買収と子会社化に違いはある?合併との違いも解説

日本でもメジャーとなりつつあるM&Aですが、相手企業を買収するのではなく、子会社化するケースも増えてきています。しかし、もし子会社化を選択するのであれば、その仕組みやデメリットを把握しておくとともに、恩恵を受けられる方法をじゅうぶんに理解しておかなければなりません。 この記事では、子会社化の意味のほか、買収との違いやメリットとデメリットをわかりやすく解説していきます。


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買収と子会社化に違いはない

簡単にまとめると、買収とは他企業の発行する株式を買い取り、経営権を得ること。子会社化とは他企業の発行する株式の過半数を取得し、経営を支配すること。つまり、買収は会社の経営権を取得すること、子会社化は買収の結果の一つです。

このように、買収も子会社化も同じ企業行動によるもので、一見すると非常によく似ているように感じられますが、買収と子会社化には大きな違いはなく、広義では同義になっています。

それでは、それぞれの詳細を紹介していきます。

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買収の仕組み

買収とは、ほかの企業の発行済株式を買い取ることです。さらに明確に表現すると、株式を「買い取る」ことのみを買収と呼び、増資や株式分割による取得は買収とは言いません。

買収で株式を買い取る目的は、その企業の経営権を得ることです。

原則として株式は1株ごとに議決権を有するため、持ち株の多い株主ほど発言力を増します。そのため、ある企業が他企業の株式を買い取るとき、買い取る割合に応じて、他企業の経営に影響を及ぼす範囲が変わるのです。

例えば、過半数を買い取ると、取締役の選任と解任など普通会議での議題を決定する権利を得られます。さらに3分の2を超えると、定款の変更や組織再編の承認といった特別会議での議題を決定する権利を有することが可能です。

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子会社化の仕組み

子会社化とは、ほかの企業の発行済株式の過半数を取得することです。買収とは違い、取得方法に定めはなく、買取であっても株式分割であってもかまいません。

親会社が子会社の株式の半数以上を取得するため、別法人でありながら、子会社は親会社から経営支配を受ける状態になります。

なお、株式の取得が過半数に達していない場合でも、実質的な支配関係があるときには子会社化が成立していると判断されます。

また、親会社が子会社の株式すべてを保有することを「完全子会社化」といいます。完全子会社化すると、子会社が株式を自由に売買する権利を失うため、単体では上場できません。

ちなみに、このほかの子会社化の方法としては、親企業の事業の一部を独立させて新たな法人を設立する方法も一般的です。

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買収と合併の違い

M&Aとして表現されることの多い買収や合併は、成長戦略や経営再建などを目的に、複数のビジネスをひとつに統合する手段です。目的は同じとはいえ、両者には明確な違いがあります。

買収

まず買収とは、ある企業が他企業の株式の半数以上を買い取り、その会社の経営権を得ることです。一般に、過半数の株式を取得して普通会議での議決権を有することを経営権と呼び、経営権の獲得によって相手企業や事業を取得します。

買収を行うにはいくつかの方法があります。

MBO(Management Buyout) 経営陣買取。経営陣が自社株を取得して自社や事業部の経営権を得る方法。従業員による経営権の取得はEBO(Employee Buyout)と呼ばれる
TOB(Takeover Bid) 公開買い付け。M&Aの中でもっともメジャーな方法で、買収したい企業の株式の買取を公開して、大口・小口にかかわらず、幅広い株主から効率的に株式を取得するもの
LBO(Leveraged Buyout) 買収を目的とした資金調達法。銀行から融資を受ける際の担保として、買収する会社やその資産を差し出す
株式交換 ある企業の株式をすべて取得した買収企業が、その対価として、被買収企業の株主に自社の株式を交付する方法。これにより、被買収企業は100%子会社化される。株式のほか、金銭や債権を交付することもある

合併

一方、合併は複数の企業をひとつの企業にするものです。買収とは異なり、株式を取得された企業は消滅するのが特徴です。事業や従業員、設備はもちろん、負債に至るまで、権利のすべてが存続会社に承継されます。存続する企業は、金銭や株式、社債などを消滅する側の株主に交付します。

合併の手法には、吸収合併と新設合併があります。

吸収合併 いわゆる包括承継。合併により消滅する企業の権利や義務、負債などを、吸収する企業がすべて引き継ぐ
新設合併 合併により消滅する企業の権利や義務、負債などを、新たに設立する会社にすべて引き継がせる。新設する企業は事業開始や株式の売買などに対する許認可や免許を取得しなければならない

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子会社化のメリット・デメリット

自社の特定事業を独立させるためではなく、企業を買収する手法として行われる子会社化では、複数の企業が関わるため、さまざまな事情を考慮して臨まなければなりません。そのためにも、想定されうるメリットとデメリットを理解しておくことが大切です。

子会社化のメリット

子会社化のメリットは、以下のとおりです。

節税効果を得られる

グループ企業をひとつの法人としてとらえる連結納税制度、100%資本関係のある企業間で利用できるグループ法人税制が導入されたことにより、子会社化は節税対策として注目を集めています。

業績拡大が期待される

親会社と子会社、双方のブランド力や社会信頼性が作用し合い、業績の拡大が期待されます。

企業間で利益を移動できる

親会社・子会社の間で取引を行うことで、利益の移動が可能です。グループ企業内で損失の調整ができるため、節税につながります。ただし、通常の取引とはかけ離れた低い価格での発注などは、税務署に租税回避とみなされるおそれがあります。

事業承継がスムーズになる

経営者に親族や子など複数の後継者がいる場合、子会社の設立によって経営権や財産を分散し、相続争いを避けることができます。

子会社化のデメリット

子会社化のデメリットは、以下のとおりです。

子会社の不祥事にも連帯責任を負うことになる

子会社が不祥事を起こした場合、親会社として監督責任や連帯責任を問われます。異なる企業文化をもつ子会社の監督や管理に力を入れると、親会社の負担が増すおそれもあります。

事務的な作業や手続きが増える

親会社と子会社は別企業ですが、グループ企業として節税の恩恵を受けるためには、親会社による経費の振り分けなどが必要です。その結果、事務作業や各種手続きが増えてしまいます。

子会社の損失を負担することもある

子会社の業績が悪化すると、親会社として損失を負担することがあります。また、子会社化に際しては損失も引き継ぐことになるので、節税効果も考慮しながら、子会社化の有効性について入念に検討しましょう。

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M&Aで他社を買収するメリット

日本は今まさに、少子高齢化による人口減少の渦中にいます。国内市場の先行きが不透明になるなか、事業の安定的な成長を目指すならM&Aによる他社の買収が最適でしょう。

今後は深刻な後継者不足も問題化することが予想されますが、買収によって関係企業が増えると、こうした問題も解決しやすくなるでしょう。

ただし、企業間の利害関係などによっては経営が悪化するなど、買収が失敗する可能性も考慮しなければなりません。また、節税対策が不十分なことで、かえって課税額を増やしてしまうケースもあるようです。

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まとめ

買収と子会社化は、他社の株式を取得するという点で、ほとんど同じ意味を持ちます。大きな違いは、100%子会社化によって得られる節税メリットといえるかもしれません。

ただし、買収にせよ子会社化にせよ、業績拡大や安定した経営といったメリットがある一方で、デメリットがあることにも目を向けなくてはなりません。

M&Aの成功には、専門的な知識と経験にもとづいた的確な判断が求められます。M&Aを検討中なら、M&Aコンサルタント「M&A Properties」まで、ぜひお問い合わせください。