M&Aの計画から実施までどれくらいの期間が必要なのか

近年、事業承継の増加を背景に、M&A市場が拡大しています。またM&Aを活用し、規模拡大や経営多角化を考えている経営者も多く存在します。しかし、M&Aによる企業の買収は、ほとんどの経営者にとっては初めての経験となるでしょう。そのため、M&Aがどのようなスケジュールで進むのかが掴めず、思うように交渉が進まないことがあります。 今回はM&Aの計画から実施のプロセスと、それにかかる期間について解説します。


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一般的なM&Aに必要な期間

M&Aの計画・実施から統合完了までには、一般的に約4カ月から1年程度かかります。事業規模や内容により異なりますが、長いものでは2~3年かかる場合もあります。

時間がかかる理由は、買い手側の条件に合う企業がなかなか見つからない場合や、売り手側の企業と条件面の調整に時間がかかる場合、事業規模が大きく調査に時間がかかる場合など、さまざまです。また、買い手・売り手の双方がM&Aに不慣れな場合は、交渉の段階において時間が長くなってしまいます。

もちろん、時間が短ければいいというものでもありません。十分に買収先企業の調査や分析ができないままM&Aを進めてしまうと、M&Aが完了してから、当初想定していなかった問題が発生することもあるからです。

とはいえ、一般的には、M&Aが長期化リスクは大きいといえます。たとえば、経営環境が検討した時点から大きく変わってしまうケースや、会社内外にM&Aに関する情報が洩れて既存の取引先に影響が及んだり、従業員が動揺して退職したりするケースもあります。

失敗のリスクを減らすためにも、買い手側はM&Aの基本的な流れやスケジュールを十分に把握して、スムーズに手続きを進めることが大切です。

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実施内容ごとの期間について

M&Aの実施内容について、どの段階で・何を・いつまでにするかを説明します

大まかな流れは以下のとおりです。

1カ月目

 

 

 

2カ月目

 

3カ月目

 

4カ月目

 

6カ月目

 

①検討・事前準備

 

②M&Aコンサルタントの選定

 

③秘密保持契約書の締結及び売案件の紹介

 

④売案件の検討及び意向表明書の提出

 

⑤デューデリジェンス(DD)の実施

 

⑥最終契約及びクロージング

①検討・事前準備

M&Aの検討段階ですべきことは、社内でM&Aの目的や基本方針を決めることです。なぜM&Aを行うのか、どういった効果を期待するのかという戦略や、買収の上限金額など条件面を具体的に考えておく必要があります。

買収相手を探す段階で条件が厳しすぎると、条件に合致する相手がなかなか見つかりません。しかし、条件を妥協しすぎれば、望んでいた経済的効果や期待していた相乗効果(シナジー)が得にくくなってしまいます。

また、実施段階でM&Aの方向性や条件面が二転三転すると、求める売り手像を絞れず、相手探しに時間がかかってしまいます。変更の度に相手と交渉をしなければならなくなり、スムーズに交渉が進められません。

検討段階においては、

①目的(現在の業務へどのような効果を期待するのか)
②予算(上限額はどのくらいか、得られる利益や自社の経営状態に対して適正か)
③その他条件(地理的条件や人的条件、企業のカルチャーは問題ないか)

など、予め考え方を固めておくことが、スムーズなM&Aを実施するためのポイントです。

M&Aコンサルタントの選定

M&Aの方針が決まれば次にM&Aコンサルタントを選定します。M&Aの実施段階においては、この仲介業者を通じて売り手企業の選定や、相手先との交渉を行います。

M&Aの買い手や売り手企業の情報は、誰でも目にする広告やインターネット上に出回っているような情報ではありません。M&A専門のコンサルタントを介し、具体的な企業名が特定されないように情報がやりとりされています。

もし、買収する相手が決まっていて直接交渉した方が早い場合でも、M&A仲介会社を利用することをお勧めします。M&Aは、通常の商取引に比べて動く金銭が大きく、専門的な知識や経験が必要なことが多くあります。成功の可否が今後の企業経営において大きな影響をもたらすため、慣れ合いでは済ませられない丹念な調査が必要です。また、遠慮をして思ったように交渉ができないこともあるでしょう。仲介業者を挟むことで、交渉の困りごとや破談、M&A後のトラブルなどのリスク回避につながります。

そのため、M&Aコンサルタントとの選定する際には、専門性・実績・サポート力のある仲介会社を探すことが、成功への近道です。

秘密保持契約書の締結及び売案件の紹介

M&Aコンサルタントを選定すると、秘密保持契約を結びます。秘密保持契約とは、売り手企業に関する情報をM&Aが成約するまでは第三者に口外しない契約です。売り手企業や候補先企業の情報は、その従業員や取引先に大きな影響を与えるため、とくに慎重に扱わなければなりません。

