中小企業のM&Aに失敗しないために

かつては大企業同士で行うイメージの強かったM&Aですが、今では中小企業が経営戦略の一環としてM&Aを実施する事例も増加しています。 今やビジネスをする上で、どのような立場であってもM&Aは選択肢の1つとなっているのです。 では実際に、M&Aの件数はどのくらい増えているのでしょうか? 今回の記事では、中小企業のM&Aを成功させるために必要なこと、注意すべきことを中心に、近年のM&Aの件数に関して件数の変動や中小企業のM&Aが増加している理由も解説します。


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日本国内のM&Aは増加中

日本国内のM&A件数は増加中です。2019年(1月~12月)のM&A件数は4,088件と、前年の2018年の3,850件から6.2%増加しました。

M&A件数の推移をもっと深く見ていきましょう。

バブル崩壊後の1990年以降に業界再編が活発になった影響により、M&Aの件数は右肩上がりに増加していきました。90年~98年までは年間数百ほどだった件数は、99年に初めて1000件を超え、2006年に2700件を超すまで活発化しました。

その後、2008年のリーマンショックで一度は減少したM&Aですが、2019年にとうとう4,000件の大台を突破しました。M&A件数の増加傾向になっていることが分かるでしょう。

これは公表されている情報のみを集計したものなので、実際には水面下でもっと沢山のM&Aが行われていることになります。

データ参照:株式会社レコフM&Aデータサイト「マールオンライン」
https://www.marr.jp/genre/market/MAkaiko/entry/19844
https://www.marr.jp/genre/graphdemiru

国内の中小企業M&A件数

ここで、国内の中小企業におけるM&A件数に注目してみましょう。M&Aの総件数は前述した通り、増加の一途を辿っています。
一方で2019年にM&Aで動いた買収価格の合計は18兆295億円でした。前年度の2018年の29兆3,185億円と比べて38.5%減少しました。

M&Aの総件数が増えている一方で総金額が減っていることを考えると、小規模なM&Aの件数が増加していると考えられます。

M&Aが増加している理由

M&Aが増加している理由は、以下の3つです。

・後継者不足
・短期間でビジネス拡大を目指す企業の増加
・海外進出を目指すため

近年、多くの中小企業では経営者の高齢化を迎えています。後継者が見つかればいいのですが、事業継承を行う適任者が見つかっていない中小企業が増加しているのが現状です。そのためM&Aを選択し、会社の未来を他に託す動きが見受けられます。
M&Aによる会社売却は、中小企業存続の受け皿としての役割も担っているのです。

また短期間でビジネスを拡大させるために、M&Aを遂行する企業も増加しています。
一からビジネスを立ち上げて、事業を拡大させるには多大な労力がかかります。その結果、M&Aを通じて他社を買収することで、人的資源やビジネスノウハウを一気に獲得してしまおうという流れが生まれています。
技術やノウハウなどを持つベンチャー企業を買収するケースが増えているのです。

他に、海外進出を目指す企業も増えています。ノウハウが無ければ、諸外国とのやりとりはおぼつかないでしょう。日本だけでは、人口の減少のせいでマーケット規模が縮小しているのが現実です。そこで海外の企業を買収し、海外進出を図る企業が増えてきたのです。

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中小企業M&Aを成功させるために必要なこと

中小企業M&Aを成功させるために必要なことを考えていきます。M&Aは必ずしも成功するというわけではありません。しっかりと策を練り、場合によってはプロのM&Aコンサルタントによる意見を取り入れるべきでしょう。
重要なポイントは、戦略の決定と相手企業に対する誠実さです。

明確なM&A戦略を決める

明確なM&A戦略を考える、ということは成功に必ず必要です。まず自社の目的に合った会社を選定します。手当たり次第に企業へ打診をして、M&Aを無理矢理進めていってもうまくはいかないでしょう。希望取引額から相手会社の業種、規模まで事前によく検討し、戦略を定めておきます。

綿密なM&A戦略が作成できれば、相手に求める条件もより細やかに提示できるはずです。戦略の構成が、M&Aの成否の鍵を握ります。

明確な成長戦略を決める

自社の方向性を定めるために、どのような成長戦略を目指しているのか具体的に考えていきます。将来的に、どのビジネスに注力していくのかを決定していく作業です。細かなステップを踏めば、現状、不足している経営資源が明確になるでしょう。
そうして、足りない部分をM&Aで補っていきます。

