スクイーズアウトとは
スクイーズアウトとは、「少数株主の同意を得ることなく、支配株主が全ての株式を取得する手法」のことを指します。M&Aを行うときに株式を集約させたり、株主をいったん整理したりする場合に活用されます。
ただし、少数株主の同意が不要というメリットがある一方で、少数派の不満が大きい場合には訴訟に発展し、買収そのものが中止に追い込まれる可能性があります。
スクイーズアウトは複数の手法に分かれていますので、活用する際は対象企業の状況などに応じて適切な手法を選択していきましょう。
スクイーズアウトの必要性
スクイーズアウトを実行することで、分散した株式を一カ所に集中させることができます。
では、どのような狙いがある時に制度を利用する必要があるのでしょうか。
持ち株比率を100%にしたい場合
影響力のある株主を排除して株式を一カ所に集めることで、企業運営を円滑に行うことができるようになります。なぜなら、3%以上の議決権を保有する株主は会計帳簿などの閲覧を請求する権利を有し、10%以上になると会社解散請求権を持つ権利があるからです。主流派の経営陣と意見の相違がある場合、経営に影響を与えることも考えられます。
少数派の株主を排除してオーナーが100%保有することで意思決定が高速化し、円滑な運営を行えるようになるでしょう。
税制メリットを享受したい場合
完全子会社化した場合、組織再編税制が適用されます。
連結納税制度を導入すれば、導入後の承継する会社の税務上の繰越欠損金の損益通算ができるようになるなど、税制上のメリットがあります。
種類
スクイーズアウトには、大きく分けて以下の4つの手法が存在します。
特別支配株主の株式等売渡請求制度
株式併合
株式交換
全部取得条項付種類株式
以前では、全部取得条項付種類株式が多く採用されていましたが、現在ではより手続きが簡単な特別支配株主の株式等売渡請求制度を利用するケースが増えています。
特別支配株主の株式等売渡請求制度
特別支配株主の株式等売渡請求制度とは、「対象会社の議決権の90%以上を保有する特別支配株主が、会社の承諾を得て他の株主の株式を強制取得すること」です。
株主総会の決議は不要であり、取締役会設置会社の場合は取締役会の決議設置がされていなければ過半数の取締役の合意で実行できます。
シンプルかつ、スピーディーにできる代表的な手法だといえるでしょう。
株式併合
株式併合とは、複数の株式をひとつにまとめる手法のことです。
少数株主の持ち株を1株未満の端数にしてしまうことで株式の効力を失わせ、権利行使できなくします。
発生した端株は株主の所有する株式を合算して、1株になった時点で会社が買い取る仕組みです。
株式交換
株式交換は、対象企業が他の企業の株主になっている場合のみ使える方法です。
たとえば、A社がB社の株主であった場合、B社の他の株主を排除することでA社がB社の100%株主になることを目指します。
B社株主が持っているB社株式をA社の株と交換することで一人株主を実現させるのが一般的な流れです。
B社の他の株主は、新たにA社の株を得たことでA社の株主になります。
全部取得条項付種類株式
全部取得条項付種類株式とは、株主総会によって議決権の2/3となる特別決議が可決されることで株式の全てを強制的に取得できる株のことです
株式併合と同じく、大株主が全ての株を買い上げることになります。
全部取得条項付種類株式では、株主総会の特別決議で承認を得て定款に定めなくてはならないほか、効力を発揮させる際にも特別決議が必要です。
近年では、その手続きの煩雑さから、主流では無くなりつつあるといえるでしょう。
スクイーズアウトのメリット・デメリット
スクイーズアウトには、ほかのM&A手法にはない独自のメリットがあります。
その一方で、一人に株式を集中させることによるデメリットもあります。
円滑な株式集約を成功させるためにも、メリット・デメリットについて把握しておきましょう。
スクイーズアウトのメリット
他のM&Aにない最大のメリットは、一人株主になることで自由な経営ができることです。一人で100%の株式を保有すれば、株主総会を省略することも可能になります。
対立する少数株主がいると、株主総会の招集通知を彼らに送付しなければならず、株主総会を開くのは大変な手間と労力が必要となります。とはいえ株主総会を開かないのは法律違反にあたるため、必ず相手方の主張を聞いて議論を交わさなくてはなりません。
しかし、株主が一人だけになれば、これらを合法的に省略できるようになります。。少数株主を排除してしまえば、経営が悪化した時にも株主代表訴訟で責任を追及されることは無くなります。訴訟リスクを気にせずに自由な経営ができることがメリットです。
