多角化戦略の成功例&失敗例|メリットや手段を紹介

会社を経営する上で、本業である事業がマーケットの縮小や競合の増加により、将来的な見通しが立たずに悩んでいる経営者の方は数多くいらっしゃると思います。だからといって多角化戦略によって会社を成長させていきたいと考えていても、勢いだけでは机上の空論である可能性が高く、本業まで失敗する可能性も否定できません。 そこで今回は多角化戦略の成功例・失敗例をまとめた後、多角化戦略のメリット・デメリットを解説しています。多角化戦略に成功、失敗した企業の実例からから学べる要素は多くあるはずです。


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多角化戦略の成功例・失敗例

多角化戦略の成功例と失敗例を紹介します。

ただし、その企業にとって、多角化戦略が成功なのかどうかは、数十年たたないと分からないこともあります。あくまで、現時点の判断で、各会社がなぜ成功及び失敗をしたのか、その理由を見ていきましょう。

今回紹介する成功例はソニー・ヤマハ・ゼンショー、失敗例はライザップ・カネボウになります。

多角化戦略の成功事例①:ソニー

ソニーはトランジスタラジオの製造販売から始まり、テレビやオーディオなどの電機メーカーで成長するかたわら、音楽・映画、ゲームコンテンツ、金融などの分野にも進出した企業です。

特に1990年代には、コングロマリット経営を強く推進していました。コングロマリット経営とは、M&Aや資本提携などで関連のない多種の企業を統合して行う多角的経営のことです。転機は2000年代における業績悪化のときです。2000年代は、ちょうどグローバルな価格競争の激化や家電のデジタル化などが進んでいった時代で、ソニーではその対応に遅れをとっていました。その最中リーマンショックが直撃し、家電の需要自体が減少、業績がさらに悪化していきます。そこで、企業体質の改善が求められていったのです。

対策として、ソニー生命やソニー損保、ソニー銀行などの金融ビジネスに依存する体質を改めていき、技術力や個人消費者向けのサービス展開など、自社の強みを見つめ直していきました。
そうしてソニーは、映画・音楽・ゲームなど娯楽に通じたテクノロジーの創出に注力するようになります。その結果、業績はV字回復を果たしたのです。このように、自社の強みを理解し、強みをいかせる事業の選択と集中が多角化戦略の成功の要因といえるでしょう。

多角化戦略の成功事例②:ヤマハ

ヤマハはオルガンやピアノの製造からスタートし、徐々に製造する楽器の種類を増やしていました。さらに電子楽器も手掛けるようになり、会社として成長するきっかけに。

電子楽器の製造を軸に事業を展開しようとしたヤマハは、電子楽器の部品である半導体の開発に着手していきます。1980年代以降には、パソコン機器や自動車用内装部品、またスポーツ用品などの事業領域にも着手していきます。

しかし、2000年頃にヤマハは赤字へと転落します。そこでヤマハは決断を下し、2010年代に事業の整理を行い、楽器への原点回帰をすると決めたのです。

現在、ヤマハは楽器・音響機器・その他(部品・装置など)の3つの領域で事業を展開しています。その結果、経営を建て直すことができました。ヤマハでは、もの作りで存在感のある企業である「ヤマハらしさ」を定義し、業績を回復してきました。多角化戦略による経営改善には、原点回帰も必要といえるでしょう。

多角化戦略の成功事例③:ゼンショー

牛丼チェーン店すき家の経営で有名なゼンショーですが、2000年代に入るとココスやビッグボーイなど、他の飲食店を買収し、経営を拡大していきました。
しかし、リーマンショックによる、顧客の外食頻度の低下や原材料の高騰などにより、影響は悪化していきました。

そこでゼンショーでは、国内や国外の外食産業だけでなく、スーパーマーケットなどの小売業、高齢者住宅や有料老人ホームなどの介護事業と経営を多角化し、業績を回復しています。
ゼンショーでは、さまざまなシーンで安全でおいしい“食”の提供することをビジョンに掲げ、独自の仕組みである「MMD(マス・マーチャンダイジング・システム)」を展開、食の流通を効率化することで、業績の拡大を図っています。
このように、多角化経営を成功させるためには、明確なビジョンが必要です。

