債務超過の会社でも売却できる!その条件と方法とは

債務超過状態とは、貸借対照表における資産よりも負債が多く、純資産がマイナスの状態を指します。この状態に陥った会社は、清算価値としてはマイナスの状態です。 今回は、債務超過の会社を売却するための条件、売却前にやっておくべきこと、売却する方法を具体的に解説します。


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債務超過でも売却できる条件

債務超過の会社が売却できる場合、買い手にメリットがあり評価額がつくパターンと評価額がつかないパターンに分類できます。

評価額がつく条件

債務超過の状態であっても、目に見えない価値や買い手にとっての強いシナジー効果がある場合は売却可能性があります。たとえば、営んでいる飲食店が老舗で歴史が古くブランド価値がある場合や、将来性のある技術力を持つ事業を保有しているもののまだ顧客を獲得しておらず、先行投資による影響で債務超過となっている場合などが考えられます。

つまり、会社の目に見えない価値(歴史、ブランド、知名度、技術力など)がある場合、評価額が付く可能性があります。買い手とのシナジーが見込まれれば、売却の可能性が高まるのです。

会社の強みや買収すると得られるメリットを分析し、買い手に納得してもらえるようにしておくと良いでしょう。

1円譲渡も可能

たとえ買い手から評価額がつかなかったとしても、株式の価値を1円で譲渡できる場合があります。

売り手から見れば売却益はありませんが、買い手が事業運営を引き継ぎ、ブランドや従業員の雇用を守れるでしょう。また、負債なども承継してもらえるので、売り手が返済していく義務を免れます。

買い手としては債務を負担することにはなるものの、既存事業とのシナジー創出や事業の立て直しが見込める場合にはブランド獲得、新規立ち上げに伴う時間や人材獲得コストを抑えるメリットを得ることが可能になります。

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企業価値の算定方法

ここで、債務超過状態の会社売却にあたり、企業価値の算出方法の概要を簡単に説明します。
債務超過の場合によく使われる企業価値の算定方法は、DCF法、類似会社比較法と時価純資産法です。

1.DCF法

DCF法とは、Discount Cash Flowの略で、将来獲得が見込まれるキャッシュフローを現在価値に割引計算することで企業価値を算出する方法です。

債務超過に陥り現在赤字が続いていたとしても、1年後、2年後、などの将来において、黒字のキャッシュフローが見込まれれば企業価値もプラスの値となります。

DCF法において重要なのは将来の事業計画です。事業計画がきちんと作成されており、達成見込が高いものであれば買い手も評価を付けやすくなるからです。

2.類似会社比較法

類似会社比較法とは、評価対象に業種・規模・収益・成長性・戦略などが類似している上場会社をいくつかピックアップし、それらの株かを元に評価対象の企業価値を割り出す方法です。

類似した上場会社と比較・評価するので評価が平等で偏りがないこと、誰でも計算が簡単にできることなどがメリットです。ただし、ベンチャー企業やニッチな業種などの理由で類似した上場会社がない場合は、企業価値の割り出しが困難な場合があります。

3.時価純資産法

時価純資産法とは、貸借対照表上における資産と負債を時価評価することにより企業価値を算出する方法です。たとえば、保有土地や未上場株式を時価評価することにより、含み益が出るケースでは、財務諸表上では債務超過となるものの、時価純資産法では債務超過とならない場合があります。

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債務超過の会社を売却する4つの方法

債務超過の会社を売却する方法は、株式譲渡、事業譲渡、会社分割、合併の4つです。

1.株式譲渡

株式譲渡とは、買い手に株式を売却し、経営権を譲渡することです。株式譲渡契約書を締結することで実現可能であるため、手間がかかりません。買い手は飲食店のノウハウを早く吸収し、店舗の継続ができるメリットがあります。

債務超過のケースでは株式の価値自体は低く見積もられ、譲渡対価が得られる可能性は低いものの、経営者の借入金にかかる連帯保証を外せる可能性があります。実務的には連帯保証を株式譲渡に併せて外すような交渉を行います。

