継ぐ人がいない…飲食店の後継者問題を解決する3つの切り札

記事冒頭でも紹介したように、現代の日本では高齢になった経営者に代わる後継者が不足しています。そのため、将来的には多くの企業が後継者不足により廃業すると見込まれています。 この項では、日本の後継者不足がどれほど深刻であるかについて、データをもとに解説をしていきます。


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現代の後継者問題

記事冒頭でも紹介したように、現代の日本では高齢になった経営者に代わる後継者が不足しています。そのため、将来的には多くの企業が後継者不足により廃業すると見込まれています。

この項では、日本の後継者不足がどれほど深刻であるかについて、データをもとに解説をしていきます。

企業における後継者不在率

2019年の帝国データバンクの調査によると、日本で後継者がいない企業は全体の約65.2%という結果が出ています。
以下が会社の承継手段の内訳になります。

・子供、配偶者、親戚などを後継者とする「同族承継」の割合は34.9%
・従業員など社内の人間を後継者とする「内部昇格」の割合は33.4%
・社外の第三者を後継者とする「外部招聘」は8.5%

事業承継の手段としては同族承継が最も頻繁に行われていますが、前年2018年と比較すると4.7ポイント減少しています。一方で、内部昇格は前年から18ポイントの増加、外部招聘は1.1ポイント増加していました。

このように、日本の過半数の企業が後継者不足の問題を抱えており、後継者を見つける方法としては内部昇格や外部招聘を使う場合が増えているのです。

飲食店の多くも後継者不足に悩んでいる

前述したように、多くの企業が後継者不足の問題を抱えるなか、飲食業界においてもその影響は大きいものとなっています。帝国データバンクの調査によると、71.1%の飲食店が後継者不足を訴えています。

また、多くの飲食店が後継者のみならず、正社員や非正規社員などの従業員不足にも苦しんでいます。従業員などの社内の人間が不足すると、経営者の資質を備えている人材が限られてしまい、内部昇格によって後継者を選ぶこともできません。

このように、飲食店でも後継者・人手不足が深刻であるというのが現状です。

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後継者問題の解決方法

ここまで紹介したように、多くの経営者を悩ませている後継者問題ですが、主な解決方法が3つあります。

1.身内や親族を後継者にする

1つ目は、自分の子供、配偶者、親戚を後継者とする方法です。昔から家業として飲食店を営んでいる経営者は、身内や親族に事業を引き継がせることが多いでしょう。

身内や親族を後継者とすることのメリットは、「事業承継を見越して候補者を育成できる」という点にあります。候補者が身内や親族である場合、共に現場で働いてもらうことで効率的教育を行うことが可能となります。

それにより、候補者がその事業のノウハウやスキルを身に着けたタイミングで、円滑に事業を引き継ぐことができるでしょう。

ただし、この場合は相続税対策を考える必要があります。

また、事業を譲渡する際にはある程度の対価を受け取ることができますが、身内や親族を後継者とする際には、そういった対価はあまり期待できないでしょう。

さらに、近年では職種が多様化し、若い世代を中心に働くことに対する価値観が大きく変化しています。そういった背景からも、親や親せきの事業を引き継ぐ人は少なくなっているのが現状だといえるでしょう。

2.従業員を後継者にする

2つ目は、従業員などの社内の人間を後継者にする方法です。

社内の人間を後継者にするメリットは、「信頼できる人間に円滑な引き継ぎができる」という点です。社内の人間はその飲食店の味や接客に関するノウハウやスキルが身に着いています。そのため、ゼロから育成する必要がなく、円滑に事業を任せることができるのです。

ただし、この場合においても身内や親族を後継者にするときと同様、多額の対価を得ることは期待できないでしょう。

3.M&Aで第三者を後継者にする

3つ目は、M&Aによって第三者を後継者にする方法です。つまり、事業を他の企業に売却することで、「買い手企業の人間が経営者になる」ということです。

M&Aによって後継者を決める方法には、多くのメリットがあります。

まず、売り手企業は廃業を免れることができます。買い手企業はM&Aによって自社の事業拡大を真剣に考えているため、M&A実施後も買収した事業をしっかりと経営していくことになります。その結果、従業員の雇用が守られるだけでなく、既存の取引先の発展にもつながっていくことになるでしょう。

また、M&Aで事業を売却することで、その事業自体を成長させることも期待できます。買い手企業の経営手腕が確かであれば、その企業の経営資源やブランド力によって事業は拡大します。事業の業績を向上させる手段としても、M&Aは有効です。