そのほか、「M&Aで取得した子会社を完全子会社とすることで支配権を掌握できる」、「
無用な争いを回避して飲食店経営の本業に集中できる」といった点も魅力的なメリットだといえるでしょう。
スクイーズアウトのデメリット
M&Aの流れは非常に複雑なので、誰もが簡単に実行できるわけではありません。株主総会の招集のための取締役会開催から資料の準備、株主総会の実施から効力の発生まで、一貫してサポートしてくれる専門家の助けが必要となるでしょう。
スクイーズアウトの手続きの流れ
株式を集約させて一人株主を実現させる場合、以下のような流れで進めていくことになります。
株式併合による資料の備置
株主総会における株式併合決議
株主への連絡通知
株式併合完了後に資料の備置
手続きが複雑になるだけでなく、「株主総会の○日前までに通知が必要」など、細かい規定が会社法という法律で定められています。
法律に沿って手続きを進めるためにも、手続きの流れと締め切りを確認していきましょう。
株式併合による資料の備置
株式を併合するための株主総会を開くためには、事前に取締役会を開く必要があります。取締役会で株式の併合が決定された後は、株主の併合の割合の相当性、最終年度の貸借対照表などの資料を会社本店に据え置かなければなりません。
株主総会の2週間前、もしくは株主への通知・告知の日のいずれか早い日から数えて、6カ月間据え置くのが決まりです。
株主総会における株式併合決議
議決権をもつ過半数の株主が株主総会に出席した上で、議決権の2/3以上の賛成があれば株式の併合が可決されます。株主総会の議決内容は議事録が必要で、法律に定められた事項を残しておく必要があります。
株主に個別の連絡通知
定款に定めがある場合を除いて、株式併合の20日前までに全ての株主に対して概要と併合の割合を記載した通知書を発送する必要があります。
株式併合完了後に資料の備置
株主総会で決議された効力発生日になれば、自動的に株式併合の効力が発生します。
その後は効力発生日から6カ月間、いつでも株主が閲覧できるように法律で定められた資料の備置をするのが法律上の決まりです。
スクイーズアウトがM&Aにどう活かされるのか
スクイーズアウトは大企業で用いられるだけの手法ではありません。飲食店のM&Aにおいても有効に活用することができます。
ここからは、スクイーズアウトが有効に作用する具体的な場面について紹介します。
実際に飲食店経営においてスクイーズアウトが有効な場面
一人株主になることは、飲食店においては一人オーナーになるということです。反対派の意見に流されることなく、自由に経営権を行使したい場合などでは最適な選択だといえるでしょう。
また、「複数に分かれてしまった会社を合併で一つにしたい」といった場合にも効力を発揮します。
スクイーズアウトの留意点
スクイーズアウトは、4つの手法をよく比較して、自社の状況にあったものを使用することが大前提です。
特別支配株主に該当すれば株式等売渡請求の権利を行使できる反面、そうでない場合は株主総会の特別決議を開かなければいけません。
特別決議を議決できるだけの株式をあらかじめ保有しておく必要があります。
また、スケジュールを事前に立てておくことも重要です。資料の備置や株主の個別発送には法律で定められた期限があるため、それを過ぎたら法律違反になってしまいます。そうならないためにも、事前に綿密なスケジュールを立てておきましょう。
こういった手続きで失敗しないためにも、M&Aに強い専門家にサポートを依頼するのがおすすめです。
M&A Propertiesでは、4万社におよぶグループ顧客ネットワークを活かした幅広い情報収集とコンタクト能力を持つ、飲食業界専門のM&A仲介会社です。
飲食店のM&Aを知り尽くした専門コンサルタントが、初期検討から株主総会での決議、決議内容の効力発動までM&Aによる買収を一括でサポートしますので、スクイーズアウトについてもお気軽にご相談ください。
まとめ
今回は、株主が分散している際に1株に集約する手法として有効なスクイーズアウトについて紹介しました。制約のない自由な経営を行う手段として、今後も利用する会社が増えていくでしょう。
有効である一方で、「手続きが煩雑になる」「法律の順守が欠かせない」といった問題点があることから、手続き内容に精通した仲介企業の協力が必要不可欠です。
M&Aを検討する際には、飲食店専門のM&A仲介会社・M&A Propertiesへお問い合わせください。