【個人事業主&株式会社】廃業手続きと必要書類がすぐわかる!

高齢化社会が続いている日本において、事業の後継者不在が大きな問題となっています。東京商工リサーチの 「2020年 後継者不在率調査」によるとデータベース18万5,247社のうち、後継者不在率は57.5%、およそ10万社強の会社で後継者が不在という結果が公表されています。 後継者が現れないと事業をたたむ、つまり廃業手続きをしなければなりません。それはどのような手続きなのでしょうか。 この記事では、事業の廃業について、個人事業主と法人それぞれの方法とあわせて、本当は廃業したいわけではないときはどうすれば良いのかについても紹介します。


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廃業とは?廃業の定義

廃業とは、個人事業主または法人が自主的に事業をやめることを指します。日本政策金融公庫の「中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2019年調査)」によると、事業の今後の見通しに廃業予定と回答した企業が半数以上の52.6%あり、未定企業の22.0%と合わせると約3/4の企業で事業承継による企業の存続の見通しが立っていないという結果が出ています。

また、東京商工リサーチの「全国社長の年齢調査(2019年12月31日時点)」によると、社長の平均年齢は62.16歳で、前年より0.43歳上がりました。この数値は2014年以降毎年上がり続けており、社長をずっと同じ人が続けている、すなわち新規での開業がなかなか増えないとともに、各事業で承継がうまくいっていないことを表しているといえます。

また、70代以上の高齢社長の割合は30.37%となりました。年齢的にも後継者を見つけなければ廃業を選ばざるを得ない状況である事業者が多くなってきていることを表しています。

これらのデータを見るに、多くの中小企業で、後継者への事業承継や廃業問題が大きな課題となっているのではないでしょうか。

【会社】廃業と、倒産・破産・解散・精算との違い

廃業と似た意味をもつ単語として、倒産・破産・解散・精算がありますが、それぞれの意味合いは異なります。

倒産

法律的に明確な定義はありませんが、倒産とは、債務が弁済できなくなり、経済活動をそのまま続けることが不可能な状態を指します。

廃業との明確な違いは、「廃業」は事業が上手くいっていても自らの意志により事業をたたむ場合がありますが、「倒産」は事業をやめざるを得ない状態であるという点です。

破産

破産とは、債務整理手段のひとつであり、債務超過などで継続的な経営が困難となった際に原則的にすべての資産、債務が精算されることを指します。

法人の場合は、その法人格が手続きにより消滅します。

解散

解散とは、会社の事業を停止する手続きを指します。

個人事業主の場合は、特定の届け出を提出すれば手続きが完了しますが、法人の場合は、資産負債の清算業務を行う清算会社に移行するため、それぞれ意味合いが異なります。

清算

清算とは、解散した法人の資産負債を整理し、残っている財産を換金して弁済にあてるなどして清算する会社解散後の手続きを指します。

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個人事業主の廃業手続き

個人事業主と法人では、廃業の手続き方法が異なります。まずは、個人事業主の廃業手続きから紹介します。

個人事業主の廃業手続きの流れ

個人事業主の廃業手続きの流れは、以下のとおりです。

1、営業終了日を決める
2、資産と負債を整理する
3、税務署などへ必要書類を提出する

2は、売掛金の回収や事業で使用していた資産の現金化などをします。

3の届け出はしなくても、罰則規定はありません。ただし、税務署側からは事業を継続しているものと思われているので、毎年確定申告書類が送られる、事業などの確認がくることも考えられます。廃業の際はなるべく早めに提出するようにしましょう。

提出書類

個人事業主が廃業するためには、所轄の税務署へ以下の書類を提出します。

〇個人事業の開業・廃業等届出書:廃業した日から1ヶ月以内〇所得税の青色申告の取りやめ届出書(青色申告者のみ) :廃業した年の翌年3月15日まで

〇給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書(従業員を雇用していた場合のみ) :廃業した日から1ヶ月以内

