飲食店の居抜き物件・M&Aで使われる「売買」と「譲渡」の違い
飲食店の居抜き物件、M&Aで使われている売買と譲渡って何が違うの?と疑問を持たれている方は多いでしょう。インターネット上の情報を見ていても、実際この二つの用語が混在して使われており、混乱の原因になります。
ではそれぞれどのような意味合いで使われているのでしょうか。
事業の承継では「譲渡」
そもそも譲渡とは契約の移転です。契約によって所有権がA氏からB氏に移るとイメージすれば分かりやすいでしょう。譲渡の内容はさらに内容を細かく分けられます。売買・交換・贈与があります。
一方、M&Aの現場においては、事業承継の場面でよく「譲渡」という言葉が使われます
「譲渡」という言葉を聞いたとき、多くの人は「他者に何かを譲る」というイメージを持つでしょう。これを事業に当てはめると、現経営者から後継者への事業の承継に該当します。事業承継=事業譲渡ではありませんが、事業の承継を意味して事業譲渡や譲渡といった言葉が使われているケースは多いでしょう。
金銭の移動が「売買」
M&Aの現場においては、金銭のやり取りが発生する場合に「売買」という言葉が使われます。
売買という言葉は漢字の通り、誰かが 何かを売る・買いたい人がそれを買う、という関係性を意味する言葉です。事業の場合なら、買い手が金銭 を支払って売り手から経営権を譲渡してもらうことが、売買となります。
不動産によっては「譲渡」も「売買」も同じ意味?
しかし、居抜き物件の購入においては譲渡も売買も同じ意味を指しているのではないか?と感じたことのある方も多いでしょう。実際のところは、 ケースバイケースです。
言葉の違いとして使われていることも
不動産の場合、譲渡と売買が別の言葉として使われているケースもあります。上との意味を厳密に定義づけるなら、所有権の移転を意味します。所有権移転に金銭 のやりとりがともな うかどうか はいったん置いておいて、とにかく所有権が移る場合は 譲渡です。条件は関係ありません。
次に、売買も所有権の移転を ともないます。売り手は金銭の対価として所有権を渡し、買い手は所有権の対価として 金銭を支払っているからです。ここまでの流れでわかる通り、譲渡は単に所有権の移転を意味しており、売買は金銭のやりとりがともな う所有権の移転を意味しています。
つまり 厳密には、譲渡の一種が売買です。
契約書の中身も同じ意味が使われていることも
厳密には上記のような違いがあるものの、実際のところM&Aのほとんどは金銭の やりとりをともないます。つまり、譲渡にも売買にも当てはまるということです。物々交換でM&Aを行えば厳密には売買には当てはまらず譲渡にだけ当てはまると言えるのかもしれませんが、現実的に考えてそのようなことはありません。
二人の人が金銭の移転なしに所有物を 交換した、なんて話は少なくとも私は聞いたことがありません。そのため、契約書の中でも譲渡と売買が同じ意味合いで使われているケースはよくあります 。
法的な効力としては、言葉そのものではなく、その言葉に対してどのような内容で合意しているかによって変わってきます。たとえば、同じ譲渡契約でも契約書によって内容が異なるということです。
他にも「造作譲渡契約」、「造作売買契約」、「飲食店舗付属資産譲渡契約」、「飲食店舗付属資産売買契約」がありますが、いずれの場合も言葉そのものが何を指しているかではなく、個々の契約でどのような内容で合意されているかが重要です。
名称が統一されない理由
ここまでの流れで多くの人が思うことは、「ややこしいから名称を統一すればいいのに」 ということでしょう。では、なぜややこしいのに名称が統一されないのでしょうか。
1:事業者が契約当事者だから
インターネット上では譲渡や売買の入ったいろいろな用語で解説されていますが、これらの用語が一番重要になるのは契約時です。しかし、契約は当事者間で結ばれているものなので、両者が合意して契約内容を把握していればはっきり言って用語はなんでも良いのです。
呼び方が譲渡でも売買でも、条件が同じなら当事者にとって何も違いはないでしょう。
2:不動産会社によるこだわり
また、不動産会社が各々好きな用語を使うため、統一されていないという事情もあります。
不動産会社によって用語の使い方は様々です。特に居抜き店舗を扱っている不動産は譲渡も売買も使うケースが多いです。 不動産会社によって用語の使い方は さまざまで、自由です 。
また経験の浅い不動産会社は、経験豊富な不動産会社の契約書を まね て、用語だけ少し書き換え ることもあります。それこそ譲渡を売買に書き変えるのは手軽で、素人が見たときの印象としては違う契約内容に感じられます。
譲渡を売買に変えても契約内容は同じで問題 ありません。用語の意味合いが変わらないことは都合よく使われるケースもあるということです。
3:居抜き物件のガイドラインがない
賃貸契約を行っている不動産会社は、全国に数多く存在します。 混乱を防ぐために用語の使い方には、 統一されたガイドラインが存在します。
一方で、居抜き物件は取り扱っている不動産業者の数自体が少 なく、ガイドラインが 存在しません。それぞれの不動産業者が好きに用語を使っているので、結果的にバラバラになっています。
飲食店の譲渡ならM&A
飲食店を譲渡する方法には居抜きとM&Aがあります。
資金力があれば居抜き物件よりメリットがある
M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略称であり、企業同士の合併買収です。飲食店におけるM&Aなら、居抜き物件と同じ設備面のメリットだけでなく、売り手側店舗の従業員や技術なども取り込むことができます。
居抜きで手に入るのは土地、建物、設備など物理的なものだけで、M&Aのように技術や従業員といった飲食店の核となるものが手に入るわけではありません。
M&Aによって飲食店の核となる要素を入手すれば、ゼロから開業するよりも経営リスクは低いです。特にすでに成功している店舗であればブランド力もあります。
M&Aを成功させるためには、入念な事前準備、交渉などが重要で、そのためには信頼できる仲介会社にサポートを受けるのがベストです。
飲食業界に強いM&A Properties
飲食業界でM&Aを行うのであれば、M&A Propertiesがおすすめです。M&A Propertiesは飲食業界を得意としており、年間約100件以上の成約件数で、豊富な実績があります。
当然M&Aの初期から契約成立までトータルでサポート可能です。特にデューデリジェンスをトータルサポートできる点は魅力でしょう。
またM&Aだけでなく、グループ会社に不動産、人材サービスといった会社があります。つまり、飲食店の新店舗設立もサポートできるので、M&A以外の点でもメリットがあります。
まとめ
飲食店M&Aについて情報収集をしていると、「売買」「譲渡」の用語が混在しています。M&Aの現場において事業承継であれば「譲渡」、金銭のやり取りが発生する場合は「売買」と使い分けています。
一方、不動産業界においては、同じ意味として使われていることが多々あります。言葉の定義は統一した方がわかりやすいものの、 統一されないまま用語が使われています。その理由は、そもそも不動産業者によって用語の使い方がバラバラであることや、用語を変えるだけで別の契約書のように作れるので都合が良い、などの理由が挙げられます。
とはいえ、契約時に一番重要なのは用語ではなく、どのような契約内容が結ばれているかです。