例えば事業の軸をグローバルに置きたいならば、買収先に海外の企業が視野に入ってきます。

どの手法を選択していくのか。
明確な成長戦略が、次の一手を決めていきます。

売り手から信頼を得る

M&A戦略や成長戦略をきちんと練り上げて、その条件にマッチした企業が見つかったら、そこから重要なことは「売り手から信頼を得る」ことです。
M&Aの最中で行われるトップ同士の面談などを利用して、強固な信頼関係を築いていく必要があります。しっかりと自社の分析を行い、相手に伝えるようにしましょう。その上で、今後の成長戦略を説明するなどして、売り手から事業を任せてもいいと思ってもらえるような心証を得る作業を全力で取り組む必要があります。

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中小企業M&Aで注意したいこと

中小企業M&Aで注意したいことを確認していきます。M&Aは多大な利益をもたらしてくれるチャンスでもありますが、時間や金銭面において多大なコストを割かれます。

きちんと自社の狙いと想いを明確にしておくことが、M&Aの成功に近づく手段となります。

適切な企業を選定する

M&Aによって達成したいことを明確にしてから適切な企業を選定していきます。

もし検討に不安があるなら、プロのM&Aコンサルタントの意見を取り入れるのも1つの手かも知れません。目的に合致しない企業を買収しないように、検討段階からM&Aの目的を何度も確認するようにしましょう。
また条件の詳細を決めておくと、M&Aの軸がしっかりしたものとなります。
適切な企業を選定する意図がぶれないように、最終目標を具体的な売り上げなどの数値に落とし込めると、なお良いでしょう。

適正な価格で買収する

M&Aは高い価格で買収をしてしまうと、後にその投資資金を回収できないケースがあります。あくまで適正な譲渡価格を算定し、それに近い価格で買収できるように交渉を進めていきます。ただし、素人が適正価格の見極めをしていくのは至難の業です。

事業の価値や人的資源、立地や建物などあらゆる要素を加味した買収価格は、プロが時間をかけて精査をした上で試算をされます。
無理に交渉を押し進めるのではなく、M&Aコンサルタントの意見も取り入れるようにしましょう。

徹底したデューデリジェンスを行う

簿外債務や不適切な会計処理などがないように、M&Aを通じた買収前には、徹底したデューデリジェンスを行う必要があります。このデューデリジェンスを疎かにしてしまうと、M&A後に想定していなかった簿外債務などのリスクが発生する可能性が高く、買収後のトラブルになりかねません。

買収後は経営統合を実施する

企業風土の違う会社同士が統合するため、経営統合実施の徹底が必要になります。経営統合を実施することで、想定していた成長を目指せるでしょう。

ただし、企業統合による社内の混乱も想定に入れておかなくてはなりません。M&A後の経営統合は社風や経営方針を一致させるために有効な策です。しかし社内システムの変更や契約書の手続きなど、多くの対応が必要になっていきます。異なる文化が1つに交わると、以前からの仕様と変更になる部分も多く、就業員のモチベーション低下に繋がりかねません。

買収前から事前に、経営統合後のケアも入念に考えておきましょう。

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売り手企業を見極めるにはM&Aアドバイザーを活用しよう

M&Aによる企業の適正価格の算出やデューデリジェンスなどは、プロの専門家に頼ることが最も確実です。M&Aには、知見が必要な場面が多数生じるからです。

M&A Propertiesは4万社に及ぶグループ顧客ネットワークを生かした幅広い情報収集を有し、過去のM&A実績から得た知見をお客様に提供することが可能です。
また比較的小規模のM&Aのご相談も受け付けております。中小企業の買収に成功したいなら、ぜひM&A Propertiesをご利用下さい。

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まとめ

M&Aによる企業買収が、中小企業のビジネス拡大の有効手段のひとつとなっていることは、もはや言うまでもありません。新規事業を始める場合も、ゼロから始めるよりスピーディーな事業展開が可能です。M&Aによって時間をお金で買うことができるとも言えるでしょう。

しかし、「M&Aでビジネス拡大をしたい」と考えても、ハードルが高いと考える経営者も多いのではないでしょうか。

確かに、M&Aにはさまざまな知識や事前の計画が必要です。また、自力では良い売り手との出会いにも限りがあるでしょう。

しかし、何もかも自力でしようと考える必要はありません。経験豊富な専門家のアドバイスや助けを借りれば、買収価格の算出や交渉、デューデリジェンスなどの複雑な工程を確実に行うことができます。

自社のビジネス拡大にM&Aが有効だと判断した場合は、まずは専門家に相談することをおすすめします。