株式会社SBIC 代表取締役 鬼頭宏昌氏インタビュー(後編)宅配とんかつ専門店「かさねや」の次の戦略とは

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インタビュー前編はこちら

記者)現在、「かさねや」さんは190店舗ぐらいまで出店しているわけですが、あと何店舗ぐらいまで出店を考えているのですか?

鬼頭社長)今のモデルだと、たぶん210~220店舗ぐらい、あと30店舗ぐらいしか空いてないですね。そうなると成長が止まるから、別業態でもう200店舗作ろうと思っているんです。

その新業態のモデルを、2か月前ぐらいに立ち上げて、既に成功水準にあるんですよ。上手く行きそうなので夏にまた4店舗新しく出店します。全国展開を2周すると、「銀のさら」の店舗数を越えて、3周するとピザーラを越えるんですよ。年間100店舗ずつ出すと、2025年までに600店舗弱になるから、そこまでやりきって国産デリバリーチェーンのNo.1になって引退するというのが、僕の1つの目標です。

記者)その2周全国展開するというのは、また違うエリアで展開するということでしょうか?

鬼頭社長)結局、出店可能エリアって決まっているじゃないですか?例えば青森の弘前とかでは成立しないから、結局人口の厚いエリアしか無理なわけです。そこに、今うちの店舗にあったとしても、もう1つ違う業態の店舗を作ってねじ込んでいくっていうことです。

記者)ちなみに、新しく展開していくのは何の業態なのですか?

鬼頭社長)主軸になるのは、お好み焼きです。

記者)お好み焼きのデリバリーって聞いたことないですね。

鬼頭社長)お好み焼きって、たまに食べたくなるんですけど、食べられる店が減っているんですよね。じゃあ、大手のチェーンがくまなくあるかって言ったら無くて。だから基本的にニーズが強い商材ではあるんですよ。そこを軸にして、色々他にも売れる商材はわかってるので、そういうのをかき集めて事業にしようと思ってます。

記者)それは、アンケート調査やヒアリングをされるんですか?

鬼頭社長)いや、しないです。市場にぶつけて、「これは来るな」っていうのは、主要なデータと売上げを見たらわかるので。そこが、うちが他社と全然違うところです。

記者)確かに。もう既に「かさねや」で200店舗近くのネットワークがあるから、「この店舗でこのぐらい売れるなら、このエリアもこのぐらい売れる」っていう計算が成り立つわけですね。

鬼頭社長)そうです。正直、今から僕らみたいな事業を立ち上げて、同じような規模に育つ会社が出てくるのかっていうと思っているより難しいと思うんですよ。

というのも、デリバリーの中でゴーストレストランが占めている市場ってそんなに大きくないんです。デリバリー市場を牽引してるのは、マクドナルドとかの大手チェーンなんですよ。マクドナルドが届くから食べる、吉野家の牛丼が届くから、ココイチのカレーが届くからっていうのが、デリバリー市場拡大の牽引役であって、聞いたこともないようなカレー屋のカレーを誰が食べるんだっていう(笑)。

記者)確かに、そうかもしれませんね。

鬼頭社長)だからゴーストレストランのビジネス自体が、そもそもニッチなんですよ。デリバリー市場が成長しているって言うけど、感覚的には、そのうちの8〜9割は大手チェーンなんですから。市場の主役って、絶対大手チェーンなんですよ。これは揺るぎない事実で。

記者)やっぱり、認知度は大事なんですね。

鬼頭社長)本当に大事ですよ。ゴーストレストランってマーケット的にはすごく小さいんです。デリバリーで流れている商材の10~15%ぐらいしかないんじゃないですかね。これから更に大手の参入が激しくなるでしょうから、本当にずっとニッチ市場のままなんでしょうね。

そこでどういう経営者が、全国展開を成功させられるかって考えるんですけど、どう考えても、自分でもう一周、全国展開させるのが、一番早いんですよ。

他社さんと、何が違うかというと、まず戦い方を熟知しているということと、どういう攻め方をすれば全国展開に持ち込めるかっていう、出店戦略を作る際に必要なリアルデータを持っているのが僕しかいないんです。

だから、他社がこれから参入して、全国展開を狙っていくよりも、僕らの方が、スピードは圧倒的に早いはずなんですよ。

記者)お好み焼きは直営のブランドですけど、「三田製麺所」さんとか「チャンピオンカレー」さんとか、第三者と連携する動きもやっていらっしゃいますよね。これはどんなきっかけで始まったのですか?