2.事業譲渡

事業譲渡とは、会社そのものではなく、会社が行っている特定の事業のみを売却することです。売り手には、事業売却益がでることや売却資金によって負債を返済できるメリットがあります。

事業譲渡であることから、買い手は会社をすべて買収する必要はありません。債務をすべて引き継ぐ必要がなく、売り手と買い手の合意により、引き継ぐ事業の範囲が明確となる点が特徴です。

但し、事業を引き継ぐにあたっては、対象となる事業の契約関係を全て締結しなおす必要があるため、手続きが煩雑になります。

3.会社分割

会社分割とは、事業を切り離して別の会社に承継させる方法です。事業譲渡と会社分割の違いは、買い手が事業とともに資産や権利、契約などを包括的に引き継ぐ点です。

つまり、事業譲渡の場合は対象事業の契約を全て締結しなおす必要があるのに対し、会社分割であれば法的手続きに沿って一括で承継できることになります。

売り手には、一部の事業のみ売却できるメリットがあります。買い手には、自社の行っている事業に近いもののみ買収することが可能です。

たとえば、売り手が複数の種類の飲食店を別々の事業として経営している場合、そのひとつの事業のみを会社分割により買収することができます。黒字の事業のみを別会社として切り離すことで、売り手は譲渡対価を得られる可能性が高く、買い手は債務を引き継がずに収益性の高い事業のみを譲り受けることができます。

4.合併

合併とは、ふたつ以上の会社をひとつの会社とする手法です。一定の条件を満たす合併(適格合併のケース)であれば、繰越欠損金を引き継げるため、吸収した会社に税金面のメリットが生じる可能性があります。

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【5つのポイント】債務超過の会社売却を成功に導くには

債務超過の会社売却を成功させるためには、ポイントが5つあります。

1.経営改善する

会社売却を成功させるためにも、まずは経営状況の改善をすることが第一です。
そのためには、債務超過に陥った原因を特定し、可能な限り改善を図ることが必要になります。
売上の低迷、コストの増加、その他経営を圧迫している要因がないか、緻密に分析することで改善の可能性が見出すことができるでしょう。

会社売却においては買手企業に対して要因と改善案を説明できるようになっておくことが望ましいです。

2.自社の強みを見つける

債務超過という不利な状況を少しでも好転させるためには、買い手に自社の強みを良く理解してもらうことが大切です。そこで、売却を進める前にあらかじめ自社の強みを見つけておきましょう。

たとえば、一定数の固定客がついている飲食店であることや、従業員の教育ができているなど、他店と差別化できているポイントをいくつか挙げて、説明できるようにしておいてください。

3.企業価値の見直しをする

自社の隠れている企業価値を見つけることで、売却の可能性を高められます。たとえば、土地や有価証券、権利金、会員権といった資産に含み益があることや、役員報酬が高額な場合は一般的な役員報酬に直すと赤字幅が小さくなるといったことを、把握しておきましょう。

4.シナジー効果が見込める買い手を探す

自社の事業とのシナジー効果を見込める買い手候補にアプローチすることで、売却しやすくなります。本業と関連性の高い事業を展開する候補だけでなく、他業種にも可能性がないか探ってみましょう。

5.経験豊富なM&A仲介会社へ相談する

M&Aの成功確率は、M&A仲介会社の力により大きく変動します。だからこそ、信頼と実績のある仲介会社を選ばなくてはなりません。

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まとめ

自分が経営している飲食店が債務超過の状況であっても、会社を売却できる可能性はあります。自社に歴史やブランド価値があること、現在は赤字だが将来は黒字計上できる見込みであること、買い手事業と強いシナジーがあること、財務諸表には表れない含み益がある資産を保有していることなどが条件として挙げられます。

もちろん、債務超過の会社売却は難易度が高いことは言うまでもありません。そのため、一人で悩みを抱えるよりも、信頼できるM&A仲介会社に相談することをおすすめします。飲食店のM&Aを専門としているM&A Propertiesにぜひご相談ください。