カーブアウト型M&Aとは!メリットや失敗事例を紹介!

「グループ会社内のある事業の売り上げが低迷しており、グループにとって負担になっている」というときの対処方法として、その事業部門を切り離し、社外の別組織として独立させる「カーブアウト」という方法があります。 カーブアウトされた事業はM&A取引の対象となることが多く、「カーブアウト型M&A」とよばれています。今回は、カーブアウト型M&Aのメリットやデメリット、失敗事例についてご紹介します。


この記事は約8分で読み終わります。

カーブアウト型M&Aの特徴

カーブアウトは、複数事業を抱える企業が選択と集中を行う過程で、自社のノンコア事業を切り離す方法です。

この方法によって切り離された事業部門を売買することを「カーブアウト型M&A」と言い、以下のような特徴があります。

特徴1.カーブアウト型M&Aにおける事業譲渡

M&Aにはいくつかの形態がありますが、代表的なものが「株式譲渡」「事業譲渡」です。株式譲渡は株式を売買することで、企業の所有権と経営権を移転させることを意味します。一方、事業譲渡は株式の売買は行わず、「従業員」「商品や店舗、工場」「取引先」など事業に必要なものを個別で譲渡することになります。

カーブアウト型M&Aは企業の一部分を売却するものなので、単純に株式譲渡の形態をとることはできません。事業を切り離す方法として、事業譲渡の形態をとることがあります。

ただし、事業譲渡を行う際に注意しなければならないのは、従業員や取引先との契約をそのまま引き継げないことです。それぞれと改めて契約を結びなおすことになりますが、スムーズに締結できるとは限りません。

従業員との契約については、一旦解雇をした上で新会社に転籍をお願いすることになり、その過程で辞めてしまう従業員が出る可能性がありますし、同意を得られない場合は元会社に残さざるを得ないこともあります。また、取引先との契約では、経営者が代わることで不安を抱かせることになり、契約を結んでもらえないこともあります。

特徴2.カーブアウト型M&Aにおける会社分割

事業譲渡という形態では、従業員や取引先との契約を引き継げず、トラブルになるケースがあります。こうしたトラブルを防ぐために「会社分割」というM&Aの形態があります。

会社分割の形態をとる場合、売り手企業は譲渡対象となる事業部門を構成する「資産・負債」「取引先との契約関係」「従業員の雇用関係」について、承継させる部分と承継させない部分を明確に分けておきます。

その後、承継させる部分につき、会社分割という法的な手続きを行うことで、事業譲渡の様な個別に切り替え手続きをせずに、一括で事業を移管させることができます。

会社分割には、新規分割吸収分割があります。新規分割では、新しい会社を設立して権利義務を移転させる必要があるため、従業員や取引先など、事業を行うにあたって必要なリソース一つひとつについて、法令に従って承継の可否をチェックし、引き継ぐ受け皿となる会社を作ります。

吸収分割では、既存の他会社に権利義務を移転させます。承継会社と分割会社の間で吸収分割契約を結び、吸収分割によって移転する資産・権利などについて記載し、対価として分割会社に承継会社の株式を交付します。

また、事業許認可の承認が必要な場合は、新会社もしくは承継会社に事業許認可の承認ができるか事前に確認しておく必要があります。事業許認可が承継できない場合は、受け皿となる会社で事業許認可を取得しておく必要があります。その後、分割した会社の株式を買い手企業に株式譲渡します。

会社分割を用いることで、事業譲渡で懸念される承継のトラブルを防ぐことができます。しかし、会社分割は法的手続きを行う必要があるため、必要な法的要件を満たすためには1ヶ月半程度の時間がかかってしまいます。

一方で、事業譲渡は、法的な手続きはないため、個別の契約切り替えがスムーズに行えれば、速やかに手続きが完了するものの、個別の契約切り替えが難航する場合は、会社分割よりも時間がかかるというデメリットがあります。

そのため、どちらの方法を用いて行うかは、会社の置かれている状況を踏まえ、事前にしっかりと検討をする必要があります。

目次へ

カーブアウト型M&Aのメリット・デメリット

ハードルが高いように感じられるカーブアウト型M&Aですが、実行するメリットはもちろんあります。また、当然のことながらデメリットも存在します。

ここではカーブアウト型M&Aのメリットとデメリットを見ていきましょう。

【メリット】経営サポートを受ける独立起業・売り手企業ともに成長が出来る

カーブアウト型M&Aによって売り手企業から切り離された事業部門は、もとは売り手企業の中で“足を引っ張っていた”存在です。それでも買い手が現れたということは、価値を高められる可能性を秘めていると判断されたからです。

