個人M&Aが失敗する理由・原因
個人でM&Aを実行した際に失敗する原因は、経営者自身や社内の問題からや、外部との関係性まで、さまざまあります。ここでは6つの理由と原因をピックアップしました。ひとつずつチェックしていきましょう。
1.経営者視点になれなかった
個人がM&Aで失敗する原因のひとつが、経営者視点に立てないことです。
M&Aを行う個人には、それまで会社に雇用されていたサラリーマン方もいます。これまでの社会経験を通じて卓越したスキルを身につけた有能な人物だとしても、未経験でいきなり会社経営者となるのは難しいかもしれません。
なぜならば、会社のトップである経営者と、会社に雇われるサラリーマンには、経営に関わる数字や会社組織に対する考え方に大きな違いがあります。
経営者は何よりもまず会社の存続や発展を考えます。そのために、全体や将来を見通して、社内の調整や経営方針の決定、社外への対応などを、バランスよく行うのです。
一方のサラリーマン経験者は、任された仕事に対して最大限の能力を発揮することを求められます。そのため、会社全体ではなく、所属部署や店舗の業績、自分の評価に意識が向きます。
目の前の限られた仕事に尽力してきた会社員が、経営者として会社全体を見通すには、かなり大きな発想の転換が求められるからです。
つまり、いかにサラリーマン思考を捨てて経営者思考にシフトできるかが、個人M&Aを成功させるためには重要です。
2.買収先のことをよく理解していなかった
経営者になりたい一心で会社や店を買収したまでは良かったものの、買収先のことをよく理解せず現場を変えていき失敗したというのは、実はよくある例です。
事前に買収先の経営理念や社風などを理解しないまま新経営者として会社を変えようとしても、従業員がついていかない場合もあるでしょう。顧客についても同様です。
結果的に思い描いていた理想の経営と現実のズレが生じる恐れがあります。会社や店舗を経営する権利があるからといって経営者として認められるかどうかは、別の話です。
3.従業員から信頼されない
もし自分が従業員だったら「今日から経営者が変わります」と言われて、すぐに新経営者を信頼できるでしょうか。「どんな人だろう?信じて良いのだろうか?信頼関係を構築するには時間がかかるだろう」と考えるのではないでしょうか。
また、従業員をおざなりにして、自分の思うように会社を変える新経営者は、あまり好かれないでしょう。例えば、職場の経営方針の変更やシステム改善を始めると、以前の環境と変更点の違いで現場は混乱することが予想されます。
特に買収先が飲食店の場合、アルバイトやパートの割合が高い傾向があります。普段から従業員へのケアを心がけ、しっかりとコミュニケーションを図りながら、M&A後の環境を整えていく必要があります。
4.簿外債務に気付けない
「簿外債務」とは、貸借対照表に計上されていない債務を示します。
M&Aにおいてよく登場する「簿外債務」は以下の4つです。
・退職給付引当金
・リース債務
・債務保証損失引当金
・未払賞与
もちろん、簿外債務を伝えなかった譲渡企業の責任は重いのですが、もし見抜けなかった場合、予想外の債務の穴埋めをするはめになり、負担が増加してしまいます。
個人で会社や店の買収を考えているときは、簿外債務や帳簿の調整には気をつけておきましょう。買収前に入念に調べなくてはいけません。
M&Aの買い手が簿外債務を見抜き、M&Aを成功に導く3つの方法
5.取引先の引継ぎに失敗した
会社や店を経営するにあたって、取引先との関係は大切です。例えば、飲食店の経営なら、材料やドリンク類のなど仕入先や取引先の引き継ぎがとても重要でしょう。仕入先が料理の味に直結し、コスト面にもつながっていくからです。
取引先への経営者変更の連絡や挨拶が遅れたなどが原因で、取引先の引継ぎに失敗した結果、割安だった仕入値が高くなって買収時に想定していた利益が出ないことが考えられます。その結果、M&Aの効果が半減されたり、場合によっては効果なしになったりという事態に陥ってしまう可能性があります。
6.前社長を残したまま引き継ぎ、その影響が残った
経営の経験がないために、M&A後も、前社長を残ってもらいながら営業を続けるケースがあります。この際、前社長の影響力が強すぎて、新たな経営戦略に移行できないリスクが生じます。また、前社長の言うことを鵜呑みにして、自分できちんと取引先との契約条件や経営状況を確認しなかった結果、経営が成り立たなくなることもあります。
M&Aを失敗する原因になりかねないので、予め、前社長とは引継ぎとして残ってもらう期限や役割、ビジネスにおける方向性をしっかり話し合っておきましょう。
個人がM&Aで買収するときの注意点
ここからは個人がM&Aを利用して、企業を買収する際に気をつけておきたいポイントを解説しましょう。