多角化戦略の失敗事例①:ライザップ

ライザップの中核事業は、フィットネス事業です。健康食品の通販事業からパーソナルトレーニングジムの展開で一気に知名度を上げました。

その特徴的な宣伝から、ダイエットといえばライザップと呼ばれるようにまでなった同グループは、事業多角化のためにM&Aを行っていきました。

ただ、買収した企業の立て直しが上手くいかずに傘下の企業が経営に暗雲が立ちこめると、一気にグループ全体にも悪影響が波及し、まとまりが欠けていきました。

結果、ライザップの業績は赤字へと転落したのです。現在、M&Aでの多角化路線をストップさせているライザップですが、事業の多角化を機にグループの業績は落ちてしまいました。

ライザップは、多角化経営における業績悪化の要因について、ガバナンス体制の構築の遅れや管理の複雑化、コスト面のムダなどを挙げています。多角化経営を行う場合には、M&A後の体制について、しっかりとシミュレーションしておくことが重要でしょう。

多角化戦略の失敗事例②:カネボウ

カネボウは、もとは紡績業でした。その後、化粧品や日用品、食品、不動産へと事業領域を広げていく、いわゆる「ペンタゴン経営」を行っていきます。

実際に1970~80年代は、この方法は画期的であり、カネボウは成功を収めます。ただバブル崩壊とともに、その成功にひずみが生じていきます。

カネボウは主力事業以外を売却して何とか経営を建て直そうとしますが、カネボウ本体に粉飾決算が発覚し、会社は低迷気味になります。

その後、カネボウは花王らに売却され、「クラシエ」に社名・ブランド名を変更しました。カネボウでは、化粧品事業という黒字部門があったにもかかわらず、繊維事業では赤字が続き、黒字部門の資金を赤字部門につぎこんで、経営が悪化していきました。

経営を多角化する場合には、赤字部門に再建する見込みがあるのか、切り捨てが必要なのかの判断も重要となってくるでしょう。

多角化戦略の失敗事例③:AOKIホールディングス

紳士服で有名なAOKIホールディングスも、多角化戦略を行っている企業のひとつです。
AOKIホールディングスは、紳士服だけでなく、カラオケ、ネットカフェ、ウェディングなどの事業への多角化を進めています。AOKIホールディングスの多角化の背景には、非スーツの会社が増えたことなどによる、紳士服市場の縮小があります。

しかし、カラオケ、ネットカフェ、ウェディングなどの業種は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が大きなものとなっています。新型コロナウイルスの影響がおさまった場合には、業績が上昇する可能性もありますが、コロナ禍の現時点では、経営は苦しくなっています。

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多角化戦略のメリット・デメリット

具体的な多角化戦略の例を確認したところで、次に多角化戦略のメリットとデメリットを確認していきます。

その多角化戦略のメリットは「リスク分散」・「シナジー効果の獲得」・「範囲の経済性の獲得」の3点となります。対してデメリットは「巨額の投資」と「経営の非効率化」になります。

では、項目ごとに確認していきましょう。

多角化戦略のメリット①:リスク分散

多角化戦略を行った場合、ひとつの事業の収益が悪化したとしても、別の事業がフォローできる点、いわゆるリスク分散がメリットとなります。

本業をひとつだけ行うよりも、リスクヘッジが取れるため経営の安定化にもつながっていきます。

多角化戦略のメリット②:シナジー効果の獲得

多角化戦略により、企業がすでに持っているブランド力や技術、ノウハウなどを別の事業に活用できます。単一事業よりも収益力が上がる可能性があり、上手くいけば複数事業の相乗効果も見込めます。

多角化戦略のメリット③:範囲の経済性の獲得

企業が活用できていないリソースを、多角化戦略から使用する機会に恵まれるケースもあります。戦略を多角化することで企業全体の活性化ができるのも魅力です。

多角化戦略のデメリット①:経営リソース分散による成長機会ロス

多角化経営をすると、複数の事業を同時に育てていくことになるため、各事業において一定の投資が必要になるはずです。もし将来性がある事業があったとしても、他事業においても投資が必要な場合、資金を分散投資する必要が出てきます。そのため、もし単一事業でやっていた時に果たせた成長の機会を得られなくなる可能性があります。

多角化戦略のデメリット②:未知の領域への新規投資

一定の投資をして、新規事業を始めたからといって、十分なリターンは期待できるか、分かりません。新規事業の領域において知識、経験、ネットワークがないため、収益性などの見立てが甘くなり、こんなはずじゃなかったのにと、新規事業を開始してから思うこともあるでしょう。多角化戦略には慎重かつ市場分析を実施して乗り出しましょう。

