事業承継補助金とは?募集要領・申請書類・手続きを紹介

事業承継補助金は、事業を引き継いだ中小企業や小規模事業者などが行う事業承継後の経営革新などを、中小企業庁が後押しするものです。2017(平成29)年度の創設以降、毎年公募を受け付けています。 2019(令和元)年度補正予算による事業承継補助金の公募期間は2020年3月31日~6月5日となっており、すでに終了しました。2020(令和2)年度の厚生労働省・中小企業庁からの概算要求額の内訳には事業継承補助金も含まれており、2021年も引き続き公募が行われると思われます。 そこで、2021年の公募に向け、事業承継補助金について詳しく紹介します。


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【公募要領】事業承継補助金の要点

今年の6月5日までの募集に関する内容をもとに、事業承継補助金の要点を見てみましょう。

【対象者】事業承継補助金の要点

事業承継補助金は、事業承継をきっかけに経営革新に取り組む中小企業・小規模事業者等(以下、中小企業者等)に対し、その取り組みにかかる経費の一部を補助するものです。

2019年度補正予算による事業承継補助金の対象となる事業承継は、2017年4月1日から補助対象事業期間完了日、または2020年12月31日のいずれか早い日までに、事業承継やM&Aを行ったものです。

また、申請時点で事業承継が完了していない場合、承継者の代表者には「対象企業の役員として3年以上の経験を有する者」「同業種での実務経験などを有する者」などの条件があります。

補助金の交付を事業承継補助金事務局に申請後、交付決定日からその年の12月31日までに、補助対象となる事業を行う必要があります。事業の状況や実績を事務局に報告後、事務局から確定通知が送られてから補助金を請求することができます。また、補助金交付後に、事業化状況を報告しなければなりません。

補助の対象者となるのは、次の7点に該当する中小企業者等です。

(1)「国内に拠点を置き、事業を営んでいること」「地域の雇用創出や経済に貢献していること」など7つの項目を満たすこと
(2)中小企業者等のうち、中小企業や個人事業主については、中小企業基本法第2条に定める資本金や従業員数の条件を満たすこと
(3)中小企業者等のうち、個人事業主については、青色申告を行っており、税務署の受領印が押された確定申告書Bと所得税青色申告決算書の写しを提出すること
(4)中小企業者等のうち、NPO法人については、中小企業や個人事業主の振興を支援する事業を行い、所定の条件を満たすもの
(5)「みなし大企業」ではないもの
(6)中小企業投資育成株式会社法に規定する中小企業投資育成株式会社
(7)投資事業有限責任組合契約に関する法律に規定する投資事業有限責任組合

【対象経費】補助対象の要点

補助金は補助対象事業を行う上で必要となる経費が対象となります。

補助対象事業

まず、どのような事業が対象となるのか見てみましょう。中小企業者等の間で行われた事業承継で、事業を引き継いだ側が行う経営革新などに関する取り組みであることが前提です。

経営革新の具体例として、新商品やサービスの開発・生産・提供、新商品やサービスの新たな生産・提供方法の導入、事業転換による新分野への進出などが挙げられます。

補助の対象となる経費

補助の対象となる経費は、以下の条件をすべて満たす必要があります。
(1)事業の遂行に必要なものであると明確に特定できる経費
(2)承継者が交付決定日以降、補助事業期間内に契約・発注を行って支払った経費(原則、事業を譲った側が取り扱った経費は対象外)
(3)補助事業期間完了後の実績報告で提出する証拠書類等によって、金額や支払いなどが確認できる経費

上記の3つを満たしたうえで、次のような経費が補助の対象になります。

【事業費】
人件費、店舗等借入費、設備費、原材料費、知的財産権等関連経費、専門家などに支払う謝金、対象事業に関わる出張などの旅費、マーケティング調査費、広報費、会場借料費、外注・委託費

【廃棄費】
廃業登記費、既存の事業にかかわる在庫処分費、既存事業の廃止に伴う解体・処分費、設備などの返却の際に課せられる原状回復費、移転・移設費用(事業再編・事業統合支援型のみ)

