民事再生の失敗とは?回避する方法とM&Aの活用を解説

民事再生とは、再建型の法的手続きのひとつで民事再生法の規定に則り、現経営陣の主導のもと、利害関係者の同意を得て再生計画を作成し、裁判所の認可後これを遂行することで利害関係者の権利を調整しつつ事業の再建を図ることを指します。 民事再生は手続上、認可を得られない場合、そのまま破産手続きに移行してしまいます。そのため、成功するためには少しでも民事再生に関する知識を深めておく必要があります。 なお、東京商工リサーチの調査で民事再生法が施行された2000年度から2014年度までの15年間で民事再生法の適用の申請をした7,341社のうち、生存企業は29.1%(2,136社)という厳しいデータも公表されています。 この記事では、民事再生の失敗、失敗を回避し成功に導くための条件について解説します。


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民事再生の失敗とはどんな状況を指すのか

この項目では、民事再生が失敗する3つのケースについて解説します。

再生計画が認可されない

民事再生においては裁判所の認可が必要不可欠ですが、民事再生法では民事再生手続全般において不認可事由が定められています。

具体的には以下の内容となっています。

・再生手続又は再生計画に重大な法律違反があり、その不備を補正できない場合
・再生計画遂行の見込みがない場合
・再生計画の決議が不正な方法により成立している場合
・再生計画の決議が債権者の利益に反する場合

例としては、現実とはかけ離れた見込みがない無理な計画を作成したり、債権者を脅迫などして無理やり再生計画に同意させたりするといったケースです。

再生計画が認可されなかった場合には、原則としてそのまま破産手続きに移行します。

債権者の過半数が再生計画案に同意しない

再生計画案を裁判所に提出するためには、債権者集会で参加した議決権者の過半数が同意し、かつ、議決権者の有する債権額の総額の1/2以上を有する者の同意を得る必要があります。

ここで債権者の同意を得られない場合においても、原則そのまま破産手続きに移行することになります。

再生計画通りに返済ができない

債権者集会で同意を得て、裁判所に再生計画を認可された場合においても、再生計画通りに進まず返済ができないとなったら、裁判所が再生手続の廃止決定や債権者からの申し立てにより再生計画の取消決定が行われる場合もあります。

その際は債権者の同意を取り付けて再生計画を変更するか、再度民事再生手続の申し立てを行わなければ、破産手続きに移行します。

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民事再生を成功させる条件

冒頭で記載のとおり、失敗する可能性の方が高い民事再生においては、失敗するパターンと同時に成功するための条件についても理解しておかなければなりません。

この項目では民事再生における成功するためのポイントについて解説致します。

営業利益が黒字である

民事再生を成功させる条件のひとつに営業利益が黒字であるという条件があります。
営業利益とは、売上高から売上原価に加え、人件費等の販売費及び一般管理費を控除した金額を指します。

民事再生手続きはカットしてもらった後の残りの債務について、今後発生する営業利益から返済する計画で進めるため、営業利益が黒字であることは民事再生手続きを成功させる必要不可欠な条件です。

仮に計画段階で営業利益が出ていない状態でも、不採算事業の切り離しなど営業利益を黒字化しうる状況を整えておく必要があります。

債権者の同意を取り付ける

上記に記載のとおり、再生計画を進めるためには債権者集会で債権者の過半数及び債権額の1/2以上を有する者からの同意を得る必要があります。

債権者は破産されるよりは債権が回収できる可能性が高いことから同意するケースは多いとされていますが、実現不能な計画であったり現経営陣の主導の下では再建が難しいと判断されたりすれば、反対されることも考えられます。

そのため、金融機関や大口の債権者に対しては特に誠心誠意今後の計画について説明を行い、納得をして頂く必要があります。

従業員への説明も怠らない

法律的な要件で言えば、再生計画には債権者の同意が必要ですが、実際に再生計画通りに営業利益を出すためには現在働いている従業員の協力も重要です。

例えば、従業員の給与を一部減額してもらうこともあるかもしれませんし、コスト削減のために従業員満足度を上げるような施策を取りやめることもあるかもしれません。

そのため、今雇用している従業員にも債権者同様に丁寧に状況を説明し、会社に残ってもらう必要があります。

スポンサーを早期に見つけ出す

いわゆるスポンサー型の再生計画です。民事再生には債権者の同意が必須であるからには、なるべく同意や納得のできる状況を整えておく必要があります。

民事再生手続きを進める場合、金融機関からの借り入れが難しくなるため運転資金や経営面での支援を受けられるスポンサーの存在があれば、再生計画の大きな力となります。
スポンサー企業の協力を得ることで、再生計画に実現性が生まれ再建への道筋が立つため、債権者の理解も得られやすくなります。

可能であれば、民事再生の申請をする前にスポンサーを決定し申し立てと同時に公表することで取引先や従業員のマイナスイメージを最小限に抑えることができるため、スポンサー型の再生計画を考えている場合はなるべく早く見つけ出したいところです。

なお、このように民事再生の申請前にスポンサーを決定し、申立と同時に公表する方法はプレパッケージ型と呼ばれる手法になります。

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民事再生の失敗回避にはM&Aが有効な理由

民事再生を成功させる条件のうち、「スポンサー型の再生計画」は、「M&Aによる事業再生」とも呼ばれます。
M&Aとは、企業の合併や買収などの総称です。

M&Aで事業を譲り受ける企業にとっては、既存事業の強化や新規参入を考えている事業について、人材や資源を引き継ぐことで短期間のうちに事業規模を拡大できるというメリットがあります。

一方、民事再生を行う企業にとってもM&Aによる事業再生は多くのメリットがあるので、以下に紹介します。

収益性のある事業だけを売却し、元の会社を精算する

収益性のある事業については、将来に期待が持てる分、譲受企業が見つけやすいため、それだけをM&Aで売却し残りの不採算事業については破産手続きを進めて精算してしまうという方法を取るという方法があります。

M&Aにおける最大の懸念が良い譲受企業が見つかるかどうかという点のため、収益性が期待できるうちに行動に移せるか、そしてその譲渡金額に対して債権者から同意を得られるかがカギとなります。

現状維持での事業再生がしやすい

スポンサーがいると公表することで企業のイメージが下がらず、今の売上の維持はもちろん、スポンサー企業との関係性により信用性が高まり、販路が広がることも期待できます。収益力が上がれば事業再生はスムーズに進みますし、得意先などの「連鎖倒産」も未然に防げます。

飲食店の事業再建をM&Aで実現するには

M&Aは実際に行おうとすると、譲受企業の選定や契約の具体的な内容の検討、実際の交渉など超えなければならないハードルが多数存在します。
そのため、専門家による仲介が必要不可欠です。

また、事業の存続に直結する話になるため、数あるM&Aの仲介会社の中からなるべく信頼のおける実績のある企業を選びたいところです。

M&A Propertiesでは特に飲食業界におけるM&Aで高い専門性と豊富な実績を併せ持っており、M&Aに関する相談はもちろん、成約まで無料でサポートを行います。

興味を持たれた方はぜひ一度ご相談頂ければ幸いです。

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まとめ

経営者の方にとっては、民事再生を検討しなければならない時点でかなり思い詰めてしまう部分もあるかと思います。

しかし、M&Aのような他の企業や専門家の力を借りることによって拓かれる道も存在します。
大切なのは手段を知り、そして事業をなんとしても継続したいという思いを強く持つことです。

選択肢を増やすという意味でも、まずはM&Aの仲介会社に相談に行かれることをおすすめします。