個人で買える案件は良い案件とは限らない
良い案件を欲しいのは個人だけではありません。当然、企業も買い手として参入します。また、個人と企業では、企業に買収してほしいと考える会社や店舗の方が多いでしょう。企業には個人よりも資金力があり、信頼性が高いからです。
そのような競争下で、良い案件を獲得するには、企業とは違ったアプローチを考えていかなければなりません。
そもそも、個人に売却の打診があった場合、その案件は企業からは買う価値が無いとみなされているなどの理由が潜んでいる可能性もあります。
個人に良い案件が来るとは限らないことを認識し、よく精査して買収先を選びましょう。
売り手と直接交渉しない
個人がM&Aを進めていく場合、M&Aのプロセスや売買契約書などの取り扱いに不備や不足が出る可能性があります。そのため、個人が売り手と直接交渉する選択は、実行しない方が無難でしょう。
M&Aは交渉を進めていくと、フェーズに応じてさまざまな契約書を締結します。M&A仲介会社が存在していることから分かるように、手続きは非常に複雑で、専門知識が必要な作業です。
そのため、M&AはM&A仲介会社に交渉を依頼したほうが得策です。M&Aの成功する確率も高くなるでしょう。手続きだけでなく、経験や実績、M&A仲介会社が持つネットワークを活用できる点も、大きな魅力です。
まずは後継者候補として入社し、その会社をよく知る
経営経験のない個人が、いきなり会社経営をすることになった時のことを考えてみましょう。
業務上や経営上の問題が次々と発生しますが、未経験であるために対処しきれない状況が多発してしまう。そんなイメージを抱くのではないでしょうか。
問題を解決する手段を学ぶには、さまざまな経験を積んで対応できる力を蓄える必要があります。そのため、M&Aで買収する前に後継者候補として入社し、その会社をよく知ることから始める方法も一つです。経営方針、社風、業界のルールは勿論、事業内容や、それぞれの実務などの現場知識などを前もって吸収しておくのです。
その上で、従業員や取引先とのコミュニケーションもしっかり取りましょう。先に良好な関係を築いておけば、個人のM&Aであっても経営権を得た後の成功確率が増していきます。
後継者を探している経営者は大勢いる
後継者を探している経営者は、大勢います。ただし近年、少子高齢化の波が押し寄せてきています。親族内から探しても見つからず、また社内にも見つからず、社外へM&Aで後継者を求めるケースが目立つようになりました。
では、どうすればそのような経営者とマッチングできるのでしょうか。最後に手段を解説します。
後継者を探している企業とマッチングするには
後継者を探している企業を探す手段を知らなければ、隠れた良い案件を見逃す可能性があります。
M&Aの買収候補を探す上で、調べておきたい先は、以下のとおりです。
・後継者人材バンク
・マッチングサイト
・M&A仲介会社
「後継者人材バンク」は、国が主体となって後継者不在の中小企業者及び個人事業主の後継者作りを支援しているサービスです。
「マッチングサイト」はその名のとおり、M&Aのマッチング相手を探せるサービスです。
「M&A仲介会社」は後継者を探している企業の紹介だけでなく、M&A交渉のから成約まで手厚くサポートしてくれます。
外食企業・飲食店の経営者になるには
飲食店経営に対する知識やM&Aの流れを知ることは、大前提です。そこから想定されるリスクを洗い出し、対処法をしっかりと理解しておきましょう。
またM&Aの成約がゴールではなく、その後の従業員や取引先とのコミュニケーションなどM&A後に行うべきことも多くあります。
個人ではM&Aを進めることが不安だという方は、M&Aの専門家に相談することをおすすめします。
M&A Propertiesでは、飲食店におけるM&Aの専門家が多数在籍しています。興味を持たれた方は、ぜひお問い合わせください。M&Aの案件紹介や交渉はもちろんのこと、成約までのすべてをサポートいたします。
M&A Properties についてはこちらをご覧ください。
まとめ
今回は個人がM&Aで会社や店を買収した際に失敗する主な理由を紹介しました。
失敗する理由は、取引先の引き継ぎミスや従業員と信頼関係構築に失敗するなど、さまざまあります。M&Aが失敗となる原因となるため、注意が必要です。
その注意点を踏まえたうえで、個人だからできるアプローチとして、後継者候補として入社することも検討すると良いでしょう。
M&Aの買収候補は「後継者人材バンク」・「マッチングサイト」・「M&A仲介会社」を活用して探すことができます。
ただし、M&Aは専門知識が必要です。個人で進めるには困難なケースもあるため、専門家の知見を借りながら進めることをおすすめします。