多角化戦略のデメリット③:管理工数増大による非効率化

複数事業を一括で管理していくことになるため、経営管理の工数が増大していき、非効率的な経営になる可能性があります。全ての事業が一定規模以上あり、収益性が高ければ問題ないですが、規模が小さかったり、収益が出ていなかったりすると、全体利益に対する管理費用が多大なものとなってしまいます。

事前にどの事業に注力するのか熟考した上で、多角化戦略を実行していく必要があります。

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事業多角化の手段

ここからは、事業多角化の手段を見ていきます。大きくいえば、「水平型」・「垂直型」・「集中型」・「コングロマリット型」と4つのパターンに分けられます。

事業多角化の手段①:水平型

水平型は企業が持っている技術を活かし、既存市場と似た市場に対して新たな製品を投入するパターンです。

例えば自家用車を生産するメーカーがバイクを生産するなどの事業展開が水平型に該当します。飲食業でいうと、焼肉店が、同様にお肉を使うカレーショップを経営するなどのケースが水平型です。シナジー効果が、期待できるパターンです。

事業多角化の手段②:垂直型

次に垂直型は企業の既存技術をそのまま活用はできないけれど、主戦場である市場と似たような市場に対して、新たな製品を投入していくパターンになります。

テレビを生産しているメーカーが、テレビ台を生産するといった展開が垂直型の例となります。技術そのものの転用は難しいものの、既存の販路や取引関係などを新製品に活かしていく型となります。飲食業でいうと、飲食チェーン店が自ら生産、流通、販売を手掛ける場合などが、垂直型になります。

事業多角化の手段③:集中型

集中型は企業の既存技術と関連性が高い新商品を、既存の市場とは異なる市場に投入するパターンになります。デジタルカメラのレンズを医療機器に転用する手法が代表的な例です。企業が既に持っている技術や能力を異分野で活用していくことで、次の事業を見いだしていきます。

飲食業でいうと、ファミリーレストランが食品加工の技術をいかして、食品加工業の経営を行う場合などが、集中型になります。

事業多角化の手段④:コングロマリット型

コングロマリット型は企業の既存技術・市場とは無関係の領域に進出するパターンです。ソニーが金融業務へ進出したケースが良い例です。飲食店でいうと、インテリアデザインの会社がカフェ経営に進出する事例などがあてはまります。

全く未知数な挑戦となるため、ハイリスク・ハイリターンとなるのは必須です。

事業多角化には、4つの手段がありますが、一から事業を始めると手間や労力がかかります。M&Aを活用すると、効率的に多角化を進めることができます。

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飲食店経営の多角化を目指すならM&A Propertiesへ

「現在の事業だけでは心配だから、多角化戦略を取ってみよう」と迂闊な理由で、多角化戦略を無理にチャレンジしてはいけません。まずは本業の改善を行い、その後、過去の実例を分析してみて下さい。

そこから多角化戦略のメリット・デメリットを見つめてみましょう。会社に必要な材料が多角化戦略のメリットに多く含まれているなら、検討を開始してもいいかもしれません。

また4つの事業多角化の手段と照らし合わせながら、事業の可能性を検討してみましょう。もし独力だけで戦略の判断が不安ならば、プロの専門家に相談してみるという手もあります。

M&A Propertiesを利用して頂くと、飲食企業など4万社以上の顧客とのネットワークから、自社に合ったよりふさわしい売り手企業を紹介できます。

ご相談からでも可能ですので、ぜひ多角化戦略に興味を抱かれた方は弊社へお気軽にご相談下さい。

まとめ

今回は事業の多角化戦略に関して、具体的な成功・失敗例を紹介していきました。事業の多角化は成功することもありますが、失敗する可能性もあります。失敗をしないためには、多角化戦略のメリット・デメリットを把握し、適切な手段を利用することで事業の多角化の成功に繋げることができるでしょう。

しかし、初めて事業の多角化を行うのには不明点が多く、何が適切な手段なのか判断できないこともあるのではないでしょうか。そのような際はぜひM&A Propertiesにご相談ください。企業様に適切な多角化戦略をプロの目線で提案致します。事業多角化への万全なサポートを致しますので是非お任せください。