&Aの専門家に相談を行いながら、交渉を進める方がよいでしょう。
もちろん、スモールM&Aは、経営者が単独で進めることも可能です。ただ相手先が誠実で信頼できる会社であるかを見極めなければならない課題もたくさんあります。
少しでも疑問を抱く場面があれば、M&A仲介会社に相談すると良いでしょう。