老舗企業の倒産が増加中
経営者の高齢化や後継者不足、社会情勢の変化などにより、企業の倒産件数は増加傾向にあります。倒産しているのは、設立して数年程度の企業だけではありません。多くの老舗企業が倒産、または倒産の危機にあります。
東京商工リサーチの調査によると、2019年の倒産企業の件数は8,383件でした。また、業歴が判明した企業の平均寿命は23.7年となっています。
倒産企業のうち業歴30年以上の企業の割合は32.4%で、2011年から9年連続30%以上で推移しています。このことから、老舗企業であっても倒産する企業が多いことが分かります。
老舗企業の倒産には、新しい企業の倒産とは異なる要因もあります。過去の成功体験に固執して環境の変化に対応が遅れたこと、経営者の高齢化や後継者不足、設備投資の遅れなど、老舗企業ならではの要因が関係しています。
老舗を買収するメリット
倒産企業を占める老舗企業の割合が高いということは、買い手側から考えると、老舗企業を買収できる機会も多いということです。
実際、老舗企業の買収を行っている企業も増えています。それには老舗企業を買収することに多くのメリットがあるからです。
ここでは老舗企業を買収することの代表的なメリットを紹介します。
信用・ブランド力が手に入る
老舗企業を買収する大きなメリットとして、老舗企業が培ってきた信用力やブランド力を手に入れられることが挙げられます。
信用力とは、顧客や取引先などからの対外的な信用のことです。
たとえば、「この店は長く続いているから、味の良い料理やサービスを提供してくれるだろう」という顧客からの信用や、「長い間支払いの滞りがないから、取引がうまくいくだろう」という取引先からの信用などのことです。
ブランド力とは、そのお店や料理の名前を聞けば、どのようなものか想起できるようなイメージのことを指します。例えば、「創業○年」という看板だけでも魅力的です。
本来、こうした信用力やブランド力を培うには長い年月が必要ですが、老舗企業を買収することで、信用力やブランド力をすぐに手に入れることができるメリットがあります。
老舗の知的資産が手に入る
老舗企業を買収することのもうひとつの代表的なメリットが、老舗企業の「知的資産」を手に入れられるということです。
知的資産とは、ブランドや特許といった知的財産、人材や企業理念、顧客とのネットワークなど、企業の強みを幅広く含めた目に見えない企業の資産ことです。
知的資産を一から作り上げるには、長い時間をかけなければなりません。しかし、すでに知的資産を持っている老舗企業を買収することで、効率的にそのノウハウを手に入れられます。
また、手に入れた知的資産をさらに改良したり、既存の業種と掛け合わせたりすることで、新たな価値を生み出すことができるため、企業のさらなる成長に役立ちます。
老舗企業は買収先のどこを見て選ぶか
上述したメリットを得るために、老舗企業の買収に意欲的な企業が増えています。ひとつの老舗企業に複数の企業が買収したいと申し出ることもあるでしょう。その場合は、老舗企業が買収先を選ぶことになります。
ここでは、老舗企業が買収先のどこを見て、売り先を決めるのかどうかを確認しましょう。
理念、組織風土
老舗企業が大事にしていることのひとつが、理念と組織風土です。
老舗企業であればあるほど、自社の名前や事業、お店の雰囲気などに誇りを持っています。そのため、買収後に老舗企業の名にそぐわない事業を行うことを嫌う傾向にあります。
また、長くから働いている従業員も多く、その従業員への扱いも買収企業を選ぶポイントになります。従業員の扱いが従来と異なる企業は、敬遠されることもあるでしょう。
老舗企業と買収会社の根本的な思想や風土が同じであれば、売り手が抱く不安を軽減できることがあります。まずは、相手企業と企業理念と組織風土がマッチしているかどうかを確認しましょう。
売却目的を理解しているか
老舗企業の経営者にとって、企業の売却はメリットがなければなりません。
売却する目的には、借入金の返済などの資金関係であったり、後継者がいなくて倒産危機にあったりとさまざまです。その売却目的にあった提案がなければ、買収先には選びません。
そのため、売却目的を理解し、売り手が抱える問題を買い手がカバーするような企業に売却したいと考える老舗企業は多いです。
老舗企業の買収を考える際には、まず、相手企業の売却目的を正確に把握しておきましょう。
信頼できるかどうか
老舗企業が売却先を選ぶときに最も重要視するのが、信頼できる企業かどうかということです。
売り手企業の技術、商品、ブランドにある背景を汲み取ってくれるかどうか、従業員の雇用について保証してくれるかどうかなどの協議は、相手を信用できて初めて話がまとまるからです。
そのため、老舗企業とのM&Aの協議では、信頼してもらうことを第一に考える必要があります。
老舗企業の買収例
飲食業界で実際にあった老舗企業の買収の例としては、アサヒビールによるなだ万の買収とフジオフードシステムによるサムズグループの買収などがあります。
なだ万
なだ万は1830年に創業した料理店をルーツにもつ老舗料亭で、海外でも出店して高いブランド力をもっています。アサヒビールは、なだ万を買収することで、海外でのアサヒのブランドを浸透させるととともに、事業強化を図りました。
サムズグループ
サムズグループは沖縄で事業を展開する創業1970年のステーキレストランです。フジオフードシステムには、地方の飲食店を買収することで、国内他地方やインバウンド、海外などへの事業展開を図る目的がありました。
老舗企業買収の注意点
老舗企業の買収には、信用力やブランド力、知的財産を手に入れることができるなどのメリットがあります。しかし、当然ながらそこには注意点もあります。
ここでは、老舗企業買収の代表的な注意点を見ていきましょう。
のれんをどう評価するか
のれんとは、簡単にいうと、企業が持つブランドや技術の価値のことです。
これらの価値は、現金や預金の残高のように、数値として目に見えるものではありません。買収企業側が、どれぐらいの価値があるのかを判断して、老舗企業に提示する必要があります。
のれんの評価が高すぎると、買収後に投資額の回収までに長い期間がかかったり、最悪の場合は回収できないことがあったりします。
また、逆にのれんの評価が低すぎると、そもそも買収できません。そのため、企業価値を判断する場合に、のれんをどう評価するかが非常に重要となります。
簿外債務
老舗企業を買収する際、注意しなければならない事項に簿外債務の存在があります。
簿外債務とは、帳簿などに記載されていない債務のことです。たとえば、引当金やリース債務など、会計処理によっては帳簿に記載しなくても良い債務などが簿外債務に該当します。
原則、簿外債務がある場合は、事前に開示する必要があります。また、買収企業側もデューデリジェンスを行い、簿外債務の有無を確認します。
それでも発見ができない簿外債務があると、買収後に予期せぬ問題が発覚し、予期せぬ損失を被ることがあります。
M&Aの専門家のアドバイスは必須
のれん代の算出や簿外債務の有無、デューデリジェンスの実施など、M&Aには専門家の知見が必要な場面が多数あります。
そのため、M&Aの専門家のアドバイスは必須です。M&Aをご検討中の方は、ぜひ高い専門知識や豊富な経験のあるM&A Propertiesにご相談ください。M&A Propertiesなら、ご依頼者さまにあったご提案を行い、企業の買収を成功に導きます。
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まとめ
経営者の高齢化や後継者不足、社会情勢の変化などにより、多くの老舗企業が倒産または倒産の危機にあります。
老舗企業には、信用力やブランド力、知的財産を手に入れることができるなどのメリットがあり、買収を考える企業も増えています。
老舗企業の買収には、注意点もあります。老舗企業のM&Aでは、メリットと注意点をしっかりと理解することが重要です。