なぜなら、売り手企業が「売却を検討している」と情報が漏れてしまうだけで、取引先に資金繰りの不安を与えたり、取引が解消されたりする可能性があるからです。また、会社が身売りされるという情報が流れると、従業員の間でポストが不足する、給与水準が変わる、経営方針が変わることなどを懸念して、従業員が退職する恐れもあります。情報が漏れることで売り手企業の企業価値が減ってしまうことを避けるため、秘密保持契約を締結したうえで、M&Aの検討を進めるのです。

秘密保持契約が完了したら、M&Aコンサルタントが提案する候補先企業の中から、買い手の条件に合いそうな企業を複数絞り込みます。この段階では、ノンネーム資料という企業名を伏せた企業概要書をもとに検討を行います。

買い手企業が求める条件がそれほど厳しくなく、また、売案件が多く存在する業種であれば、選択肢が多く見つかるため、候補先の選定はテンポよく進むでしょう。反対に買い手企業が求める条件が厳しいものであると、選定に時間がかかることがあります。

秘密保持契約書の締結から次のステップである基本合意締結まで、一般的には1~2週間程度かかるとお考え下さい。

売案件の検討及び意向表明書の検討

さらに詳細な情報を確認して検討をしたい場合、買い手企業は自らの企業名を開示して(ネームクリア)して、売り手企業から売案件の詳細資料である提案資料(インフォーメーションパッケージ)の開示を受けます。

提案資料は、通常数十ページに渡って売り手先企業に関する詳細な情報がまとめられています。これに基づき、大まかな買収計画の策定や株式・事業譲渡など買収方法の検討を行います。

これまでは買い手企業側の社内検討が中心でしたが、ここからは売り手企業との事前交渉が始まります。買い手企業からM&A成立後の労働条件や営業体制など意向を、売り手企業からは売却に関する条件を伝え、トップ同士の顔合わせも行われます。

実はこのトップ同士の面談が、M&Aの方向性や進展スピードを決定づけるといっていいほど大きな意味を持ちます。双方がM&Aについて共通認識を持てれば、あとは実務的な手続きをとることになります。当然、認識にズレがあればそれを埋めていかねばならず、M&A完了までに時間がかかってしまうでしょう。

事前交渉を経て、買収に買い手企業は、M&Aを進めたいという意向表明書(買収方法・買収価額などが書かれた書面)を提出します。それを受けて売り手企業は検討を行い、双方が合意した内容が基本合意書にまとめられます。

基本合意書では、事前交渉で合意した買収価格などの条件面や、M&Aに関する独占交渉権や交渉期間、今後予定しているデューデリジェンスへの協力など、M&Aを進めるうえで必要な項目が盛り込まれます。

なお、この段階での基本合意契約は法的拘束力を持たせないことがあります。のちに実施されるデューデリジェンスで売り手企業の詳細が明らかになり、合意内容が変更されることがあるからです。

デューデリジェンス(DD)の実施

基本合意が締結された後に、売り手企業の詳細調査(デューデリジェンス)が行われます。

デューデリジェンスでは、いわゆる企業の査定を行います。法務(契約・訴訟事案)・財務(資産・負債状況)・ビジネス(生産・販売活動)などについて、これまでの資料に記されていないリスクの有無を確認するものです。

簿外負債や不適切な経理処理、未解決の労務問題が発覚すると、実態の把握に時間がかかることがあります。また、それにともない売買金額の変更を求めて交渉に時間がかかるかもしれません。買い手企業側にとってM&Aの成否に関わるため、この段階で破談になることもありえます。

規模や内容によりますが、1カ月程度は時間が必要です。調査自体は買い手企業側を中心として行いますが、書類の準備やヒアリングの段取りなどで売り手企業の協力も欠かせません。

法務デューデリジェンス

法務デューデリジェンスは、もっとも重要です。会社が取得している許認可や権利関係、商取引契約や労務契約など現在係争中の案件や、将来トラブルにつながる恐れのあるものはないか、弁護士の力を借りながら慎重に調べます。

とくに注意しなければならないのは許認可に関するものです。M&A実施前の段階で届出や当局との相談が必要なものがないか、現在の許認可事項を引き継げるのかなどを確認しておく必要があります。この許認可によりM&A全体のスケジュールが変わることがあるので注意が必要です。

財務デューデリジェンス

財務デューデリジェンスは、会社の決算や経営実績推移、資金繰りなどの財務面と、税務面での調査です。

公表されている財務データが実態を正しく反映しているかどうか、回収できない債権は含まれていないか、簿外負債など決算書に反映されていないものはないか、未納の税金はないか、将来税務署から申告漏れを指摘されるリスクはないか、などを会計士の力を借りながら慎重に調べます。

