人件費削減には準備が必要!万全な状態で対策を講じる

会社の業績を上げるには、大きく分けて次の3つの方法があります。 1 売上高を伸ばす 2 売上総利益率を上げる 3 固定費を削減する 最も即効性が高いのは固定費を削減する方法です。固定費の中でも、占める割合の大きい人件費の削減は、業績向上に大きな効果が見込まれます。しかし、誤った方法で削減してしまうと、業績にかえって悪影響となる可能性もあり、実施には万全の対策が不可欠です。 この記事では、人件費の削減方法とその正しい手順について紹介していきます。


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人件費削減を行うための準備

そもそも人件費とは、会社が雇用する社員・パート・アルバイトなどに対する給与の総額のことです。月給の他にも、通勤手当や社会保険なども含めて考えるのが一般的です。

一言に人件費を削減すると言っても、やみくもに削減を行うのは危険です。必要な人員までカットしてしまったり、雇用している従業員から反発されたりといった事態も想定されます。

そのため、適切に人件費を削減するためには、どこに削減の要素があるのかを分析する必要があります。

集計を行う

まず行うべきが、人件費の現状を把握するための集計作業です。人員配置、役職者と従業員の賃金など、人件費に無駄がないかを把握します。

そのために、人件費を集計し費用の「見える化」を行いましょう。

週単位、月単位で行うことはもちろん、年単位での集計も重要です。なぜなら、業種によって閑散期や繁忙期があったり、ボーナスや退職金といった一過性の人件費もあったりするためです。こうした集計を行い、売上高に占める割合が適切であるか確認します。

このように、会社の売上高に対する人件費を「見える化」すれば、自社にとって最適な人件費の削減プランを考えやすくなります。

適性判定

集計によって現状を把握したあとは、人件費の「適正判定」を実施しましょう。

売上高に占める人件費の割合を同業他社と比較したり、政府発表の統計調査から情報を得たりすることで、おおまかな比較が可能です。業種によって売上高に占める人件費の割合は異なりますが、例えば中小企業庁の調査によると、飲食業の場合は30%前後が多いようです(※1)。

他にも「労働分配率」を使用して適正判定を行う方法もあります。

労働分配率とは、会社が生み出した付加価値(売上総利益)から、どれだけのコストが従業員に還元されているかを示すもので、「労働分配率(%)=(人件費÷付加価値)×100」で計算されます。

近年の日本企業の労働分配率は、おおむね50~80%前後で推移しています(※2)。労働分配率が低いほど、会社の利益の多くを人件費ではなく営業利益として残していることになります。

大手企業ほど低く、中小企業ほど高くなるなど、同じ業種だからと単純に比較できるものではありませんが、類似企業の労働分配率を参考にすれば、現在の人件費が適正かどうかを判断しやすいでしょう。

※1出典:中小企業庁「中小企業の経営指標(概要)~中小企業経営調査結果~」

※2出典:中小企業庁「新たな価値を生み出す中小企業」

人件費削減に向けた施策を練る

集計や適性判定によって、人件費が会社の売上高を圧迫する要因であると判断したら、削減に向けての対策をシミュレーションしてみましょう。

人件費の削減といっても、従業員を解雇するだけが方法ではありません。労働生産性を向上するために機械化やIT導入を検討する、時短勤務を推進する、業務内容を見直す、適正な人員配置を行うなど、さまざまな方法があります。

これらの具体的な方法については、後ほど詳しく紹介いたします。

人件費のリスク検証

実際に人件費を削減するための対策を講じると、多かれ少なかれ、業務に何らかの影響を及ぼします。

例えば、マンパワーが足りなくなることで、顧客対応が不十分になったり、生産性や品質、サービスの質の低下が起こったり、あるいは思わぬ事故やトラブルが増えるリスクもあるでしょう。最悪の場合、人件費削減が会社の経営を傾けさせてしまう怖れもあります。

そのため、人件費を削減するときは、実行することによるリスクの検証が重要です。

人件費削減の明確な根拠を構成したうえで、問題が発生した場合はすみやかに元の状態に戻すといった柔軟な対応が求められます。リスクがあまりに高ければ、現状維持を選択することも賢明な判断です。