〇消費税の事業廃止届出書(消費税の課税事業者のみ) :事業を廃止してから遅滞なく

〇所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書(予定納税額が所得の減少により基準額に満たないと見込まれる場合のみ) :第1期分、第2期分の減額申請はその年の7月1日~7月15日まで、第2期分の減額申請についてはその年の11月1日~11月15日まで

また、従業員を雇っていれば、所轄の年金事務所、労働基準監督署または労働局、ハローワークに以下の書類を提出します。

〇健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届(社会保険に加入している場合のみ) :事業を廃止した日から5日以内、所轄の年金事務所に提出〇確定保険料申告書(様式第6号) :事業を廃止した日から50日以内、所轄の労働基準監督署または労働局に提出

〇労働保険料還付請求書(様式第8号) :事業を廃止した日から50日以内、所轄の労働基準監督署または労働局に提出

〇雇用保険適用事業所廃止届:事業を廃止した日から10日以内、所轄のハローワークに提出

〇雇用保険被資格者資格喪失届:離職日の翌日から起算して10日以内、所轄のハローワークに提出

〇雇用保険被資格者離職証明書:離職日の翌日から起算して10日以内、所轄のハローワークに提出

そのほか、管轄の都道府県税事務所にも事業開始(廃止)等申告書(名称は各所により異なる)を提出する必要があります。

また、飲食店の廃業の場合には、以下の届け出も必要です。

〇廃業届:廃業日から10日以内、所轄の保健所に提出〇防火管理者選任(解任)届出書:期限はとくになし、所轄の消防署に提出

〇廃止届出書(深夜酒類提供飲食店営業開始届出書を提出している場合に限る) :廃業日から10日以内、所轄の警察署に提出

なお、以下の手続きが必要な場合はしておきましょう。納税額を抑えられるからです。

〇予定納税の減額申請:予定納税額の通知書をもらっている人、その年の申告納税見積額が、通知書の予定納税基準額に満たないとわかったとき、「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」を所轄の税務署に提出、6月30日までに判明すれば7月15日、10月31日までに判明したら11月15日までに提出する〇繰戻還付:青色申告をしている人、廃業した年の所得が赤字で前年分の所得が黒字だった場合か、廃業した年の前年の所得が赤字で、前々年の所得は黒字だった場合、確定申告で手続きをする

〇固定資産税軽減の申請:事業用に使っていた場所を自宅用に転用する場合は、土地の固定資産税が安くなる場合あり、市区町村へ確認して手続きする

廃業に必要な費用

個人事業主の場合、これまで解説した基本的な諸手続きの費用は発生しませんが、以下のような費用はかかると考えられます。

・設備や在庫などの処分費用
・賃貸していた物件の原状回復費用
・従業員への退職金 など

なお、中小企業庁の「2019年版の中小企業白書(p123)」によると、廃業に1円~100万円未満の費用がかかったとの回答が63.8%あり、費用の発生を見込んでおくほうが良いと考えます。

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株式会社の廃業手続き

次に、法人の廃業手続きを解説します。

株式会社の廃業の流れ

株式会社の廃業までの流れは、大きく分けて以下のとおりです。

1、営業終了日の決定
2、株主総会での解散の決議、清算人の選任
3、解散・清算人選任登記
4、解散等の届け出
5、官報での解散広告、債権者への通知
6、清算人による清算、決算書類の作成
7、清算決了登記、確定申告

2では、株主総会で議決権の2/3以上の賛成が必要です。清算人は一般的には社長や取締役が就任します。

3では、清算人は営業終了日から2週間以内に法務局で解散登記と清算人選任登記を行わなければなりません。

5では、官報に2ヶ月以上は解散広告を出す義務があります。

7では、提出する確定申告書類がふたつ存在し、事業開始日から廃業日までの解散確定申告については、廃業日から2ヶ月以内かつ解散確定申告にかかる決算の株主総会での承認から2週間以内、清算を行った事業年度の清算確定申告書については、残余財産確定日から1ヶ月以内に提出をします。