鬼頭社長)結局、さっきの話じゃないですけど、ゴーストレストランって、基本的には売れないから。カレーならココイチとか、ラーメンだって知ってる店じゃないと食べないですよね?リアル店舗がないと売れない商材ってあるんです。そこを他社のブランドを使って攻めていくっていう感じなんですよね。

記者)もともと「かさねや」さん一業態でやっていたところに「三田製麺所」さんが入って「チャンピオンカレー」さんが入るとなると、店側のオペレーションは大変になってきますよね。それは、回せるようなオペレーションを組みながら、3つぐらいならできるだろうってやりたいFCさんが手を上げる感じですか。

鬼頭社長)そうですね。そういうコラボはどんどんやっていきます。だから、ゴーストレストランをやりたい人がいれば、うちに話を持ち掛ければいいんですよ。何もやらなくても、一気に180店舗とか出店できてしまいますから。

記者)それはどういう組み方になるのですか?

鬼頭社長)わたしたちが「デリバリー市場のエリア本部」になるイメージです。彼らからしても1店舗ずつ営業をかけるのは手間がかかりすぎるし、中途半端な加盟店が増えるから、ブランド毀損が起きてくる。

だから、うちみたいなガッツリ専業で、やってるところと組んだ方が話が早いし、よほど運営は安定するんですよ。うちと組めば、すぐに全国展開できるから、みんな乗ってきてくれてます。

記者)「三田製麺所」さんの宅配専門業態『出前 三田製麺所』って12月ぐらいに発表されてましたけど、もう全国展開しているのですか?

鬼頭社長)まだ半分ぐらいだと思います。でも、あと3ヶ月もすれば、全国の店舗にくまなく入っていくので。

記者)「こういう商材と組みたい」というニーズはありますか?

鬼頭社長)いや、とりあえず、僕が面白いと思ったらやります。

記者)それで上手くいけば続けるし、いかなければすぐにやめるという。そういうのも常に3つ4つ持ちながら?

鬼頭社長)今控えている提携先のブランドが10以上ありますよ。そこが我ながら結構すごいところで、「どこの店に導入するんですか!?」って、スタッフが困惑するぐらい、多数のブランドを抱えているんですよ(笑)。次から次から割と良い選手が並んでるみたいな状況を作ってるんです。

記者)そうですよね、「三田製麺所」さんとか「チャンピオンカレー」さんとかそういうクラスのお店が提携しているわけですから。本当は良い業態をやっていてそれなりに知名度もあるけれど、今コロナで苦戦しちゃってるような会社さんが一番いいということでしょうか?

鬼頭社長)そうですね、はい。

記者)そういうところが、もしお話をしたいと思ったら鬼頭社長に連絡すればいいんですね。

鬼頭社長)連絡をくれたら、すぐにやりますから。とにかくうちは早いですから。めちゃくちゃ早いです。

記者)何を軸に判断されるのですか?

鬼頭社長)直感です(笑)。「これ面白いんじゃない?」っていう。だいたい売れないと思ったものが売れたりするから、先入観を持っちゃダメなんです。「これはダメだろう」って最初から言われるものほど売れたりするから。それで、期待するものほど売れなかったりするんですよ。そこから出る結論は、「全部やる」っていうことです。何が当たるかわからないから。

記者)色んなところとコラボするというのもありますけど、あんまり大きくない会社さんから相談が来たら、そのままM&Aで買っちゃいましょうかっていう話が出てもおかしくないですよね。

鬼頭社長)おかしくないですね。そういう案件がまだないだけで、あれば考えます。M&Aも可能性としてはありますね。

記者)コロナ禍がちょっと落ち着いてきて1、2年かけて元の状態に戻ったとして、ゴーストレストランは少しずつ減って行って「かさねや」さんだけに戻ることはあるのでしょうか。

鬼頭社長)いや、戻らないですね。色んなコラボが続いていくと思います。ゴーストレストラン市場の大半をうちが押さえるまでは、ひたすら続いていくイメージです。

記者)今コロナで伸びてきたゴーストレストランをやっている会社さんが、店舗型を出して行くという脅威はありますか?

鬼頭社長)まったくないです。それを考えてもしょうがないですからね。

記者)先ほど、引退という話が出ましたが、おいくつぐらいでと考えているんですか?

