企業の合併と買収を意味するM&Aは、株式の譲渡や事業の譲渡、会社の分割など、さまざまな手法があります。
M&Aを成功させるためには、自社に合ったM&Aの手法選びと、しっかりとした事前の準備が必要です。
とは言え、M&Aを経験する機会はめったになく、何から手をつけてよいか分からない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、M&Aの方法と相手先の探し方について、くわしく解説していきます。
M&Aの種類
M&Aとは、「Mergers and Acquisitions」を略したことばで、企業の合併と買収を意味します。
M&Aの種類は、大きく分けると「狭義のM&A(通常のM&A)」と「広義のM&A」の2つです。狭義のM&Aとは、資本(株式)や権利の移動により、支配権の移動を伴うM&Aを指します。
具体的には、株式譲渡や事業譲渡、吸収合併や新設合併などの「合併」、吸収分割や新設分割などの「会社分割」があります。
また、広義のM&Aとは、資本の移動は伴うが、支配権の移動は伴わないM&Aを指し、具体的には、「資本提携」、「業務提携」、「FC・ライセンス契約」などが挙げられます。
M&Aを行うための方法
M&Aを行うための方法は、大きく分けて以下の2つがあります。
- 会社全体を売買する場合のM&Aの方法
- 事業のみを売買する場合のM&Aの方法
それぞれ解説していきます。
会社全体を売買する場合のM&Aの方法
会社全体を売買する場合のM&Aの方法としては、以下の3つです。
- 株式譲渡
- 株式交換
- 合併
それぞれ見ていきましょう。
株式譲渡
株式譲渡とは、売り手企業のオーナーが保有している株式を、買い手企業に譲渡することを意味します。
株式を取得するだけで会社を買収できるので、手続きが簡易であるため最も多く用いられているM&Aの手法です。
中小企業が会社をまるごと譲渡する際の90%は、この手法が活用されています。ただし、経営権を取得するには、過半数の株式を買収する必要があります。
買い手と売り手が合意した「株式譲渡契約書」を締結し、株主名簿の書き換えと株式の対価の支払いで譲渡が終了します。
株式交換
株式交換とは、買収の対価として買手企業の発行済の株式と、売り手が保有する株式とを交換するM&Aの手法です。
この場合、完全な親子会社の関係となる前提でのM&Aとなり、買い手側が親会社となり売り手側が子会社の立場となります。また、対価として現金や社債が用いられる場合もあります。
なお、株式交換でのM&Aでは、一般的には親会社となる企業(買い手側)が上場企業であることが多いです。
合併
合併には、既存の会社間で行う「吸収合併」と、新設する会社がその後存続会社となって既存の会社を吸収・統合する「新設合併」の2種類があります。
なお、合併は企業数に規定がないため、理論上は何社でも合併が可能です。
事業のみを売買する場合のM&Aの方法
会社を売買するのではなく、事業のみを売買する際のM&Aの方法としては、以下の2つがあります。
- 事業譲渡
- 会社分割
それぞれ解説していきます。
事業譲渡
事業譲渡は、会社の事業とそれに関わる資産や権利を売買するM&Aの手法です。
有形/無形の財産や債務、事業組織や人材、ブランド、ノウハウ、取引先との関係など、様々なものが対象です。
会社の株式を売買するわけではないため、事業を店舗や工場、支店といった単位に切り分けて売却できます。売り手側企業の負債や借入金を引き継ぐ必要がないので、買手側にはリスクを抑えられるというメリットがあります。
ただし、従業員や取引先、店舗を引き継ぐ場合、それぞれに契約を再締結する必要があるため、株式譲渡と比較して手間と時間がかかるというデメリットもあります。
売り手側企業の経営戦略として不採算事業を売却することで得た資金を、成長事業へ投じることを目的として用いられることが多いです。
会社分割
会社分割は、売り手側企業の事業を切り出して買い手側が承継するM&Aの手法です。
売手側の会社を分割会社と呼び、買手側の会社を承継会社と呼び、会社分割の対価は現金は使用されず、承継会社の株式にて取引されます。
利用されるケースは、成長が見込まれる部門を子会社として独立化したり、採算の合わない部門を切り離したりする際に用いられるケースが多いです。
また、グループ内の重複した事業を集約するなど、大手企業のグループ内編成にも活用されます。
M&Aで最もメジャーな3つの方法
ここでは、以下にあげるM&Aでもっともメジャーな方法の3つを解説します。
- 株式譲渡
- 事業譲渡
- 会社分割+株式譲渡
株式譲渡
株式譲渡とは、買収対象会社が保有する株式を現金で購入することにより、経営権を取得する手法です。
次に挙げる事業譲渡と並び、中小企業が会社をまるごと譲渡する際の大半はこの手法が活用されています。
株式の譲渡による経営権の移行なので、株主や経営陣のみが変わるため会社内のノウハウや権利などの資産や、事業の組織は変化しないことが特徴です。
事業譲渡
事業譲渡とは、会社の株式などの取引ではなく、会社内の事業ごとに譲渡するM&Aの手法です。
株式譲渡に並んで、M&Aの手法として多く活用されています。
製品の在庫や不動産のような有形の資産だけではなく、ソフトウェアや事業のノウハウや技術のような無形の資産技術、人材や道具、取引先との契約に関しても譲渡の対象となります。
昨今では、デジタルマーケティングの多様化に伴い、Webサイトやコンテンツメディア、オンラインのサービスなどの無形資産のみを対象とした譲渡も行われるようになりました。