提出書類

個人事業主の廃業に比べ、提出書類がたくさんあります。
それぞれの手続きごとに必要な書類は以下のとおりです。

〇解散・清算人選任登記
・登記申請書
・株主総会議事録
・清算人の就任承諾書
・株主リスト
・定款
・印鑑届書
・清算人個人の印鑑証明書(発行3ヶ月以内)〇清算決了登記
・登記申請書
・臨時株主総会議事録
・決算報告書
・株主リスト

また、個人事業主の廃業と同様、税務署や都道府県税事務所等にも以下の書類を提出する必要があります。

〇税務署
・異動届出書:廃業してから遅滞なく・消費税の事業廃止届出書:廃業してから遅滞なく

・給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書・・・廃業した日から1ヶ月以内

〇県税事務所、市役所
・異動届出書:廃業してから遅滞なく

〇年金事務所
・健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届:廃業から5日以内

〇労働基準監督署または労働局
・確定保険料申告書(様式第6号)
事業を廃止した日から50日以内、所轄の労働基準監督署または労働局に提出

・労働保険料還付請求書(様式第8号)
事業を廃止した日から50日以内、所轄の労働基準監督署または労働局に提出

・雇用保険適用事業所廃止届
事業を廃止した日から10日以内、所轄のハローワークに提出

・雇用保険被資格者資格喪失届
離職日の翌日から起算して10日以内、所轄のハローワークに提出

・雇用保険被資格者離職証明書
離職日の翌日から起算して10日以内、所轄のハローワークに提出

このように大量の書類を作成、準備する必要があるため、専門家に相談するとスムーズに進められるでしょう。

そのほかにも、飲食店であれば保健所など、許認可を得ている所轄の行政機関への廃業届の提出や、業界団体や商工会議所などの団体に加入している場合も、退会手続きが必要です

株式会社の廃業手続きにかかる費用

株式会社の廃業の場合は、個人事業主と異なり登記や官報による公告などを行う必要があります。

それらの費用を加えた廃業にかかる金額の目安は以下の通りです。

〇登記費用
・解散登記   3万円
・清算人登記  9,000円
・決算決了登記 2,000円〇登記簿謄本(2通) 1,200円

〇印鑑証明書 450円

〇官報公告 4万円

〇専門家への手続き依頼費用
司法書士や税理士 10万円以上

個人事業主の場合と比べると、8万円強費用が増えることになります。さらに、債権債務の規模や設備によって値段も変わるため、事前にしっかりとした見積もりをしておくと良いでしょう。

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本当は廃業したくない?後継者難で廃業する方へ

「後継者がいないから、しかたなく廃業を考えているけれど、本当は誰かに事業承継してもらいたい…」そう考える人もいるのではないでしょうか。

ならば、M&Aによる事業承継を検討しませんか。M&Aによる事業承継なら、後継者がいなくても事業を継続できるだけでなく、取引先との関係性も継続し従業員の雇用も守ることができます。

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まとめ

今まで経営した会社を廃業することは、人生において大きな決断です。「だからこそ、すぐには決断できない」という、経営者も多くいるでしょう。しかし、問題を先送りにしてしまったばかりに、M&Aなどの本来選ぶことのできた選択肢が狭まってしまうことがあります。

廃業には経営者に利益をもたらしません。しかし、M&Aによる事業承継であれば売却益を手に入れられることもあります。

少しでも「技術やノウハウを誰かに残したい」「できれば会社を残したい」という気持ちがあるなら、M&Aによる事業承継を検討してはいかがでしょうか。

その決断によって、取引先や従業員だけでなく、まだ見ぬ新しいお客さまなどの多くの人に、良い利益をもたらすことができるかもしれません。