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人件費削減の方法

自社の人件費は売上高に対して適正ではない、人件費削減はリスクより効果の方が大きいと判断されれば、人件費削減に向けて具体的な対策を始めます。

この項目では、人件費を削減するための具体的な方法について、いくつか解説いたします。

IT機器・システムの導入

近年、あらゆる業界でIT化が進んでいます。IT機器やシステムの導入により業務を自動化による、人件費削減もいいでしょう。

例えば、飲食店におけるIT化としては、集客や予約管理などがあります。

これまで集客で主流だったチラシ配布や看板などのペーパー方式から、予約サイトやSNSなどのデジタル方式へと変更するだけで、人件費削減とともに、効率的な宣伝活動も可能です。

また、予約管理をIT化すれば、台帳を使ったアナログ型の管理よりも手間を大幅に減らせます。さらに記入ミスなどによるトラブルが少なくなる、顧客データが蓄積されるなど、今後の店舗運営にも役立てることができます。

他にも、最新のAIを活用したシフト管理もおすすめです。AIは経験を重ねて応用できる人工知能ですから、繁忙期や閑散期の違い、従業員ごとの働き方、急な欠勤など、店舗ごとの特徴に合わせたシフト管理を可能となります。

必要なときに必要な人員を配することができるので、解雇することなく、効率の良い人件費削減が叶います。

クラウドを活用

クラウドシステムの活用によって人件費をおさえることも、有力な方法のひとつです。クラウドシステムは、店内にWi-Fi環境が整っていれば、機材を用意するだけですぐに始められます。

例えば、有名回転すしチェーンで各テーブルに設置された専用タブレットは、クラウドシステムの代表例といえるでしょう。そのタブレットを通じてお客さま自身が注文を送信すれば、キッチンやフロアの従業員は注文を取りに行く手間を省いてメニューを提供できるのです。

また、クラウドカメラを店内に配置すれば、店舗の混雑状況や人手の要・不要をひと目で把握できるため、人員を増やすべき曜日や時間を把握するキッカケにもなるでしょう。

こうしたクラウドシステムは業務効率化に適しており、不要な人件費を減らす明確な根拠となります。

残業対策を講じる

人件費が膨らむ原因が、長時間労働による残業代というケースは珍しくありません。もし人件費における残業代の割合が大きい場合は、残業を減らせるのか、減らすにはどんな方法があるのかを見極める必要性があります。

もっとも悪い例が、仕事量が適正なのに「なんとなく」残業すること会社の文化となってしまっているケースです。現在、国をあげて働き方改革が進められています。経営陣などトップが中心となって、長時間労働をなくす意識を従業員と共有することが大切です。

現在の業務量をこなすためには、残業はやむを得ないというケースもあるでしょう。この場合、人件費削減よりもまず、業務効率アップの対策を取るのが先決です。先述のIT化やクラウドシステムなども活用し、業務効率を落とすことなく、残業時間を減らすことを目標にしましょう。

一人ひとりの残業時間が1時間でも減れば、会社全体としての人件費は大きく削減できるはずです。

機械の設備投資

IT化やクラウドシステムにも共通する対策ですが、機械に任せられる業務は機械に任せて、人手を減らすのも良いでしょう。

例えば、牛丼屋やラーメン店などでは、入口に券売機を設置して「注文を聞く」というプロセスをなくしています。また最近では、コンビニをはじめ、あらゆる店舗でセルフレジの普及も進んでおり、会計業務の簡略化も可能です。

ただし、機械を設置するには初期費用や維持費用がかかるため、導入する際には費用対効果を検討することをおすすめします。

アウトソーシング

比較的簡単な業務のアウトソーシングも、人件費削減の有効な方法といえます。

経験を積んだ有能な社員は、支払う給与は高くなりますが、会社の大切な財産です。こうした社員にはより責任ある業務についてもらいたいのに、現在の業務を引き継ぐ人材がおらず、配置転換できない場合もあるでしょう。

そのような場合、アウトソーシングで人材を外注すれば、該当の社員より安い賃金で人材を確保でき、人件費を削減できます。

また、社員教育には外部の講師を招くなどアウトソーシングしたほうが、講師役となる先輩社員の日常業務に影響を与えることなく、効率的かつ低コストでの人材育成につながります。