ビジネスデューデリジェンス

ビジネスデューデリジェンスは、会社の経営実態を把握し、事業の将来性を見極めるための調査です。

会社を取り巻く外部環境や内部要因を分析し、市場の中でどのようなポジションにあるのか、競合しているのはどこの会社か、会社の強みと弱みは何か、M&Aでどのような相乗効果が見込まれるのかを慎重に調べます。

最終契約及びクロージング

デューデリジェンスが終わると条件交渉、最終契約締結、クロージングです。

条件交渉

条件交渉では、基本合意した契約金額にデューデリジェンスによる価値の増減を反映させ、最終的な売買金額を決定します。売り手企業の内部の問題を買い手企業がどう評価するかにより、金額が大きく変わることがあります。

また、最終の売買金額を算定するため、株主や金融機関等との調整も必要な場合があり慎重に検討されます。

デューデリジェンスにより金額の変動が少ない場合でも実際に決済されるまでには2週間程度は必要です。さらに交渉が必要であれば、1カ月程度を要する場合もあります。

最終契約

条件交渉が合意すると、最終契約が締結されます。株式譲渡契約書、事業譲渡契約書、合併契約書などの形式をとります。契約書の内容はさまざまですが、とくに抑えておきたい点は、前提条件、補償条項や解除条項です。

前提条件とは、クロージング(詳細は次項)が行われるための条件です。これがクリアされていなければクロージングが行われません。

補償条項とは、万が一売り手企業側に契約違反があり、買い手企業側に損失を与えた場合に発生する損害賠償に関する条項です。

解除条項は、万が一売り手企業側に契約違反があった場合に、買い手企業側が契約を解除することができるという条項です。

クロージング

クロージングとは、最終契約に基づいて会社の経営権が移転し、対価としての売買代金が支払われることです。最終契約が整い、売買金額が振り込まれれば、M&Aは完了します。

これでひと段落といえますが、ここからは統合作業が始まります。統合作業ではシステムや給与水準の調整、ポストや組織編成などに半年から1年かけて整えるケースも多くあります。

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スムーズなM&Aの実施には専門家によるサポートが必要

これまで説明したとおり、M&Aには専門性のある幅広い知識や交渉力が必要です。そんなとき頼りになるのが、専門家によるサポートです。

M&A専門の仲介会社

M&Aで専門の仲介会社を利用すると、メリットがいくつもあります

・交渉のやりとりがスムーズになる
・M&Aへの疑問点が解消される
・M&Aにかかるさまざまな手間が軽減される

とくに大きなメリットは、仲介会社を利用することで遠慮なく交渉ができるため、精神的にも余裕ができることです。M&Aをコントロールできるようになり、M&Aをスムーズに進めやすくなるでしょう。

M&A仲介会社はさまざまで、交渉やスケジュール・計画立案など請け負えるサービスや得意分野などに違いや特色があります。あなたの目指すM&Aに何が必要なサービスかを見極めて仲介会社を選ぶのが成功への近道です。

M&Aはひとつひとつの契約に個別性が高く、また想定外のことが起こる場合もあり、包括的なサポートを受けられる会社の方が安心です。とくに飲食業界については業界特有の特徴もあり、業界知識が豊富な仲介会社へ依頼するのが成功のカギとなります。

M&A Propertiesのサポート

飲食業界に強いM&A Propertiesなら、売り手への打診、資料リストの作成、留意点の洗い出し、精密なデューデリジェンスをはじめ、M&Aをトータルでサポートいたします。

M&A Propertiesの強みは以下のとおりです。

・飲食企業など1万社以上の顧客から、最適なマッチングを実現
・10年以上に渡る豊富で多種多様なM&A実績
・弁護士・会計士等の専門家チームを交えたサポート
・グループ会社との連携による独自の価値向上サービス

もし飲食業界に精通したM&A仲介会社をお探しなら、まずはM&A Propertiesにご相談ください。

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まとめ

M&Aにかかる期間についてポイントは、以下のとおりです。

・M&Aにかかる期間は4カ月から1年程度
・基本的な流れやスケジュールを十分に把握して手続きを進めることが大切
・買収先の選定およびデューデリジェンスの段階は慎重に行う
・専門の仲介会社が入ることで交渉やスケジューリングがスムーズになる
・M&A propertiesなら、飲食業界でのM&A実績が豊富でトータルのサポートが期待できる

M&Aの流れや期間をしっかり把握して、スムーズなM&Aを実現しましょう。