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事業承継補助金の補助対象になる事業承継

事業承継補助金は、後継者がいないことが原因で、事業の継続が困難になると見込まれる中小事業者等に対する支援です。次の2タイプの事業継承方法に該当するものが対象になります。

I型「後継者承継支援型」

事業を引き継ぐ(事業再生を伴うものを含む)個人または中小企業等であり、以下の要件をすべて満たすことが条件です(承継者が法人の場合、事業譲渡や株式譲渡等による承継は対象外です)。

・事業承継を契機に、経営革新等、または事業転換に取り組むこと
・産業競争力強化法に基づく認定市区町村または認定連携創業支援等事業者により特定創業支援等事業を受ける者など、一定の実績や知識を持っていること
・地域の雇用創出など、地域経済全般を牽引する事業を行うこと

補助額は補助対象経費の1/2以内で、補助上限額は225万円です。なお、事業転換により廃業を伴う経費がある場合は、225万円を上限に上乗せができます。

さらに「ベンチャー型事業承継枠」や「生産性向上枠」の要件を満たす申請の場合、補助率が2/3以内、補助上限額は300万円に上がります。また、上乗せ上限額は300万円となります。(交付決定される補助率は審査で決まり、要件を満たしていても2/3以内の補助率が適用されないことがあります)。

Ⅱ型「事業再編・事業統合支援型」

事業再編・事業統合(M&A)などを行う中小企業などで、以下の要件をすべて満たすことが要件です(後継者不在により、事業再編・事業統合等を行わなければ事業継続が困難になる見込みがある者に限ります)。

・事業再編や事業統合などをきっかけに、経営革新などに取り組んだり事業転換に挑戦したりすること
・産業競争力強化法に基づく認定市区町村または認定連携創業支援等事業者により特定創業支援等事業を受ける者など、一定の実績や知識などを持っていること
・地域の雇用創出など、地域経済全般を牽引する事業を行うこと

補助額は補助対象経費の1/2以内で、補助上限額は450万円です。また、廃業を伴う経費がある場合の上乗せ上限額は450万円となります。

こちらもベンチャー型事業承継枠生産性向上枠の要件を満たす申請の場合、補助率は2/3以内、補助上限額は600万円、上乗せの上限額は600万円にそれぞれ引き上げられます。

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【事例】事業承継補助金の採択率

2020年4月10日~6月5日に受け付けた申請のうち、どれぐらいの割合で採択されたのか見てみましょう。

I型「後継者承継支援型」の採択率

申請総数455件に対し、交付が決定したのは350件。採択率は76.9%と高くなっています(のちに取り下げ2件)。交付を受けた事業者と取組の事例をいくつか紹介しましょう。

・北海道 はますい株式会社…特許製法による海産物・農産物の加工品販売と販路拡大
・福島県 淺野畳工業所…畳製造工程の自動化による生産性の向上
・株式会社三重農福支援センター…障がい者のテレワーク型就労支援事業の取組み
・有限会社正留産業…ドローンを活用した農作業の効率化による農業振興事業

Ⅱ型「事業再編・事業統合支援型」の採択率

申請総数194件に対し、交付が決定したのは118件。採択率は60.8%となっています(のちに取り下げ1件)。Ⅱ型の交付を受けた事業者と取組事例は以下のとおりです。

・茨城県 株式会社喜美人…M&Aによる一括仕入れ、セントラルキッチン事業
・静岡県 cosachi…茶工場を再生した次世代型ハウススタジオでの情報発信事業の開始
・愛媛県 株式会社24ファクトリー…株式会社YSP松山東の事業譲受による二輪事業の展開