買い手企業のもとで新たな資本や人材を獲得し、外部からもファンドなどの経営資源が得られます。スピード感のある意思決定ができるようになるため、切り離された事業部門の成長が期待できます。

また、売り手企業にとっては、不採算事業を切り離して自社の重要な事業に資源を集中させることができるメリットがあります。

【デメリット】スタンドアローンイシューの発生

カーブアウトM&Aのデメリットは「留意点が多い」ということです。

切り離された部門が売り手企業本体の中で占めていたポジションによりますが、「コア人材が売り手企業の別部門の業務を兼任していた」「売り手企業本体とサービスなどを共有していた」など、売り手企業本体と切り離されたゆえに起きる弱点は多いものです。

こうした状況は「スタンドアローンイシュー」とよばれ、親の元から独立した子どもが親の存在のありがたみを再認識させられる状況に例えられます。

スタンドアローンイシューは「売り手企業本体から提供されていた資源の喪失」「カーブアウトによるコストの発生」の2つに分かれます。

売り手企業本体から受けていた提供されていた資源の喪失

切り分けられた事業を担っていた人材や運営に必要な資産などを、売り手企業本体から提供されているケースは多いです。

そうしたリソースは売り手企業本体にとっても必要であるため、カーブアウトする際に承継対象になりません。具体的には、例えば、経理部や総務部などの本社機能があげられます。

また、社内の全事業部門で一括購買を行っている場合などは、切り分けられた事業もそのメリットを享受していたため。切り分けられたことによりそのメリットを受けられなくなる上、価格交渉のノウハウがないとコストがかかってしまう可能性もあります。

ひとつの企業の中にはさまざまな事業部門がありますが、それぞれが完全な縦割りになっているわけではありません。複数の部門でさまざまなリソースが共有されており、そのことがカーブアウトを難しくしています。

カーブアウトにともなうコストの発生

会社分割をする場合、新しいオフィスへの移転や社内のさまざまなシステム構築、社名変更の告知など、カーブアウトにともなう新たなコストが発生します。

目次へ

【失敗事例】カーブアウト型M&Aが難しいと言われる理由

上記では、カーブアウトされた事業・会社が、事業を行っていくうえで必要なリソースを十分に備えていない状況に陥る可能性について述べました。このことは、買い手側にとってカーブアウト型M&Aを行う際の不安材料になります。

買い手は自社のコア事業の強化や多角化など、目的を持ってカーブアウト型M&Aを行いますが、思うような効果を得られないこともあります。ここでは、失敗事例をとおして、カーブアウト型M&Aが難しいといわれる理由を見てみましょう。

シナジー効果が生まれなかった事例

買い手企業はM&Aによって、自社で展開している事業の拡大を図ろうとします。売り手企業からカーブアウトされた事業部門・会社も、新たな企業の下でその事業の価値を高めることができます。両者が一緒になることでシナジー効果が得られるというわけです。

しかし、さまざまな要因からシナジー効果が得られず、結果的にM&Aが失敗とみなされるケースもあります。米マイクロソフトが、携帯電話機大手のノキアから、携帯事業を買収したケースもそうした事例です。

マイクロソフトでは、独自で開発したスマホ用の基本ソフトである「ウィンドウズフォン」の普及に力を入れていました。そこで、ノキアから携帯事業を買収し、スマホ分野に注力し、携帯事業とOS事業によるシナジー効果を得ようとしました。

また、先行するグーグルやアップルに追いつく目的があったといわれています。買収価額は約54億ユーロ、日本円で7,000億円を超える金額での買収となりました。

しかし、スマートフォンの販売事業が不振に陥り、業績はずっと低迷を続けました。2015年には、75億ドル(日本円で約7600億円)の減損損失を計上。

大幅なリストラも行い、携帯電話事業は、完全な失敗に終わっています。マイクロソフトの携帯事業の失敗は、韓国や台湾、中国などの携帯電話新興国のメーカーが競争力を付けてきたことが要因のひとつと言われています。

シナジー効果を保ちながら、社会情勢の変化にいかに対応していくのかも、カーブアウト型M&Aを成功させるために必要なことのひとつかも知れません。

目次へ

まとめ

カーブアウト型M&Aは、売り手企業にとっては会社分割の際に手間がかかり、買い手企業にとってはリスク回避などに慎重を期す必要があります。カーブアウト型M&Aを成功させるには、実績が豊富なM&A会社のサポートを得ることが不可欠です。

M&A Propertiesは飲食業界を中心に、さまざまなタイプのM&Aに対応できるノウハウを備えています。カーブアウト型M&Aに関心を持たれた方は、ぜひご相談ください。

M&A Propertiesについての詳細はこちらをご覧ください