そして、会社を売却するということは、その対価として代金を受け取ることができます。M&Aでは事業が取引の対象となるので、多額の対価を期待することができるでしょう。

このようにM&Aで事業承継をすることで、売り手側は後継者や対価を得られるだけでなく、事業の成長を期待することもできるのです。

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後継者問題解決の成功事例

後継者問題を解決するためにM&Aを行い、うまく成功した事例は多数あります。

2013年2月に、新興チェーンである「株式会社サブライム」は、居酒屋「ひもの屋」を展開する「株式会社八百八町」を子会社にしました。株式会社八百八町の創業者は高齢であったため、その思いと共に会社を株式会社サブライムに託したのです。
その後、株式会社サブライムは急成長を遂げ、今ではグループ全体で450店舗以上を運営する飲食チェーンとなっています。

この事例のように、M&Aによって、勢いのある会社に事業を任せる事例は徐々に増加しています。

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M&Aで注意すること

多くのメリットがあるM&Aですが、いくつかの注意点があります。
ここからは、M&Aを行う際の注意点について、売り手側と買い手側の視点からそれぞれ解説します。

売り手側

売り手側が注意する点は、大きく分けて3つあります。

仲介会社の選択

1つ目は「仲介会社を慎重に選ぶ必要がある」という点です。仲介会社を選ぶ際には、税務、財務、法務に関する専門知識や、M&Aの実績が多数ある会社を選びましょう。また、対象となる飲食業界のネットワークを有しているかも重要なポイントになります。

M&A完了までには複雑な過程を経なくてはならないため、仲介会社といった専門家の助けが必要となります。しかし、質の低いサービスを提供する仲介会社を選んでしまうと、M&Aが円滑に進まないだけでなく、最悪の場合失敗することもあるでしょう。

情報管理

2つ目は「情報管理を徹底して行う必要がある」という点です。M&Aの計画について把握する人間は必要最小限だけにしておきましょう。

実施前に従業員がM&Aのことを知ってしまうと、「会社が自分たちを売ろうとしている」というネガティブな印象を与えてしまう可能性があります。それが会社に対する不信感につながってしまい、業績が低下する危険があります。

経営管理

3つ目は、「経営管理をきちんと行う」という点です。通常、M&Aを実施する際は、売り手は売却する事業の業績に関する資料を買い手に提供します。特に、複数店舗のM&Aの場合は、店舗別の利益管理をきちんと行い、それぞれの損益計算書を作成しておく必要があります。

また、売却事業に関する諸々の契約関係についても管理しておかなければなりません。契約にまつわる情報が整理できていないと、M&A後に様々な法律上のトラブルが生じる可能性があります。

買い手の信用を損なうことのないよう、経営に関係する様々な情報はしっかりと管理するようにしましょう。

買い手側

買い手側が注意する点も、大きく分けて3つあります。

シナジー効果が期待できない

1つ目は、「期待していたシナジー効果が期待できない場合もある」という点です。

M&Aにおける大きなメリットは、「統合による相乗効果(シナジー効果)を得られる」だといえるでしょう。しかし、このシナジー効果は確実に得られるものではなく、あくまでも予想されるものです。きちんと売り手側の事前調査を行い、シナジー効果がどれほど期待できるかを考えることも重要です。

統合失敗

2つ目は、「統合プロセスが失敗する場合もある」という点です。

M&Aにはさまざまな過程があり、多くのトラブルが発生します。その過程のなかで、残念ながらM&A契約が破談となるケースもあります。

これを防ぐためには、統合後に問題が生じそうな事柄について事前に確認し、対策方法を検討しておくことが重要となります。そのためにも、買い手側にも実績のある仲介会社と契約してもらい、慎重にM&Aを進めていく必要があるといえるでしょう。

売り手企業従業員の士気低下

3つ目は、「売り手側の従業員のモチベーションを低下させる場合がある」という点です。

経営者が変わり、待遇や経営方針が変化することに抵抗を感じる従業員もいます。最悪の場合には、人材が流出してしまうことも考えられるでしょう。売り手側の従業員への説明を怠ることなく、真摯な対応をすることが重要です。

飲食業界専門のM&Aアドバイザリーサービスの活用

飲食業界を専門的に扱うM&A Propertiesであれば、飲食店の後継者問題についても最適なサポートを行うことができます。弊社には飲食店のM&A知識が豊富な専門コンサルタントが在籍し、豊富な実績もあります。

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まとめ

現在、多くの飲食店が後継者不足に不安を抱えており、このままでは廃業する飲食店が次々出ると考えられます。後継者不足を解消する手段は「親族を後継者とする」「従業員を後継者にする」などさまざまです。

そのなかでも、M&Aによって後継者を得るという方法は、本記事でも紹介したように大きなメリットがあります。
「後継者がおらず、このままでは経営が危うい」という飲食店経営者の方は、M&Aを検討してみてください。