鬼頭社長)52歳です。2025年に引退って確定させているので。あと4年半しかないんですよ。だから生き急いでいる感じはありますけど。

記者)そこからは、投資とか若手育成とかをお考えなのでしょうか。

鬼頭社長)そうですね。やっぱり、若者が未来の日本そのものじゃないですか?そこに対して経済支援していくようなことがずっとやりたくて。でもお金がないとできないから。だから300億作るって公言して生きてきたんですよ。それは全国展開3周できれば、実現できるんじゃないかなって。

記者)今後、上場することは考えていますか?

鬼頭社長)引退した後の状態として上場した方が良いというのは間違いないです。そこに踏み切るかどうするかっていうのは、そろそろ考えないといけないなとは思ってます。

記者)その後の成長という意味で言うと、海外も含めて考えていくということになるのですか。

鬼頭社長)まあ、自分の代ではそこまで考えないですけど、国内で広げる余地がまだあるから。そこでもう終わっていきますよね、自分の現役残り4年半ぐらいは。だから、海外に出ていく人を支援してあげたいという気持ちはありますね。自分もやりたい気持ちはあったけど、できなさそうだから。

記者)もう既に色んなものを身に付けていらっしゃると思うのですが、今欲しい情報などありますか?

鬼頭社長)今何が一番欲しいかというと、今は出店枠が地方都市しかないんですけど、そこがなかなか埋まらないんですよね。だから、地方都市でデリバリーで独立したい人が欲しいですね。

記者)それは、独立したい方も半年ぐらい御社で修行したらそういう機会があるということですよね。今、コロナ禍で解雇されたりして職がない人がいらっしゃると思うんですけど、例えば飲食をかじっていた人なら、応募して欲しいという感じでしょうか。「こういう人が来てくれたら嬉しい」というのはありますか?

鬼頭社長)やっぱり、厨房経験がある人です。小売りしかやったことがない人はむずかしいと思います。デリバリーって、接客する場がないですから。割と調理経験がある人がいいとは思ってます。あとは、独立してやろうっていう気概がある人がいいですね。

記者)なるほど。でもやっぱり、飲食投資って通常、自分で直営店を出すと2、3千万ぐらいかかって、5年ぐらいのローンを組んでとかじゃないですか?それを考えるとリスクは少ないですよね。

鬼頭社長)投資リスクは、全部うちが取ってますからね。結局、独立できない理由って2つしかなくて、「お金がない」「失敗が怖い」なんですよ。うちはこれを本部が肩代わりするから、だいたいみんな独立していくんですよ。

記者)失敗といっても、もう店を出しているわけですからね。

鬼頭社長)そうです。ほとんどの場合、次のオーナーを見つけて引継ぎさせてあげて契約解除するだけだから、失敗して大変な目に遭ったという人はあんまりいないですね。潰した店ってほとんどないですよ。

記者)今は、デリバリーも全部自社でやっていらっしゃるんですか? 出前館とかとも提携しながら?

鬼頭社長)提携しながらですね。うちは始めた時期がやっぱり良かったですよね。今からじゃゴーストレストランをやって全国展開できるかっていうと、むずかしいと思います。居酒屋さんとかが入ってきてますけど、居酒屋さんって大手の寡占市場にならないから弱者でもやっていけるけど、デリバリーってそういう現象が起きないから。ほとんどの人は撤退しちゃうだろうなって思いますけどね。

記者)危機感を感じて早く動いた方がいいっていうことですよね。

鬼頭社長)やっぱり、冷静に先を読まないといけないと思うんですよ。これから2〜3年のスパンで外食産業をみたとき、一番熱いのは居酒屋ですからね。

絶対、復活すると思うし、オーバーストアが解消されつつあるから、コロナ禍が収まったときに、最も力強く回復するのって居酒屋なんですよ。だから、居酒屋経営者が今やることは生き残ることであって、ゴーストレストランをやることじゃないんです。それが先読みということなんですよ。

記者)なるほど、そうですね。

鬼頭社長)やらなくてもいいデリバリーとかテイクアウトとか、無駄な取り組みをしている会社が、多すぎると思いますね。延命のためにやっているつもりなんだろうけど、それをしたって何も残らないですよ。

業態のブラッシュアップを積み重ね、コロナを終えたあとにFC本部として展開できる準備を進めるのが、一番良いですね。

生き残っても、借り入れが増えるという問題が残るじゃないですか。これは、もうフランチャイズ事業を立ち上げて、加盟金を集めて返すしかないですよ。小さい会社って借金が増えたって2、3億だから余裕で返せますから。そうやって、次の動きを見据えて経営していかないといけないです。

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