会社分割+株式譲渡
会社分割と株式譲渡を併用するM&Aも有効的です。
なぜなら、買い手側にとって必要のない事業がある場合、不要な事業を切り落とした上で株式譲渡をすることが可能だからです。
それによって、買い手側は自社にとって必要な事業のみを入手でき、不要なものにコストをかける必要がなくなります。
M&Aを成功させる秘訣
ここからは、以下のM&Aを成功させる秘訣について紹介していきます。
- 自社の分析をする
- 相場を知る
- 相手先の候補をできるだけたくさん用意する
- 交渉の準備を的確にする
自社の分析をする
M&Aにおける戦略策定において、もっとも重要なことの一つが自社の分析です。
なぜなら、わかっているつもりでも客観的に自社を分析することで、これまで気づいていなかった自社の「強み」や「弱み」に気づけるようになるからです。
それにより、M&Aの戦略を立てる上での目的をしっかり見定められるようになります。分析の方法としては、主に以下の3つです。
- 3C分析
- 4P分析
- SWOT分析
これらの分析手法を活用して自社の現状を詳細に研究し、事業や組織、チームレベルの目線から課題を特定します。
その中で、浮き彫りになった弱みや強みを意識しながらM&A戦略を立てていきます。
相場を知る
M&Aを成功させるためには、企業の相場を知ることも重要です。
なぜなら、相場を知らずにM&Aをすると、相場より高く買収してしまう可能性があるからです。現状の相場感を持つことで、買収先を選定する際に良い目安になります。
相手先の候補をできるだけたくさん用意する
自社のM&Aにおける目的と戦略にマッチする企業の候補を、できるだけ多くリストアップします。
まずは、あまり詳細な点は気にしないようにして、気になった企業をリストアップしていきます。
この時点では、企業の数がたくさんあがっても問題ありません。20~30社程度のリストが作成できれば良いでしょう。
その次に、リストにあがった企業の事業や業績を調査し、目に見えて大きな問題がないか、また自社とM&Aすることで期待できる効果が出そうか効果が期待できそうかなどの観点から絞り込んでいきます。
優先順位を付けていき、やがて候補の企業を5~7社まで選定していきます。
交渉の準備を的確にする
上述した価格の相場は、あくまで市場における相場のため実際にピタリと当てはまるとはかぎりません。
したがって、交渉前の準備として3つの「価格水準」を準備しておきましょう。
1つ目は、「希望価格」です。この金額以下となればこの買収は大満足という価格を設定します。この金額を目指して購入するようにしましょう。
2つ目は「撤退価格」です。この金額以上になったら即撤退するという金額です。このラインを超えてしまうようであれば、たとえ成立してもこのM&Aは失敗となってしまいます。
M&Aの相手先を探す方法
ここからは、以下にあげるM&Aの相手先を探す方法をご紹介します。
- 知人や取引のある企業に相談する
- M&Aマッチングサイトで探す
- 仲介会社を利用する
- 金融機関やファンドに紹介してもらう
知人や取引のある企業に相談する
現在の取引先の社長に、後継者問題で跡継ぎがいなかったり、閉業を考えている社長がいないか探していきます。
知人を経由しての紹介だと、お互いに話をしやすいこともあり、また取引先であればもともと事業の内容をよくわかっているので、取引がスムーズになります。
M&Aマッチングサイトで探す
M&Aのマッチングを行う業者は多数あり、業者を一覧で比較できるサイトも多く存在します。
買い手も売り手も、M&Aの潜在的な相手先を探すことが可能で、利用料金も安価であることから多くの企業がこういったサイトを利用しています。
仲介会社を利用する
売り手側と買い手側の間に立って、両者の希望や条件などの交渉を支援してくれる会社を利用する手法です。
M&Aの仲介会社には、大企業もあれば、その業界に特化している企業もあります。
また、小規模案件のみを取り扱う仲介会社などもあり、特徴はさまざまなので、自社に合った会社を選定しましょう。
金融機関やファンドに紹介してもらう
M&Aの仲介業務に力を入れるメガバンクや金融機関が増えています。
メガバンクであれば、全国に支店があるため、あらゆる業界の企業からマッチしたM&A案件を紹介してくれる可能性もあります。
ただ、融資が限定的であったり、銀行側に有利な条件となっていたりすることもあるため、条件をよく確認することが重要です。
※自社に最適なM&Aの方法を知るためには、状況を整理して自社で相手先を探すか、M&Aのプロに任せる方が、失敗の確率を減らせることでしょう。
業種・業界問わずM&Aのご相談は『M&A Properties』へ
M&Aにはさまざまな方法があります。交渉の前に、自社をしっかり分析して市場の相場を確認した上で交渉に望みましょう。
また、M&Aを成功させるためには、専門的な知識と経験にもとづいた適切な判断が求められます。
M&Aをご検討中でしたら、M&Aコンサルタント「M&A Properties」までご相談ください。
まとめ
M&Aには、様々な方法(手法)があります。その企業によって、また、時期によっても最適な方法は違ってきます。また、M&Aでは大きな金額が動くだけでなく、社員や会社の文化まで大きく影響が及びます。
慎重かつ的確な判断が求められるため、それぞれの特徴とメリット・デメリットを正しく理解することが大切です。
一部の役員の判断だけではなく専門家の意見を取り入れながら行うことが成功への近道とも言えます。