M&A

M&Aとは企業買収のことですが、その目的はさまざまです。なかには、屋号をそのまま存続し、それぞれの会社の技術や文化をイノベーションするためのM&Aというものも存在します。

M&Aそのものに人件費を削減する直接的な効果はありません。

しかし、M&Aで複数の会社がひとつの法人としてスタートを切るとき、例えば総務部や人事部など、どうしても重複する部門が発生します。

このタイミングで余剰人員を見直し、これまで人員不足だった部門に回す、新たな部門を立ち上げて配するなどの対応を取れば、人件費の削減に効果的でしょう。

さらにM&Aを実施すれば、互いの強みを活かすことでシナジー効果が生まれ、これまで以上に会社を発展させられる可能性もあります。

とはいえ、M&Aがどのような結果に終わるかは、交渉次第となります。交渉条件によっては従業員を解雇せざるを得なくなる、あるいは買手企業をみつけることもできないなど、経営者が厳しい状況に立たされることも考えられます。

信頼できる買手企業とのマッチング、そしてスムーズな交渉の実現には、仲介会社のサポートが必要です。

「M&A Properties」は飲食業界専門のM&A仲介会社です。全国対応で豊富なネットワークからお互いにとって最も良い企業を選定し、多数のM&Aを成約させてきました。これまでM&Aを選択肢として考えていなかったという方も、ぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。

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行ってはいけない人件費削減の方法

これまで紹介してきた人件費の削減方法は、従業員の雇用を守るポジティブなものばかりでした。しかし、方法によっては、人件費の削減が従業員にとって非常に悪影響なものになるケースもあります。

この項目では、安易に行うべきではない人件費削減方法についても確認しておきましょう。

リストラ

「リストラ」とはリストラクチャリング(再構築)の略称であり、主に人員削減や整理解雇の意味合いで用いられます。つまりは、会社による従業員の解雇を意味します。

大手企業の場合、リストラの実施にあたって、前もって希望退職を募ることが多く、トラブルにはなりにくいようです。しかし、中小企業の場合、しつこい退職勧奨や突然の解雇通知などで法的に問題となることもあります。

また、経営努力が見られない状態で安易にリストラを実施してしまうと、残った従業員のモチベーションが大幅に低下し、経営が悪化する恐れも考えられます。リストラで人員を減らすと、経営難を不安視されるなど、外部の評判を下げてしまうリスクもあります.

リストラは、人件費削減の最終手段だと捉えておきましょう。

従業員の給料カット

従業員を守りつつ、人件費を削減するのに、いちばん手っ取り早いのが、給料カットでしょう。

例えば、一律5%の給料カットを実施したとすれば、月額30万円の給料が28万5,000円になります。この程度の収入源なら受け入れようと考える従業員もいるでしょう。一方で、ひとり当たりの額は少なくとも、会社としては多大な人件費カット効果を得られます。

しかし、これまで会社に貢献してきた従業員ほど、その働きを認めないような給料カットに対して、モチベーション低下を起こしやすいものです。業務効率が低下するならまだしも、優秀な従業員ほど退職して、より条件の良い他社へ移ってしまうリスクもあるでしょう。

もし給料カットを行うのであれば、労使間で十分に情報を共有し、お互いが納得のうえで行わなければなりません。経営者の独断で安易に行わないように気を付けて下さい。

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まとめ

人件費の削減は、まず会社の財務状況を把握することが不可欠です。そのうえで、現在の人件費が適正なものでないと判断したときには、従業員の雇用を守りつつ、業務効率向上などによる削減策を考えましょう。

場合によってはM&Aも、人件費削減に効果を発揮します。ただし、M&Aには専門的な知識や経験が必要ですから、検討する際には仲介会社に相談するのがおすすめです。

経営者としてできることは全て行った上で、やむを得ない場合にはリストラや給料カットという選択肢を考えることになります。ただし、リストラや給与カットを行うと、従業員との信頼関係が損なわれ、最終的には行き詰る状況になることも珍しくありません。

会社の健全な経営のために正しい人件費の削減方法を理解し、冷静に対応しましょう。