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申請書類と手続きの方法

事業承継補助金の申請するために必要な書類や、手続き方法を確認しておきましょう。

必要な申請書類

申請に必要な書類は「共通して必要になる書類」「2/3以内の補助率要件を申請するために必要な書類」「該当する場合に必要な書類」の3つに分かれます。

以下に概要を示しますので、詳細は「令和元年度補正 事業承継補助金 公募要領」を確認してください。

共通して必要になる書類

(1)承継者
・認定経営革新等支援機関による確認書(事務局が指定する様式、認定経営革新等支援機関の印鑑があるもの)

(2)承継者(法人の代表または個人事業主)・被承継者(法人の代表または個人事業主)
・住民票(交付申請日以前3か月以内に発行されたもの)

(3)法人の承継者・被承継者
・履歴事項全部証明書(発行から3か月以内のもの)
・税務署受付印のある直近の確定申告書(別表一、二、四)
・直近の確定申告のもととなる決算書」

(4)個人事業主の承継者・被承継者
・税務署の受付印のある直近の確定申告書B(第一表、二表)と所得税青色申告決算書

(5)NPB法人の承継者・被承継者
・履歴事項全部証明書(発行から3か月以内のもの)
・定款
・直近の事業報告書・活動計算書・貸借対照表

2/3以内の補助率要件を申請するために必要な書類

「生産性向上枠」の場合、以下の書類のいずれかを添付すること
・先端設備等導入計画の認定書の写し
・経営革新計画の認定書の写し

該当する場合に必要な書類

その他、以下の場合は別途必要となる書類があります。

・申請時点で事業承継が完了していない場合
・「中小企業の会計に関する指針」の適用を受けているなど、加点事由に該当する場合
・Ⅱ型で申請する場合
・補足説明資料

交付決定後、提出しなければならない書類

補助金の交付決定後、実際に事業を実施し、実績報告を行ったのちに補助金が交付されます。交付決定後、実績報告をするまでに承継に関する書類を提出しなければなりません。

個人事業主が事業を承継した場合と法人が事業を承継した場合で、交付決定後に提出する書類が異なります。また、個人事業主が事業を継承した場合でも、法人からの事業譲渡か個人事業主からの事業譲渡かなど、ケースによって提出する書類が細かく規定されているので、注意が必要です。

事業承継補助金の手続き

事業承継補助金の交付を受けるには、以下のような手順を踏む必要があります。

準備

(1)事業承継補助金について理解する
ホームページや公募要領などを読み、事業承継補助金の内容について理解する
・申請できる事業承継のタイプを選択する

(2)認定経営革新等支援機関に相談し、確認書を受け取る

(3)gBizIDプライムのアカウントを取得する
アカウントの取得には2~3週間程度かかります

交付申請

申請は原則、電子申請のみです。事業承継補助金のホームページから「申請マイページ」を開設します。必要事項を入力し、申請に必要な書類をPDF形式のファイルにして添付します。

交付決定~補助金交付

審査の結果、交付が決定し、事務局から交付決定通知が届くと、補助を受ける事業を実施します。

事務局が指示する日(遂行状況報告日)までの遂行状況について、遂行状況報告日から30日以内に報告書を事務局に提出しなければなりません。

事業が完了したら、30日以内に実績報告書を事務局に提出します。事務局で確定検査が行われ、交付される補助金の額が確定します。事務局から確定通知が届いたら補助金を請求し、受け取ります。実績報告書の提出から補助金の交付までには、約2~3か月かかります。

補助金交付後

事業が完了後5年間は、事業化状況の報告と、事業に対する収益状況を示す資料を作成する義務があります。また、一定以上の収益が発生した場合は、補助金額を上限に収益の一部を納付します。

そのほかにも、進捗状況確認のために事務局が実地検査に入ることがあります。

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まとめ

事業承継にかかわる取組に対して国が補助金を出すのは、中小企業の後継者不足が深刻な問題になっていることの表れといえます。

ここ数年のスケジュールから予測すると、令和2年度補正予算による事業承継補助金の募集期間は、2021年3月末か4月初旬から5月末までになると考えられます。応募を考えている方は、中小企業庁からの情報に注意しましょう。

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